先生、凛が殺しちゃうんじゃないですか?

黎を迎えるにあたって最初に私が口にした言葉。

凛のフラストレーション対策を訓練所の先生に相談したところ、子犬のシェパードを迎えたらどうかと言われた。
不安しかなかった。
絶対ヤるだろう…としか思えなかった。

大丈夫、犬は無駄な殺生はしないから。

百戦錬磨の先生の言葉通り、凛なりに黎のことは可愛がった。

同じ犬種でこれほどまでに違うのかと戸惑うほど黎は大人しかった。
いつも困った顔をしていて、性格が現れてるのかなかなか耳も立たなかった。
お腹も弱く、皮膚疾患もあり、病気のオンパレードだった。

凛に依存していた黎は、具合が悪い時は凛にくっついて精神的安定を自ら得るような犬だった。
いつでも何をするにも黎は凛と一緒。
700サイズのバリケンに2頭一緒に入ってお出かけした。
人にも犬にも友好的で、まさに人畜無害。

ある日突然、私の前から消えてしまった黎。
憤りのない怒りしかなかった。
どうして?なんで?!の繰り返し。
人の子と犬を天秤にかけたように思えて仕方なかった。

凛から離れた黎の余生は安らかだったのか、不安だったのか。
でも不幸ではなかったと思いたい。