今日は読書です。

 

本日はこちらの本。

 

 

『手紙』 東野圭吾 文春文庫

 

両親を早くに亡くした剛志はずっと弟の面倒をみながら二人で暮らしていた。自分と違い勉強のできる弟に大学に行ってもらいたく、しかし肉体労働で体を壊してしまった剛志にはお金がなかった。そこで、資産家の老婦人の家に強盗に入る。

老婦人は留守のはずだった。引き出しにあった百万だけを奪って逃げるつもりが、弟が好きな天津甘栗をリビングで見つけたためそれも持ち帰ろうと引き返す。

油断してテレビも見始めた剛志の前にいきなり現れたのは呆然と立ち尽くす老婦人だった。警察に通報しようとした老婦人の首を咄嗟に持っていたドライバーで突き刺して殺してしまう。

強盗殺人は重罪である。剛志は刑務所に服役することになる。

剛志の弟の直貴は剛志が罪を犯した日から強盗殺人犯の弟という十字架を背負うことになる。学校へいってもだれも近寄ってこない。バイトはクビ。高校をなんとか卒業し、担任だった教師がなんとか見つけてくれた就職先で働くがそれは雑務だった。そこで知り合った男に通信大学というものがあることをしり、直貴はそれに申し込み通信教育で大学生となる。何度かのスクーリングのときある男が声をかけてきた。バンドを組んでいるらしくカラオケで一曲歌った直貴にボーカルをやらないかと誘ってきた。本格的にプロを目指しているらしい。

ある日のライブで大手事務所が声をかけてきてデビューの話が持ち上がるが、直貴に抜けてほしいとメンバーから言われる。事務所が直貴の家族のことを調べたらしい。

その後も直貴には転機が訪れるが犯罪者の弟というレッテルが直貴を苦しめる。

毎月届いていた剛志からの手紙もいつしか読まずに捨てるようになっていた。

 

ものすごく重いテーマですね。そしてものすごく考えさせられます。

 

加害者の家族の人生が書かれているわけですが、それは本当に

 

過酷です。

 

何をするにも犯罪者の家族・・・というだけで断られたり、色眼鏡で見られたり・・。

 

自分が罪をおかしたわけでもないのになぜこんな理不尽な人生を

 

送らないといけないのか・・・。

 

直貴の苦しみは相当だったと思います。

 

一方刑務所からは月一で兄の剛志から手紙が届きますが、

 

直貴はその手紙を読むのも嫌になり読まずに捨ててしまうようにまでなって

 

しまいます。

 

自分のために犯罪を犯した兄なのに、結局自分を苦しめるだけの兄。

 

そんな直貴だが、直貴が犯罪者の家族とわかっても変わらない人物が

 

何人かいた。仕事場で知り合った由実子とバンドのメンバー、そして

 

大学を卒業して勤めた会社の社長だった。

 

特に由実子は何かと直貴を気にかけてくれて・・・・

 

評価は★5

 

犯罪被害者の家族が苦しむのは当然として、しかも同情されることが多い。

 

しかし犯罪者の家族も同様に苦しんでいるということは理解されにくい。

 

そんな犯罪加害者の家族、直貴の人生は兄の強盗殺人の罪で

 

まともではなかった。

 

もともと成績が良かった直貴だが、大学進学も諦め、バイトもクビになり、

 

バンドからも外され、恋愛もダメになる。

 

どれもこれも兄のせいなのになぜ自分がこんな目に合わないといけないのか。

 

ただ由実子がいてくれたことが直貴には本当に良かったと思える。

 

終盤、直貴はある決断をする。苦しい決断だっただろうと思う。

 

だが私は読んでいて、何故もっと早くその決断をしなかったのか?

 

そしたらもっと違う人生が待っていたのではないか?と思ったが、

 

ただ、その決断をしたからといって、兄が人を殺したという事実は

 

一生心に残るものだろうけど。。。。

 

フィクションではあるが、犯罪者の家族がどんな壮絶な人生を

 

歩むことになるのか・・・本当にやり切れない気持ちになる作品ですね。

 

文体もストーリーも良かったですが、ラストの締めも完璧だったと思います。