[クレージーだよ 奇想天外] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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坪島孝監督。田波靖男脚本。宇野晋作撮影。萩原哲晶、広瀬健二郎音楽。66年、東宝配給。


スカパー日本映画専門チャンネルの録画にて、鑑賞。

東宝クレージー映画で、唯一の谷啓主演作品。作戦シリーズの第6作。スラップスティックコメディであり、痛烈な社会風刺が込められた、SFコメディに仕上がっており、植木主演のシリーズとはかなり異色なイメージの映画。植木は後半国会の場面で、平和法案に反対する頭のおかしな議員として登場。谷啓の地球での行動を監視する宇宙人役で藤田まことが主演して植木不在をフォローしている。


α星はこのところ地球の原水爆実験やロケット打上げの影響で被害甚大、そこでα星長官(植木等)がM7(谷啓)と監視役零八(藤田まこと)を地球に派遣したのだった。それでM7は日本人鈴木太郎(桜井センリ)に乗り移った。太郎は大聖化学の新入社員、彼の身体にのりうったM7は鈴木太郎の生活を送ることになる。ところでα星には女は存在しない。星人は機械から生れる。女を知らないはM7は大聖コンツェルン会長(進藤栄太郎)秘書城山和子(星由里子)と鈴木太郎の恋人佐々木ゆかり(野川由美子)のお色気に目をパチクリ。さてM7と零八はα星長官から超能力を与えられていた。M7はそれを用いて、パチンコの玉を出し放題、空の電車を走らせたり等々、超能力濫用気味。ある日、大聖化学製の大砲の弾を花火に変えてしまう。その弾丸は自衛隊やベトナム戦用のものだったから大間題になった。M7はクビになった。その上零八から超能力を差し止められてしまった。一方、大聖化学の社長磯村(ハナ肇)は会長の後押しで代議士に立候補したのだが選挙運動中倒れてしまった。そこで代役に立ったM7は見事当選し、いちやく国会議員。ところがまたまた、会長の策した平和法案が原水爆実験再開を認めるものだと反対演説をぶってしまった。怒った会長はM7に殺し屋をさし向け…,。


パチンコで儲けた金を奪いにきたチンピラに金を渡したことで、彼は後に歌謡ショーのスタージミー健に。この役は若き日の内田裕也が演じており、バックは寺内タケシとブルージーンズ。豪華なゲストが出演している。さすがに東宝と渡辺プロの共同製作。その世話係になったM7が代役で社会批判の歌を歌うと一躍大スターになってしまう。このあたりのサクセスぶりが大爆笑。谷啓の超能力が得意のガチョーンポーズなのが笑える。


ヒロインは星由里子と野川由美子東宝映画の常連だが、それぞれに実にキュート。またゲスト的に登場する藤田まことも地球のストリップに喜ぶ、とぼけた持ち味を発揮している。


この映画、これだけ全面的に自衛隊批判をしていることに驚かされる。渡辺プロ絡みだと体制的な作品なのかと思っていたが、この脚本の田波靖男はこの時代、左翼系の映画人も多かっただけに、その流れなのかもしれない。前半、新入社員教育で谷啓が自衛隊に入れられてしまうあたりも痛烈なブラック・ユーモアになっていて笑えた。


ラストに当時横浜にあったドリーム・ランドでのロケが行われ、実に懐かしかった。


坪島孝。[クレージー作戦 くたばれ無責任]