父の最後の記憶


血を流す父

血まみれのタオルで父を支える母

床に落ちている血まみれの包丁


最後の記憶。




父と母はよく喧嘩をしていました。
毎回怖いと感じ自分の部屋で怯えていましたが
とある日の喧嘩は
幼い私が異常を感じ、
“母を助けなきゃ”
そう思うほど酷いものでした。

自分の部屋を出た私が見たものは
血を流す父、
血まみれのタオルで父を支える母、

「部屋に戻ってなさい!」

何度も母に怒鳴られていましたが
あまりの衝撃に目が離せなく
ただ立っているしかできませんでした。



病院に行った父と母。

ひとり家に残された私。

“怖い”という感情よりも
ただただ頭の中が真っ白になり
ぼうっとベッドの上に座っているだけでした。



その後どれだけの間
父と暮らしていたのかは覚えていません。

気づけば父はおらず
母と二人暮らしが始まっていたのです。