[花と嵐も寅次郎] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

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山田洋次監督・脚本・原作。朝間義隆脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。82年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて鑑賞。シリーズ30作記念作品。この映画の共演がきっかけになり、田中裕子と沢田研二は結婚することになるので、そういう意味では記念的な映画ではあるのだが、この頃になると寅次郎は若者の恋人たちのキャーピット役に徹してしまい、本来のこのシリーズの持ち味が発揮されてない。

笑いとペーソスに溢れた下町人情話であることが本シリーズのコンセプトだと思うのだが、この映画などは笑いの部分がほとんどない。観ていて、寅次郎の孤独感と悲哀の方ばかりが強調されてしまっていた。


大分は湯平温泉でバイをする寅次郎(渥美清)は、馴染みの湯平荘に宿をとった。夜、寅と宿の親父、勝三(内田朝雄)が酒を飲んでいると、そこへ、ひとりの青年三郎(沢田研二)がやって来る。かつて、この宿で女中をしていた女性の息子で、その母がひと月ほど前に病死し、遺骨を埋めにこの地にやって来たという。勝三は美しい三郎の母親を覚えており、彼の親孝行に感心した寅は、さっそく昔の知り合いを集め、供養をしてやる。同じ宿に泊り合わせていた、東京のデパートに勤めている旅行中の螢子(田中裕子)とゆかり(児島美ゆき)という二人の娘も、寅はその席に座らせてしまう。翌日、二人の娘と見物をしていた寅は、車で東京に帰ろうとしていた三郎と出会い、その日は四人でドライブをする。そして夜、二人の娘と別れるときになって、三郎は螢子に付き合って欲しいと言う。唐突なので、螢子はとまどうようにフェリーに乗り込んだ。車で東京に帰った寅と三郎はヘ卜ヘトになって柴又に辿り着く。とらやの家族の団らんは、母と二人で育った三郎にはとてもうらやましく思えた。そして、三郎は自分の思いを螢子に伝えてほしいと寅に頼んで帰っていく。一方、螢子も、寅との楽しい時が忘れられず、とらやを訪ねた。その日、寅は留守だったが、数日後、二人は一緒に酒を飲んだ。寅は三郎の気持ちを螢子に伝える。親のすすめる見合いを断った螢子だが、三郎は二枚目すぎると二の足を踏む。寅の報告にガックリする三郎。そこで寅は、螢子をとらやに招待し、彼女には知らせずに三郎も呼び…。


映画は大分県に全面ロケ、湯平温泉はタイアップ。ただ、いきなり沢田演じる三郎の母親の葬儀になり、トーンが全体的に暗い、沢田の歌は冒頭の夢オチで使われて、そこは配慮があるのだが、クレジットは布施明の時同様ない。


寅が三郎に口説き方の伝授をするのだが、一作目で博にしたまま。もうギャグやストーリーテリングなどが思いつかなかったのではないか。三郎が荒川土手で、蛍子を口説く下りや、最終的な告白の場になる観覧車のシーンなどはいいのだが、寅次郎は結局、その中で悲哀感と孤独感しか出せていない。


結局、このシリーズは秀作と言えるのは前半の作品だけ、[夕焼け小焼け]あたりまでではないか。特においちゃんは下條は暗くて、元気がない。やはり、森川信と渥美の歯切れいいやり取りこと、このシリーズの持ち味だったように思うし、このタイトル自体、意味がない。


山田洋次。[たそがれ清兵衛]など。