以前、中国の南シナ海等に対する認識に関する質問主意書というものを出し、答弁が返ってきておりました(解説はココ)。中国の王外相が国際会議で好き勝手に言っていることへの、日本の認識を質したものでした。

 概ね上記リンクで答弁があったのですが、沖ノ鳥島のステータスについては答弁が必ずしも十分でなかったので、再度念押しの主意書を提出しました。なお、質問と答弁はちょっと読みにくいので、面倒な方は解説の方に飛んでいただいて結構です。

【質問(PDFのリンクはココ)】
[T]he delegate of Japan also mentioned the South China Sea issue and claimed that all artificial land features cannot generate any legal rights. But let's first have a look at what Japan has done. Over the past years, Japan spent 10 billion yen building the Rock of Okinotori, turning this tiny rock on the sea into a man-made island with steel bars and cement. And on that basis, Japan submitted its claim to the United Nations over the continental shelf beyond the 200-nautical-mile exclusive economic zone. The majority members of the international community found Japan's claim inconceivable and did not accept it.

一 「The majority members of the international community found Japan's claim inconceivable and did not accept it.」とあるが、国際社会の多数のメンバー(the majority members of the international community)は、日本の主張(claim)を想像もつかない(inconceivable)ものだと捉え、受け入れなかった(did not accept it)との認識を、我が国は有しているか。

二 平成二十四年四月二十八日の「我が国の大陸棚延長申請に関する大陸棚限界委員会の勧告について」という外務報道官談話において、「勧告の詳細については、現在精査しているところですが、日本が申請した七海域のうち六海域について勧告が出されており、その六海域の一つである四国海盆海域について、沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められていることを評価します。」とある。四国海盆について、沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められていると判断できる根拠は勧告のどの部分か。

三 国連海洋法条約第百二十一条3には「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」とある。四国海盆について沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められているということであれば、沖ノ鳥島は「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」ではないとの理解でいいか。

【答弁(PDFのリンクはココ)】
一について
 我が国として、御指摘のような認識は有していない。

二について
 先の答弁書(平成二十七年八月十八日内閣衆質一八九第三七六号。以下「前回答弁書」という。)三の(三)についてで述べたとおり、我が国は、海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号。以下「国連海洋法条約」という。)第七十六条8に規定する大陸棚の限界に関する委員会(以下「大陸棚限界委員会」という。)に対して、我が国の大陸棚の外側の限界を二百海里を超えて設定すること(以下「大陸棚延長」という。)に関する情報を提出し、平成二十四年四月、大陸棚限界委員会により、四国海盆海域についての沖ノ鳥島を基点の一つとする大陸棚延長に関する事項を含む勧告(以下「本件勧告」という。)が行われた。我が国は、九州・パラオ海嶺南部海域について、大陸棚限界委員会により早期に勧告が行われるよう努力を継続しており、本件勧告の詳細を具体的に明らかにすることについては、今後の大陸棚限界委員会の対応に影響を及ぼすおそれがあることから、お尋ねにお答えすることは差し控えたい。

三について
 大陸棚限界委員会の任務については、前回答弁書三の(三)についてで述べたとおりであり、大陸棚限界委員会は、特定の地形が国連海洋法条約第百二十一条3に規定する「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」に該当するか否かについて判断する権限は有しない。なお、我が国としては、沖ノ鳥島がかかる岩に該当するとの認識は有していない。

【解説】
 問一は、日本が沖ノ鳥島を基点とする大陸棚申請を国際社会の大半が相手にしなかったと王外相が批判していることについて、日本はどう思っているかと問い、当たり前と言えば当たり前ですが「そんな認識ではない。」という答えでした。中国の認識は誤っているということをはっきりと述べています。ここは評価していいでしょう。

 問二ですが、この答弁は問題が多いです。日本が国連の大陸棚限界委員会に提出していた大陸棚延長申請に対する勧告が平成24年に出ています。それに対して、外務省は報道官談話で「勧告の詳細については、現在精査しているところですが、日本が申請した七海域のうち六海域について勧告が出されており、その六海域の一つである四国海盆海域について、沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められていることを評価します。」と述べています。

 なので、そこまで書いてあるからこそ、私は「沖ノ鳥島を基点とする我が国の大陸棚延長が認められ」たことの根拠は勧告のどこを見ればいいですか、と質問しています。国連海洋法条約第121条では、島は大陸棚を有する、人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は大陸棚を有しないとありますから、大陸棚延長が認められたという事は島であることが認められることが前提になります。

 しかし、答弁は「お答えを控えたい」というものでした。つまり、沖ノ鳥島は国連海洋法条約上の島として大陸棚が認められたという結論だけがあり、そこに導く理屈について教えないということです。まあ、まだ九州パラオ海嶺南部海域での勧告が残っているので、あまり言いたくないというのは分からなくはないですけど、しかし、大々的に言っている話ですからね。

 問三への答弁は、問二への答弁の延長です。ただ、変なのは国連の大陸棚限界委員会は「島か岩か」を判断する権限を持たないと言いつつも、外務省は「沖ノ鳥島を基点とする大陸棚が認められた」と言っており、それは条約上「岩ではない。島である。」という意思決定が無い限り言えないことなのです。間接的ではありますが、国連の大陸棚限界委員会がそういう前提で考えているという事は明らかだと思いますけどね。

 大体、沖ノ鳥島の国際法上のステータスについては、ここに書いてあることでコンプリートだと思います。ここは日本外交がよく頑張っている所です。