【「14時。ばら屋敷」シリーズより】

 

 

「ばら屋敷」でのユノの定位置、深緑色のソファにはいつもすぐに掛けられるようにブランケットを置いている。

ピンクの、そう、ウサギ柄のだ。

 

僕はシンプルなデザインや色のものが好きで、自然と僕たちの家の家具や調度は、落ち着いたもので統一されて行った。

 

「ばら屋敷」に引っ越してきてまだ日の浅いある日、僕が新しいタオルをネットショッピングで選んでいると、横からユノが覗き込んできた。

昨日が月一の病院の検査日だったから、今日のユノは機嫌がものすごく悪い。

 

「ユノも何か欲しいですか?」

 

「・・・?」

 

「何でもいいですよ。何か欲しいものあります?」

 

「・・・欲しいもの?」

 

眉を顰めて、さも訝しげに聞いてくる。

相当ご機嫌斜めだ。

 

「はい」

 

「・・・それは、チャンミン以外でってこと?」

 

「・・・ぐっ!!」

 

もちろん僕はすぐにユノを抱きしめてギュッとした。

 

「僕はいつもいるから大丈夫です。僕以外に何・・・」

「イチゴ」

 

意外に即答だった。

僕の感動の余韻も何もない。

まぁ、いい。

 

「・・・それもあと1時間で出しますからそれ以外で」

 

少し寂しさを感じながらユノを手放す。

 

ユノは特に欲しいものは思いつかないみたいで、口に手をやりながらモゴモゴ考えている。

 

僕もユノ用に買うものがあったか考えだした。

 

日焼け止めも買ってあるし、冷え防止に保温性の高い靴下も買った。

マッサージ用のクリームも今取り寄せ中だ。

 

すると、ブランケットを買わなければいけなかったのを思い出した。

今あるブランケットはかなり厚手だから、すぐにユノが暑がって剥ぐ。

結局身体を冷やすことになり、この間は危うく風邪をひかせそうになったところだった。

 

「そうだブランケットを買うんでしたね。どれがいいですか?」

 

僕はブランケットを検索した。

いつもの僕のお気に入りショップのページで。

ここは品質が良い上に、デザインがシンプルで僕好みだった。

 

ユノは気が進まなそうにチラ見しかしてこない。

こういうところハッキリしてるよな、と思いつつ、もう少し選択肢があった方がいいかと、お気に入りショップをやめて、検索サイトで「ブランケット」だけ入れて画像検索してみた。

 

すると出るわ、出るわ。

僕的には、世界のどこで需要があるのか謎のようなものまで含めて大量に。

 

すると、半ば呆れ気味な僕の顔の横からユノの手が出てきて、ビシッ、とある画像を指さした。

 

「・・・これ・・・ですか?」

 

ユノは無表情だけどハッキリと頷く。

無言で。

 

その画像を開くと、白地にピンクのウサギの柄が散りばめられた、多分子供、女児用のブランケットだった。

僕が選ぼうと思っていたものより桁違いに安い。

素材も安価なもので、惜しげなく洗濯できそうな反面、どの程度摩耗に耐えるのかが怪しい。

すぐ毛玉まみれになるようでは困る。

 

「・・・本当に、これ、でいいんですか?」

 

画像を超拡大して確認する。

ピンクのウサギの表情まではっきり見えるぐらいに。

僕にはそのウサギが可愛いのかどうか分からない。

 

「いい。これがいい」

 

ユノは無表情のまま、しかしハッキリと言う。

 

となると「購入する」一択。

洗い替え用に3枚買った。

 

数日後届いたブランケットを見て、ちょうど買い物に来ていたヒチョル氏は、

 

「お、ユノさん、可愛いの買ったじゃん!超いいじゃん、これ!このピンクがいいな!」

 

と言っていた。

僕にはその趣味はよく分からなかった。

 

ただ、思ったより材質が悪くなかったのと、僕の予想のはるか上を行くユノのお気に入り具合だったので、室内のデザイン性の調和などは二の次になった。

 

ユノはいつだってそのブランケットを脇に置いて、すぐに手触りを確かめてはニコニコしている。

不安な時にはそれに顔を埋めて耐えているみたいだった。

 

 

僕はよくそのブランケットごとユノを包んで抱きしめている。

これを買ってよかったと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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