第17回若手監督作品上映会と検閲事件 | MARYSOL のキューバ映画修行

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恒例の『MUESTRA JOVEN(35歳以下の若手監督作品上映会)』が4月3日から8日までハバナ市内で開催される。
17回目を数える今年のコンペティション作品は、91本の応募作品の中から、フィクション14本、ドキュメンタリー12本、アニメ3本が選ばれた。(尚、選考から漏れた作品も時間をずらして上映される。)

 

オープニング作品は、カルロス・マチャード=キンテラ監督の『東の狼』!
https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-12344392748.htm    l

 

          

 

ところで、今年の上映会では、長編フィクション『Quiero hacer una película(仮:僕は映画が撮りたい)』(以下、『QHUP』)がICAICの検閲にあい、数週間前からウェブを賑わせている。

 

事の発端は、実行委員会が、ジミ・ラミレス監督が製作中の『QHUP』の上映を要請したのに対し、ICAICから〈わずか24席の小部屋〉を上映会場として指定されたこと。

「これでは関係者しか入場できない」「もっと大人数の部屋で上映されるべき作品だ。すべてはICAICの判断に掛かっている」という投稿がMuestra Jovenのフェイスブックに載る一方で、『QHUP』の監督、ジミ・ラミレスは抗議の意を込め、出品を取り下げる。
以上が、3月9~12日にかけての出来事だった。

 

それから約10日後、22日に予定されていたICAIC(キューバ映画芸術産業庁)によるプレス会見は、思いがけず“検閲宣言”の場に転じた。

例年通り、プレス会見に集まった記者、関係者、一般人を前に、ICAICのロベルト・スミス長官は次のように語ったのだ。
「作品選定終了後に、実行委員会から『QHUP』をコンペ外の製作中作品として上映したいという要望がICAICにあった。しかし、同作品では登場人物の一人が、ホセ・マルティについて容認し難い表現をしている。ストーリーの背景がどうであろうと、マルティに対する侮辱は、ICAICのみならず、我々の社会及びその価値観を共有する者に関わる問題だ。単に創造の自由として認められることではない」
「ICAICの文化政策および社会的役割に鑑みて、国家的シンボルや国家の歴史的重要人物に対するあらゆる無礼な表現を拒否する」。

 

ICAICが指摘する問題個所とは《何かと意見が異なる恋人同士の会話の一部で「マルティなんて“モホン(糞ったれ)”の“マリコン(オカマ野郎)”だ」と いう台詞》。

 

さらにスミス長官は「製作者たちとは、さらなる検証・分析を共に行うことを提案をしたが、彼らの方から出品を取り下げた。と同時にネット上でICAIC批判を始めた」と非難。「ICAICは独自の判断をする権利を守る」と宣言し、退出してしまった。

というわけで、開催前から波乱含みの上映会だが、幸い中止という事態にはなっていない。

 

     

     3月22日の様子(予想外の声明に驚く関係者たち)

 

ちなみに、若手監督作品上映会では過去にも何度か検閲事件があり、第11回(2012年)の実行委員長だったフェルナンド・ペレス監督は抗議の辞任をしている。
https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-11193848862.html