[ザ・スパイダースのバリ島珍道中] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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西河克己監督。伊奈洸、村田啓三、智頭好夫脚本。高村倉太郎撮影。かまやつひろし、林一音楽。68年、日活配給。


ピエ太さんのリクエストでGS映画を探したがこれしかなかった。スカパーチャンネルNecoの録画にて鑑賞。


60年代にザ・ビートルズらの影響を受けて日本にグループ・サウンズブームが起こり、数々の人気グループが誕生する。ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、後に田辺エージェンシーの社長となる田辺昭知をリーダーとして結成されたザ・スパイダースはそのGSブームの先駆けとなるが、映画に進出したのはザ・スパイダースが早く、本作は結成7周年を記念して製作された日活のシリーズ第4作にあたる。


まずザ・スパイダースのメンバーを紹介しておく。

堺正章、井上順、ボーカル。かまやつひろし、ギター。井上堯之、ギター。大野克夫、オルガン。加藤充、ベース。田辺昭知、ドラムス。後にタレントとして活躍した堺や井上、ソロでも活躍したムッシュ、沢田研二のバックや『太陽にほえろ』のテーマ曲で知られる井上堯之。『勝手にしやがれ』などの数々のヒット曲を作曲した大野克夫。いかにこのバンドがスーパー・グループだったのかは、彼らの後の活躍が証明している。


映画は謎の組織がプルトニウムをザ・スパイダースのアンプに隠して、運び屋にさせることで、命を狙われることになる。アジアの各国を股にかけた爆笑音楽映画。


スパイダースのメンバーは世界演奏旅行を前に多忙。一方そんな彼らを利用してひと儲けしようとする密輸団があった。アマゾンの譲治(内田良平)と上海の張(高品格)の一味である、彼らはスパイダースに香港までプルトニウムを運ばせる計画をたてていたのだ。やがて、スパイダースの一行は、不慮の事故で入院した田辺を残し羽田空港を出発した。まず香港に到着した一行は、大阪弁で話す美女リンダ(杉本エマ)と仲良しになり、彼女の案内で香港見物としゃれこんだ。ホテルに帰ってみると、部屋が荒されていた。譲治と張が一行のアンプに仕組んだプルトニウムを取りに来たのだ。異様な恐怖に包まれた六人は、正章の案により違うバンドと入れ替わり、女装をしてホテルを脱走した。一方退院した昭知は「ジャカルタヘイク」の電報を受けとり一行の後を追った。ジャカルタ入りした六人は、中国人の王に迎えられ、ホテルのショウに出演し、そこへ駈けつけた昭知と再会して大喜び。だが、その帰り七人は、再び譲治に襲われた。さらに逃げてバリ島にやって来た彼らは、はじめて自分たちが狙われている理由を知った。ポーターに運ばれたアンプの蓋があいて、その中からプルトニウムが出て来たからだ。一同は厄病神のようなプルトニウムを廟の中へ捨てるとホテルで出会ったリンダに誘われて浜辺に出た。一方その留守中を襲った譲治らは、アンプをあけてびっくり。早速、その所在をつきとめるため七人が参加している集落のお祭りにあらわれ…,。



クルージーキャッツの映画同様にパンアメリカン航空が全面タイアップ。飛行機が再三写され、メンバーはパンナムのバックを持たされている。香港、ジャカルタ、バリ島、それぞれの観光名所でロケが行われ、各地で、スパイダースは演奏する。主題歌は『真珠の涙』。GSの音楽映画であるから、その宣伝が主目的なのだが、映画としても楽しめるように、マフィアからの逃走劇と、堺正章が恋人から連絡を求められるドタバタ喜劇が物語に盛り込まれ、楽しめる構成になっている。


西河克己。『陽のあたる坂道』など。