馬にのって
ガブリエラ・ミストラルの国を疾駆してきた
サトコは
あこがれの詩人の墓地から
ひと握りの土をひそかに拝領 帰国して
お裾分けにとわたしのところへやってきた
以下 省略
新川和江 「土へのオード13」 9より
私が「サトコ」に出会ったのは、この詩のなか。
なので、てっきり「サトコ」は詩人なのだと思っていました。
遠いチリの草原を馬で駆けめぐって来た日本の女流詩人―。
ロマン溢れるイメージと、引用されているミストラルの詩の「眼差しの哀切さと深さ」
2人の女性の幻影が脳裏に深く刻まれたのは、1975年頃のことでした。
それから約10年後。サトコが「田村さと子」であることを、この本によって知りました。
今、本棚を探したら、奥の方にありました、懐かしい!
裏表紙:汚れていますが、中上健次の熱い言葉にあの頃の自分が蘇る・・・
ミストラルのことのほか、1982年に訪れたラテンアメリカ諸国のことが書かれている(ようです)。
実際に田村さと子さんの講演を聴いたのは2004年、パブロ・ネルーダ賞を受賞されたときでした。
30年前の私の勝手な想像とは違い、エレガントで穏やかな印象にとても好感を抱きました。
まだまだご活躍なさると期待していたのに残念でなりませんが、これを機にもう一度「南へ」を読み返してみたいと思います。
女性の感性でラテンアメリカの世界へ導き入れてくれた「さと子さん」に心から感謝と哀悼の意を捧げます。