日本人の方がシリアで拘束されています。私はそういう紛争地域に直接行ったことはありませんが、数少ない経験から、外国、特に途上国での立ち振る舞いについては思うところがあります。
私がアフリカ在勤時(1997-1999)、チューヤンさんと伊藤高史さんによるアフリカ横断が行われたことから、それを真似てかどうかわかりませんが、色々な日本人の方が在勤地であるセネガルの首都ダカールにやって来られました。
正直なところ、「そんなヤバい所を何の情報もなく来たのか?」と思ったケースが幾つかありました。モロッコから西サハラ、モーリタニアをバイクで通って、セネガルまで来た方がおられました。そもそも、西サハラ自体が不安定な場所でして、全くお勧めできません。しかも、西サハラからモーリタニアに入ってくる時、緩衝地帯と言われる場所があります。そこは地雷が埋まっている場所でして、車の轍を外れて進むのがとても危険な場所です。私から「地雷が埋まっている地域ですよ。今後も南下されるのであれば、ギニア・ビサオやシエラレオネは事実上紛争地域に近いですよ。」と説明したのですが、それを知らずに通ってきたようでして、私の忠告も意に介していないようでした。
その他にも、「灼熱の中、冷たい湖に飛び込んで泳いだら住血吸虫にやられた。」というケースがありましたし、自慢げに「(広東住血線虫のいる)アフリカマイマイを食べた。なかなか上手かった。」と言っていた方もいました。現地の事情を少しでも聞いていれば、絶対にやらない行為です。
また、朝、同僚が大使館に行ったら、門の前でうずくまって、顔色の悪い日本人のパックパッカーの青年がいて「熱が出て、震えが止まらなくてきついんです。昨晩遅くからずっとここで誰か来るのを待っていました。」と言うので、ジーパンを少し上げてみたら蚊に刺された跡がたくさんあり、「そりゃ、マラリアだ。」とすぐに病院に連れて行ったケースもありました(マラリアについては私も罹患したのでエラそうな事が言えませんが。)。
アフリカの一部の国では、車を運転していて人身事故を起こしたら停まらずに、そのまま近くの街の警察に駆け込むのがいいとされています。車を停めたら、ボコボコにされる可能性があるからです。日本人の感覚ではちょっと考えにくいし、非人道的だと言われるかもしれませんが、それが現実です。場所によっては、意図的にそういうことをやった上で、旅行者の身ぐるみを剥いでしまう地域だってあるわけです。
昔、私はプライベートでタジキスタンを旅行したことがあります。その際、現地に詳しい方と東部ムルガブ までご一緒しました(普通はプライベートで行く場所ではありません。)。その方は地域事情に詳しく、私から見ると縦横無尽という感じに見えたのですが、その実、とても慎重でした。連絡体制は必ず取るようにする、怪しい食べ物には手を付けない、睡眠や休息は必ず取る等、これでもかというくらいに慎重でした。事情を知悉している方だからこその留意だと思います。
(なお、タジキスタンの写真を幾つか載せておきます。若いなあと思います。1 、2 、3 、4 、5 、6 、7 )
色々な意味でアドヴェンチャーを求める気持ち、とてもよく分かります。真の意味でアドヴェンチャーに乗り出す方は、どの方もすべて用意周到かつ慎重です。チャレンジするものにリスクがあるからこそ、準備段階で精一杯リスクを減らすことをするわけです。文化、気候、習慣等をよく知らずに、危険な地域に乗り出していくことは絶対にやってはいけません。