その年の 夏前にますます貯金残高がヤバくなりかけていた。

やはりこれ以上、家族に負担はかけられない。
働かなくては・・・・



前回 劇場で働いていた時よりも体も動きそうな気がしていた。
今度のアルバイトは 通勤が楽というだけで選んだ。
なので、そのアルバイトになんの興味も沸かなかったし お金が欲しいだけで選んでしまった。


スポーツクラブのフロント受付。


研修は 前の劇場よりもしっかりと教えてもらった。
フロント係なんで、チェックイン・アウトだけの管理かと思っていたら、会員獲得にものすごいプレッシャーをかけられた。

一緒に研修受けてた 20代の子はそれが嫌ですぐ辞めていた。


初めてフロントに立った日、1時間だけ靴の中敷を販売するように言われた。
クラブに来た会員の方 帰る会員の方に売るのだ。
私は販売の仕事しかしてこなかったので あまり苦ではなく、中敷の説明書を読み1時間で30個近く売った・・・・らしい。
社員さんがレジでカウントしていたのだ。


翌日 事務所に入ると画用紙に手書きでカラフルに

『琳子さん、アルバイト初日で中敷1時間に30個販売!!!
〇〇君の記録 更新!!!』

と、扉に貼っていた。


こんなん・・・・やめて !!!
また悪目立ちやん。
帰りに社員さんがいないか確認して、破って捨てた。

大学生のアルバイトさん達が羨望の眼差しで私を見て、大学生や若い人達の間で何故かすぐ人気者になった(笑)


2日目 入会手続きを初めてやった。
本当に偶然にもその時クラブが押しまくっていた お値段もそこそこのダイエットコースをやりたいという お客様の入会に当たっただけなのに・・・・


『琳子さん、またまた快挙!!
アルバイト2日目でダイエットコースの会員Get!!!
アルバイトで入会につながったのは琳子さんだけです!!』


・・・・・・・


私の名前は一気に広まりインストラクターの人まで顔を見に来た。

そして上層部も。


その後も 施設見学に来られたお客様をその日に入会につなげるとかでも また成績がよかったらしい。
社員さんは、私をえらくもてはやした。
他のアルバイトの士気を高めるためだったのだろう・・・

けど

やめてほしい、こういうの・・・・。

言われた事をやって 結果を褒められるのはうれしい。
けど私は、・・・・地味にひっそりやりたかった。
体を、感覚を働くモードにゆっくり変えていきたかったのに・・・・・


ものすごく居心地が悪かった。




やっぱり 私をよく思わない人が 露骨に厭味を言ってきたり、目配せしてヒソヒソ話をしていた。


その度に心臓近くにドーンと重苦しさがのしかかる。

病み上がり?
いや、まだ完治していない私にはそれが耐えられなかった。
軽い動悸が始まるからだ。


仕事内容もたいして好きではない。

居心地悪い。


4ヶ月経つ前に辞めますと伝えた。

毎日 呼び出されて辞めないように説得。
しまいには 部長クラスにまで呼び出し(笑)


クラブ側も根負けしたのか、辞めるなら次が決まっている何か証拠があればOKと言われた。

今から 考えると変な条件だ(笑)


よい タイミングで私が興味ある仕事、時給制だったが時給がかなり高く、「やりたい!」と思える所に決まったのだ。
それも 出来るだけ早く来て欲しいという話だった。


無事にスポーツクラブを辞め 次の仕事には2日後から行っていた。



短い期間だったが、
私を頼りにしてくれた年輩の会員様もいてくださり 辞める時にわざわざ来て下さって「琳子さん、いろいろありがとう」と高級タオルをくださった。

少し泣きそうになった。


何故か 大学生や若い人達になつかれ泣いてくれる子までいた。
最後の日は「うちで送別会やりましょ!!」と一人暮らしの大学生の子が家に招いてくれた。


あの時の大学生の人達は、みんな働き出しているだろうなぁ。
たまに、どうしているやろう?会ってみたいなぁと・・・思う時がある。

困った時、わからない事があると彼女達が真っ先に助けてくれた。


やっぱり、人は温かいのだ