八ケ岳南麓の冬の初物を賞味する | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

 「11月になったらフジが出るよ」

 そんな言葉を思い出し、先月訪れた野辺山の野菜直売所「コスモス」を訪れた。

 

 コスモスは平日の午前とあってお客さんはゼロ。相変わらずおばさんが一人で切り盛りしていた。

 「こんちは、この前はどうも」

 「・・・」

 「今日はフジを買いに来ました(これは覚えてない感じだな~)」

 「・・・(はて、誰だっけ)。フジは今朝入ったばかりだよ」

 

 初物のフジは9個で1100円。ホンの少し小ぶりの10個入りも同じ値段だ。

 ついでに買った白菜を新聞紙で包んでもらって代金を払い終えたところで突如おばさんの記憶がつながったらしく、顔が電飾看板のようにピカピカと輝いた。

 「フジの試食してごらん」

 う~ん、もう買っちゃったのに今さら試食もないもんだからお断りして店を出た。ったく、どうせならもう少し早く思い出してくれればいいのに。

 

 

 家に戻ってさっそく食ってみた。

 旨い。

 なんとも堂々とした味わいである。シナノゴールドも旨かったが、やはりフジはモノが違う。

  

 そうこうするうちに韓国レストラン「どんぐり」のオーナーが「キムジャンキムチ」を皿に盛って我が家を訪ねてきた。初物が漬けあがったのでおすそ分けだという。

 

(これがまた旨いんです)

 

 「キムジャンキムチ」とは何か。

 昨年奥様に伺ったところ、

 「『キムジャン』は『冬』です。キムジャンキムチは冬のキムチのことです」

とのことだったが、「冬」という単純な単語が「キムジャン」というのはなんだか不自然だ。調べてみると

「キムジャン」とは11月に国を挙げて一斉にキムチを漬け込むという韓国の国民的行事のことである。

 つまりどんぐりの「キムジャンキムチ」は、「キムジャン中にこさえた特製キムチ」というほどの意味なのだろう。

 この時期限定のどんぐり特製キムジャンキムチは通常のキムチより遥かに旨い。それもそのはず、生牡蠣やらなんやら、冬ならではの食材をいろいろ混ぜ込んで作っているそうだ。

 

(ソウルのキムジャン風景 こうなるともう祭りだ)

 

 オーナーは何故キムジャンキムチをわざわざ届けてくれたのか。

 もちろん最大の理由は私の人徳であるが、それだけではない。

 この夏近所の畑を無償で貸してもらうことになったオーナーは何を植えようか迷っているとのことだったので、私がニンニクの栽培を勧めたのである。

 ニンニクは買えば高いうえに韓国料理と切っても切れない仲である。植え付けの後はさほど手間がかからないのも商売の邪魔にならずに済む。

 

 ニンニク栽培の経験がないオーナーは作り方を教えてくれ、と懇願してきたが、実は私も自信がない。今夏のニンニクは見るも無残な出来栄えだったのである。

 そこでニンニク栽培の造詣豊かなブログ友のAさんにアドバイスを打診したところ快諾していただいた。キムジャンキムチはその口利き料の意味もある。

 

 ブローカー稼業でもあるまいし、この程度のことでキムチを頂戴するのは何だか気がひける。そこで

お返しにフジを2個差し上げた(ケチだね)。これで残りは6個になった。

 

 Aさんに懇切丁寧に指導していただいたうえに、さらにはコーヒーまでご馳走になってしまった。

 オーナーはお礼にキムジャンキムチを持参、私はフジを3個手土産に。これで残りは3個である。

 

(ニンニク栽培の最大の決め手、それは「よいタネを買うこと」)

 

 家に戻ってみるとご近所の方が遊びに来ていたそうで、初物のフジを食べてもらったとのこと。

 夜はキムジャンキムチをツマミにたらふく飲んで、口直しにフジをがぶり。

 わずか一日でフジは残り1個となってしまったのである(汗)。

 

 こんなことなら二袋買えばよかったのだが、また明日改めて買いに行くことにした。

 今度はおばさんも顔を覚えていて、まっさきに試食を勧めてくれるかもしれない。