韓国が大陸棚の延伸について国連に申請を出しました。想像するに、日本が延伸を確保できたのが相当に悔しかったのでしょう。どうも、あれこれ話を聞いてみるとその悔しがり方は並々ならぬものがあります。


 ただ、韓国には延伸を主張できる大陸棚は存在しないのです。これについては過去に書きましたので、その内容をここ に再褐します。簡単に言うと、今、国連で申請を受け付けているのは、何処の国とも隣接しても、向き合ってもいない大陸棚を200カイリから先に延伸できるかどうかです。韓国はそもそも、すべての大陸棚が日本、北朝鮮、ロシア、中国と隣接するか、200カイリ圏内でぶつかってしまうので、そもそも、延伸の主張できる場所がないのです。ちなみに中国にも延伸できる海域はありません(が南沙諸島で無理筋のことを言っています。)。


 なお、日本も日本海側や東シナ海側では一切の延伸の主張をしていません。日本が大陸棚の延伸を主張できるのは、太平洋に開けた場所に国土があるからであって、それがいいとか悪いとかいう問題ではありません。そもそも、延伸を主張できる場所に日本がある、韓国と中国はそういう場所に国土がない、ただただそれだけでして、国としての優位性とか、そういうこととは関係ありません。


 もし、韓国の主張したようなことがすべて国連の限界委員会に持ち込まれ得るとすると、この委員会は事実上、第二の海洋法裁判所になってしまいます。基点から200カイリ以内で向き合っている大陸棚の境界画定はすべてこの委員会でやるというのは、そもそも、制度の本義として間違っています。具体的に言えば、地中海の大陸棚問題はこの限界委員会で検討すべきだと思っている欧州の国は一つもないでしょう。


 なので、韓国が延伸を提出するのは自由ですが、そもそも議論の俎上にすら乗らないと言って間違いないでしょう。そんなに心配する必要はありませんし、どうせ潰れる話だと思って無視していればいいだけです。


 元々、今回韓国がこんな無理筋の申請を出してきたのは、多分、2028年に期限が切れる日韓南部大陸棚協定での交渉ポジションとの関係があります。今、この協定で共同開発区域になっている場所はすべて日韓中間線から日本側に入ってきた部分です。当時の情勢からしても、境界画定が困難だったので開発について共同開発だけを決めたということですけども、現在、そのような状態になっていること自体が、日本からすると極めて大きな譲歩なわけです(この協定は国会審議で揉めに揉めて4年以上掛かっています。それくらい当時も問題視されたということです。)。今回の勧告の申請とは、その日本が譲歩して設定した共同開発区域は全部俺のものだということを、全く場違いの場所(国連の限界委員会)で主張し始めたということです。


 もっと言うと、協定署名時の1974年は大陸棚についてはまだ自然延長論が国際的な趨勢だったので、日本もそれに押されて日本側だけが損をする共同開発区域に合意しました。しかし、今は向かい合っている大陸棚については海底地形に関係なく、中間線を基本に考えるというのが国際法の趨勢です。分かりやすく言うと、現代の基準で行けば今の南部大陸棚協定で共同開発区域になっている部分はすべて日本の大陸棚となっているべきものです(まあ、中国との重複はありますけども)。


 つまり、そういう状況を察して、韓国側が「15年後くらいに来る南部大陸棚協定改定交渉では、どんなに日本が中間線論を打ち出してこようとも、うちは共同開発になっている部分から引くつもりはありませんよ。」とジャブを打ってきたということです。やり方は極めて無理筋かつ筋悪ですけども、外交的にはそう見るのが正しいでしょう。ただ、間違いなく国連の場で「あなたはきちんと日本や中国と話しなさい。」とコテンパンにやられます。今回の勧告の申請についてのみ言えば、それを静かに眺めておけばいいと思います。


 それにしても、日本なら絶対にこんなこっぱずかしいことはやらないですね。それくらい、普通では考えられない行為なのです、今回の申請は。