「チェコ事件」の衝撃 | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

故黒木和雄監督の『キューバの恋人』 が、キューバで撮影されたのは1968年。
撮影中の8月20日、「チェコ事件」 が起きました。
この事実を示すカットが映画の中にあります。
MARYSOL のキューバ映画修行-チェコ事件2 MARYSOL のキューバ映画修行-チェコ事件1


「ベトナム」と「チェコスロバキア」を指す標識で、「ベトナム」に向かうべき戦車がチェコに向かっていることを皮肉っています。




以下、「カストロの道」K.S.カロル著より引用
キューバの人々は、8月21日のソ連軍侵入を前にして、全世界の世論同様、

茫然自失した。(中略)ハバナに滞在していたチェコの技術者が、直ちに多くの同情を集め、こうした民衆の連帯感に勇気付けられた彼らが「祖国か死か」を繰り返しながらベダドをデモしたのも、極めて当然のことだった。この同じ日、ラジオは、8月23日午後9時に、フィデルが全国民に向かって演説を行うと発表した。(中略)彼が何年も前から、《革命勢力としての》ソ連の《信用性》に対して疑惑を植え付けてきたために、今、彼が話しかけるべき国民は、ソ連に向かって寛容な態度をとる習慣を持たないばかりでなく、正統的共産党にあれほど深く根をおろしている親ソ神話からもまったく影響を受けなくなっていた。(中略)彼の演説は(中略)多くのキューバ人にとっては、困惑に満ち、悲愴でさえあり、彼が行ったすべての演説の中でも最も苦悩に満ちたものと映ったのである。


          MARYSOL のキューバ映画修行-ジョセフ・クーデルカ展

さて今、東京都写真美術館で「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」 という写真展が開催中。
市民の抵抗を示す写真と共に、凛として厳粛な号外の文、勇気を浪費させない思慮深さ、不屈の魂が発する「言葉」の数々も示唆に富みます。

時間の余裕をもってぜひお出かけください。


また、この写真展を見た後、『存在の耐えられない軽さ』(ミラン・クンデラ)を読み返してみたのですが、まさに写真展の<続き>が語られています。ちなみに、主要な登場人物の一人、テレザは「チェコ事件」のとき《プラハの通りでロシアの兵隊の写真を撮り、自らを危険にさらし》ていたという設定。
読みながら、私には“個”として存在できない世界は耐えられない…ことを確認しました。