[タイタニック] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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ジェームズ・キャメロン監督・脚本。ラッセル・カーペンター撮影。ジェームズ・ホーナー音楽。ロバート・レガートVFXスーパーバイザー。ピーター・ラモント美術。セリーヌ・ディオン主題歌。97年、アメリカ映画。



市販のDVDにて再観。


20世紀ハリウッドが世紀末に放った。傑作中の傑作。

当時、最大のヒットを記録。アカデミー賞11部門受賞。キネマ旬報ベストテン第4位。日本でも社会現象にまでなった恋愛パニック映画。


かつてイタリアの名監督ロベルト・ロッセリーニ は言う、男と女、車があればドラマが生まれ映画が撮れると。真の名作と言える作品は万人に受け入れる内容であることが重要。そのためにはシンプル・イス・ベスト。ハリウッド映画が得意とするラブ・ストーリーと王道の題材である“タイタニック号”の沈没もいうパニック映画を見事に融合したジェームズ・キャメロンのアイディアが素晴らしい。


20世紀初頭を再現するピーター・ラモントの美術と豪華客船タイタニック号を再現する超絶な特撮力。そして、これを観た若者たちが真似したがった。船の舳先で両手を広げるローズ(ケイト・ウィンスレット)の後ろからキスするジャック(レオナルド・ディカプリオ)。かつての恋愛映画にはそれぞれに名シーンがあるが本作の真っ赤な夕日に染まってラブ・シーンはそれらを凌駕するほど美しい。


そして、映画は中盤からタイタニック号沈没の壮絶なパニック映画へと様相をガラリと変えてみせる。[ポセイドン・アドベンチャー]で観る側の度胆を抜いたハリウッドの海洋パニックは20年という歳月の間にここまで進化したのかと思わせる壮絶なパニック・シーンを作り出す。ジャックとローズが出会った船首を最後に垂直にタイタニックが沈没するシーンの立体感と迫力は半端ではない。イギリス映画[SOSタイタニック]では表現し得なかったハリウッドの特撮力の凄さをまざまざと感じさせるクライマックスだった。


現代。北大西洋3773メートルの深海に眠るタイタニック号の引き上げ作業が行われていた。作業を指揮しているのは行方不明となった宝石「碧洋のハート」を発見し、一攫千金を狙うラベット(ビル・パクストン)。船内の金庫から見つかったのは、若い女性を描いた一枚の絵だけだった。その女性の裸の胸に身につけていたのが「碧洋のハート」。この模様をテレビで見た100歳の女性ローズ・カルバート(グロリア・スチュアート)が孫娘のリジー(スージー・エイミス)とともにラベットに会いに来た。彼女はタイタニック号事故の生存者で、問題の絵のモデルだという。悲劇の航海の模様が、ローズの口から語られていく…1912年。イギリスのサウサンプトン港から処女航海に出ようとするタイタニック号に、賭けで勝ってチケットを手に入れて三等に乗り込んだ画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)がいた。17歳のローズ(ケイト・ウィンスレット)は上流階級のアメリカ人だったが、家は没落。大資産家で婚約者のキャル(ビリー・ゼーン)と結婚することで家を守るようにローズの母親ルース(フランシス・フィッシャー)に厳命されていた。彼女はコロラドの富豪夫人モリー・ブラウン(キャシー・ベイツ)と一緒に一等船室に乗る。ローズがキャルとの婚約に疑問を挟んで、船の舳先から飛び降りようとしたのを助けたのがジャックだった。ジャックはローズの家族から食事の招待を受け、上流階級の生活を垣間見る。同時に二人は激しい恋に落ちた。4月14日、ローズは家族から逃れてジャックと二人だけで過ごし、ジャックはローズをモデルにデッサン画を描く。その後追手から逃れながら船の中で二人は結ばれる。だがローズの心が自分から離れたのを知ったキャルは、ジャックに「碧洋のハート」を盗んだと濡れ衣を着せ、彼に手錠をかけて船室に閉じこめる。深夜、船は氷山に船体を傷つけられ、停止、浸水が始まり…。


ジャックとローズの荘厳なまでの別れ。そして助かったローズのクローズアップに深い年輪のような皺を刻んだ現代のローズの顔がオーバーラップされていく。この映画の冒頭とエピローグに使われた現代のローズのシーン。これが重要なのだ。彼女の顔に刻まれた皺はローズが心の中でジャックの対して刻み込んできた愛の年輪であり、ふたりの崇高な愛の物語に永遠の深みを与える効果を発揮、それがこの映画の深みになっているのだ。こうしたキャメロンの秀逸な芸術的表現が、究極の恋愛映画を生み出したのだ。


映画の大ヒットと共に大ヒットしたセリーヌ・ディオンが歌う主題歌も色褪せることのない名曲であり、やはり名作には名曲ありなのである。


ジェームズ・キャメロン。『アバター』