[新男はつらいよ] | 力道の映画ブログ&小説・シナリオ

力道の映画ブログ&小説・シナリオ

映画ブログです。特に70年代の映画をテーマで特集しています。また自作の小説、シナリオもアップしています。

小林俊一監督。山田洋次原作・脚本。宮崎晃脚本。高羽哲夫撮影。山本直純音楽。70年、松竹配給。


スカパー衛星劇場の録画にて、再観。シリーズ第四作。前作に続き、このシリーズはもういいと考えていた山田洋次はプロデューサーの小林俊一にメガホンを託し、自分は脚本に徹している。マドンナは後に[柴又より愛をこめて]にも出演することになる栗原小巻。


前半、競馬で大儲けした寅が、おいちゃん夫婦をハワイに連れて行こうとするドタバタ劇、後半は寅の部屋に下宿した栗原演じる幼稚園の先生春子に寅が惚れ、失恋するシリーズの定番。ロケ地は名古屋の競馬場くらいで、あとは物語がほぼ柴又で展開する珍しいパターン。(予算的な問題かもしれないが)。


名古屋の競馬で大穴を当てたフーテンの寅こと車寅次郎(渥美清)が久しぶりに故郷柴又に帰って来た。柴又では寅のおいちゃん夫婦(森川信、三崎千恵子)、妹さくら(倍賞千恵子)、その夫博(前田吟)らが寅の噂に花を咲かせていた。寅は百万円を見せびらかせ大得意、日頃の恩返しにとおいちゃん夫婦をハワイ旅行に行かせると大はりきりだった。弟分で今は旅行社に勤める登(津坂匡章)に準備万端をした寅は、ハワイの夢に胸はずませるおいちゃん夫婦に有頂点。この噂は近所に知れ、寅の株はグッとあがった。ハワイへ出発する日だが、好事魔多し、寅の金を登の社長が持逃げして、旅行の夢ははかなくも消えた。近所の人の手前を気にする夫婦は、夜中にこっそり帰ってきた。そして、寅の提案により、数日を戸締りし、電気もつけないで暮すことになった。だが、その第一日目、留守を承知に押入った泥棒(財津一郎)が暗闇の中に三人を発見して大騒ぎ。この件により事の始終は近所の人たちの知るところとなった。かくして又ぞろ寅さんは柴又から姿を消すハメになった。それから一カ月。おいちゃん夫婦が心配になって、寅は帰郷、自分の部屋に下宿する美しい幼稚園の先生・春子(栗原小巻)に恋をしたのだ。日増しにつのる慕情。春子と生き別れの父が病死し、寅は春子を元気付けようとするが、春子には会沢(横内正)という恋人が‥。


寅たちが遭遇する泥棒のエピソードが締めに繋がり、全体的にテンポがあり、特に前半は大爆笑できる。

まだ海外旅行が庶民には夢だったことが、伝わってくる。マドンナの栗原小巻はサユリストかコマキストかと比較されるくらいの人気女優だが、テレビドラマでデビューから数年、この映画では、ふっくらとして可憐さを感じさせる。ただ前半のノリと比較すると後半は工夫がないように思う。特に妹さくらの登場場面があまりに少ないこともシリーズの基本から外れている。


結局、山田洋次の思惑とは別にこのシリーズは松竹にとってドル箱になり、次作から監督復帰することになった。