10月になって涼しい日が増えてきました。服も長袖のシャツを着ることが多くなり、スカーフを巻いてお洒落の幅が広くなってきました。夏から秋にかけてどんどん自分も周りも変わってきています。
この時期になると、体調不良でお休みされるお子さんが多くなります。心身の不調を訴える原因は、気温や気圧の変化によって生じるものだそうです。暑い日々から急に寒くなったり、それに伴う気圧の変化で身体のバランスが崩してしまい、身体やメンタルの調子を崩してしまうようです。発熱や鼻水など目に見える症状以外にも、感情が高ぶりやすくなるお子さんもいます。普段は穏やかなお子さんでも、ちょっとしたことでテンションがとても高くなりやすく、イライラしやすいことがあります。時間が経って気温が落ち着くにつれて収束していくことが多いですが、力で押さえることは難しいので、感情の起伏の激しいお子さんの姿を見守るのはなかなか辛いです。
そんな時に僕は2つのことを提案します。一つは、「感情が高ぶる原因となるものをなるべく減らすこと」で、もう一つは、「心を落ち着かせるルーティンを作ること」です。「感情が高ぶる原因となるものをなるべく減らすこと」は、原因を取り除くことでそのシチュエーションを極力少なくして、親御さんとお子さんの負担を減らします。「心を落ち着かせるルーティン」は、感情が爆発する前に実施することで、高ぶった感情が少しずつ収まって徐々に落ち着いていくようにします。
レッスン前にお部屋でいつもより体を激しく動かして遊んでいたお子さんの話を書きます。そのお子さんは、お勉強の部屋に行くことを促せばスッと行けるのですが、ここ最近はお勉強をする前に「もっと遊びたい!」と大きな声を出すことがありました。普段ならそのままお勉強へ導入できるし、遊びたかったことを共感すると落ち着きますが、レッスン前の激しい遊びによってとても興奮しているのでなかなか伝わりません。さらに、テンションが高くなったことで、机の上の小さな消しくずや自分の座っている椅子の座り心地など、普段なら気にならないことも気になってしまい、あちらこちらに手を出すようになり、お子さんが自分の行動をコントロールするのが難しいように思えました。
その後、前述の2つの提案を当てはめました。具体的には次の2点です。
「感情が高ぶる原因となるものをなるべく減らすこと」は激しい運動をレッスン前に抑えることです。こちらに来られる時間を遅めにしてもらい、遊びの時間を減らしました。またお勉強前の親御さんとの話し合いを遊び場ではなく、お勉強の部屋で行いました。ポイントは、感情が高ぶる原因を無くすのではなく、それを極力減らして感情をコントロール出来る地点まで抑えることです。もし遊びの時間をなくすと、お子さんは、「遊ぶ→お勉強する」の習慣が崩れるので反発しやすくなります。そうなると、お子さんは怒ってしまい、お子さんが感情を抑えるのが難しくなり、お勉強どころではなくなります。感情をコントロールできる地点に留めておけば、お子さんは落ち着きやすくなり、お勉強に向き合いやすくなります。
「心を落ち着かせるルーティンを作ること」は、動作が少なく言葉を発しない課題を考えて、本人が継続して行える「なぞり書き」を導入しました。発声の大きさが段々大きくなって興奮したり、そこから遊びたいことを思い出す可能性があったので、発声を行う必要のない課題を選びました。また、なぞり書きは、一人でもエラー無く出来ることや目標に対してなぞることで、腕や手指の力だけでなく視線をコントロールできることが大きなメリットです。結果的にお子さんが自分の身体をコントロール出来ることで、気持ちもコントロールするようになります。
この2つの取り組みによって、お勉強の導入がスムーズになりました。激しい遊びの時間を興奮しすぎない程度にまで減らすことで、お勉強場面に切り替え易くなりました。そして、お勉強前にウォーミングアップとして本人が落ち着いて取り組めるなぞり書きをすることで、遊びの余韻を徐々に減らすことが出来ました。「もっと遊びたい!」ということを強く伝えることは減り、切り替えも早くなりました。何よりも本人が落ち着いて取り組めることで、大人だけで無く、本人もお勉強に集中しやすくなり表情が穏やかになっていきました。
お子さんが感情をコントロール出来ずに癇癪を起こしている時は、見守る大人も辛いですが、お子さん本人もどう対処して良いか分からずにとても辛いように感じます。感情が爆発するポイントを見つけ、程よいところで留める。そして、その感情の高ぶりの余韻を冷ましていく方法を見つける。その方法は出来れば毎日続けられ、一人でやりやすいことであること。爆発しているお子さんを押え付ける前にまずはその点を一緒に探していきたいですね。