先日のステークホルダーミーティング最終日。【未来につなぐTPS】ということで、トヨタ自動車の友山専務からの講演。その中で父との話を紹介してくださいました。
※TPSとはToyota Production Systemの略でトヨタ生産方式のことを指します。
今から約20年前、トヨタの工場で造ったクルマが販売店の新車ヤードに何日も滞留しているのを見て「これはなんとかしなきゃいけない!」も思った人がいました。
その人こそが、当時係長だった、現トヨタ自動車社長・豊田章男さん。販売店の物流を改善しなければと、業務改善室を立ち上げました。
しかし、「工場の考え方が営業に当てはまるものか!」と社内にも販売店にも大反対されます。
また販売店の現場へ改善に行くと、前日作ったTPSに基づく管理ボードが壊されるなど、メーカーの工場の人間が何しにきたんだ!というような雰囲気だったそうです。
当社の先代・勝又基夫も、あれがダメこれがダメと言いまくる豊田さんや友山さんをはじめとする業務改善室に対し「それだけ言うならやってみろ!」とすごい剣幕だったそうです。
現場では殴り合いの喧嘩になりそうな状況もありました。しかし、毎晩遅くまで仕事をして、毎日試行錯誤の繰り返しをしてくれる。評論家ではない、自分たちがまさに先頭に立って本気で販売店と向き合ってくれた業務改善室のメンバー。
そんな彼らとその成果を目の当たりにした先代が言った言葉が、このスライドです。
プレゼンをしてくれた友山専務から「国内販売店のドン・千葉トヨペットの故・勝又基夫社長のこの言葉から我々に対する周りの見方が変わった」と紹介してくださいました。
この当時、私は大学生。
卒業とともにトヨタ自動車へ研修に行くことになるのですが、販売店子弟のメーカー研修といえば、昔から営業部であったり、サービス(整備)部であったり、販売店財務であったりしました。
その中で私は一貫して約5年半、トヨタの改善だけを勉強させていただきました。これも父からの「結局仕事って言うのは改善しかない。その改善の本流に勉強にいくのだから、改善だけ学んでくればいい。後は帰ってきてからどうにでもなる」という一言からでした。
ところで、ブログをご覧頂いている方々の中にも、『改善』はやるべき事と理解できるけど、『生産方式』がなぜ販売と関係するんだ?と思われる方も多いと思います。あるいは悪い意味で言われるメーカー論理が働くのじゃないかと心配されるかもしれません。
ただ、販売と言ってもお客様とお話ししている時以外は物流、作業そういったものの塊です。またディーラーは整備がありますから、尚のことです。
決して、お客様との会話をマニュアルに沿ってこちらの伝えたい事を伝えるようにしていくということではありません。
そして、トヨタ生産方式は「生産のやり方」ではなく、トヨタ式という「経営哲学」なのです。
この経営哲学は、企業力強化と人材育成に力点が置かれているため、短期的な目標達成の意識しかないと理解しづらいのかもしれません(短期的な目標自体が悪いというわけではないです)し、哲学なので達成できるものでもないのです。
このように考えて行くと「マニュアル化されてしまうんじゃないか」ということと「そんなことやってたら、今の目標が達成できない」この二つから「工場の考え方が営業に当てはまるものか」という言葉になったのではないかとないかと思います。
改善の話を書くと止めどないので、研修時代のことも含めてまた書きたいと思います。ただ、このトヨタでの研修が今の自分を形成しました。自社の改善を形として残すこと、そして、お客様、販売店、メーカーをひとつなぎにして改善のリードをしていくのが、自分の使命であり、教えていただいたこに対する一番の恩返しだと考えています。
そしてそれを一段と強く思った、友山専務のプレゼンでした。
ありがとうございました!