吉田沙保里「ごめんね」と涙
という話題に触れて
前日に伊調が4連覇を達成していたから、ますます吉田に期待もかかったわけだけど。
結果、負けて銀だったけど、大あっぱれだと思う。
泣きはらした目で表彰式に臨んだあの顔は一生忘れないだろうと思う。
でもあれこそ「勝ち続けてきたやつ」の顔だった。
それだけレベルの高いところで戦っていた証左。
彼女のレスラーとしてのエビデンスだった。
彼女自身は、絶対4連覇出来ると思っていただろうし、我々も余裕で勝って、「レスリング女子は日本の天下」だと示してくれるだろうと思ってた。
でもそうはならなかった。
「大変なことをしてしまった」
彼女の心を支配したのはそんな気持だっただろう。
負けた理由を全部自分の中に求め、自己否定という、人として一番過酷な状況に自分をもっていこうとしていた。
そんな姿を見て、みんな「さおりちゃん謝らないで」そんな気持ちになったと思う。
でも、本当に彼女を認めるならば、そんな彼女の気持ちの処し方も含めて認めてあげないといかん、と思ったんです。
ピーピー泣いて、泣いて、ごめんごめんって何度もいう彼女のこと、それも含めて吉田沙保里だから。
そんな泣かなくていい、謝らなくていいと思う反面、もう気が済むまで泣いて、気が済むまで謝っていいよって。
黙ってそれを受け止めて、全部受け入れてあげなければって。
そんな気持ちになったんです。彼女を見ていて。
吉田沙保里がそうしたいなら、したいようにすればいい、と。
彼女が何をしても、これまでの彼女が取り組んできた道に日蔭はできない。
日本代表としてマットに立ち、耳の形が変わるまで練習に、試合に明け暮れた。
国際大会16連覇。
そんなここまでの功績はどうしたって色あせない。
立派だった。本当に。
見ていてつらかったのは、昨日の彼女。
各局順番に番組に出て、同じことを聞かれ、同じことを何度も話す。
TBS、はい次はテレ朝、NHK、NTV・・・
今どんな気持ち?
最後の瞬間どう思いましたか?
この先どうしますか・・・
これを、スタジオ変えて何度も何度も聞かれる。
それに気丈に応える吉田沙保里がいたたまれなかった。
やめたれよ、ってほんまに思った。
こんな時、なんで日本のメディアはひとつになれないのかって。
話し合って幹事局をひとつ決める。NHKでいいじゃないの。
映像は共同。時間は15分なら15分と決める。
各社のキャスターが同じことを何度も聞かなくていいように、質問は集約して幹事局がどのキャスターでいくかを決める。
自局のキャスターならそれでもよし、ここは松岡修三がいいとか、小谷実可子がいいとか、野村忠宏に聞いてもらおうとか・・・。
なんなら3人で一緒に、とか。
生がいいなら、各局がその時間に合わせて一斉同時配信。
放送局側のスポンサー都合やら、視聴率云々なんて、あくまで放送局側の個別の理由であって、そこに吉田沙保里が歩み寄る必要はないと思う。
生の対応ができない局は、同じ映像を自分たちの都合で繰り返し流せばいいじゃないの。
なんで、おもてなしの日本のくせに、そういう配慮ができないのか。
テレビマンにこれくらいの配慮ができれば、またこの国のテレビの前に人が戻ってくるのに。
アテネからロンドンまで、金メダルを取り続けた功労者のオリンピックでの敗戦を伝えるなら、伝え方にも方法論はあっていい。
とにかく、「何度も何度も負けたことを話さなければいけない」彼女が、かわいそうでしかたなかった。
東京、多分出られないでしょう。
もし出られないなら、今度は裏方として日本代表選手団に関わってほしい。
彼女のファイティングスピリットを、アスリートとしての気高きプライドを、この国の宝として今後に活かしてほしい。
「日本に吉田沙保里がいてよかった。」
「あの吉田イズムが活きて今の常勝日本がある」
そう言える2020年がくればいい。
史上最強の銀メダル。
この結果に、我々はなんの不満もない。
とにかく、吉田沙保里、お疲れ様。
ありがとうございました。本当に。