一応大人なので社交辞令という技を身につけています
「あれっ？どーしたの？」
「久しぶりー」
「いやー、今やっと少し時間が空いたよー」
「ずーっと電話しようって思っててさぁ」
はっ？
まさか私が首を長くして
アナタからの電話を待っていたとか思ってたのかな？
久しぶりの会話に花が咲くというかなんというか………
あれこれ大変だったという話を聞かされ
適当に話を合わせる私
「それとさ！ゆりなちゃんに渡したいものがあるんだよね」
「何？」
「香典返し」
「ほら、ゆりなちゃんからもらってたのに返せてなかったからさ」
あー
それか
だから電話してきたのかな？
まあフツーは参列した時にもらうものでしょうけどね
「あ〜………別にいいよいいよ」
「いや、いいよいいよ。今から持ってくよ。」
「えっ？今から？」
もう十日ほどたっていますし
それについて特に私も気にしてなかったので
何度かお断りしましたけれど
どーしても渡したいというマツモトさん
「じゃあ、別に今じゃなくてもいいよ」
「マツモトさんも何かと忙しいでしょうし、なんなら今度会社で会った時でもいいよ。」
「うんまあ、忙しいっていうか………やることはあるっちゃあるんだけどさー」
「でも少しぐらい大丈夫だよ。どっちにしろそんなに長居はできないから。」
あーそーですか
これ以上押し問答するのもなんですし………
急に来るって言ったのはマツモトさんなので
特にお構いもせず
ノーメイクで部屋着のまま待つことにしました
三十分ほどしてマツモトさんが到着
「はい、これ」
そう言いながら香典返しを手渡されました
「ありがとう。いろいろと大変だったね。」
心にも思ってるか思ってないかは置いといて
そう答えました
長居はしないとのことでしたが
とりあえずコーヒーぐらいは出しました
だいぶ疲れてる様子のマツモトさん
通夜・葬儀などなどいろいろあったんでしょうから
そりゃそうだろうとは思いましたけれど
どうやらマツモトさんの疲れは
それだけが要因ではなかったようです
どういうわけか
重なる時って重なるものなんですね
「そんでさぁ、いろいろあってさぁ」
「まあ、そりゃーいろいろあるだろうね」
適当に返事をする私
「ホント、どいつもこいつもさぁ、イラつくんだよ」
「えっ？」
「あー………なんかイラつくことがあったんだ」
「そうだよもう〜」
誰にイラついてるのか聞いてほしいんでしょうが
敢えて聞かない私
「ふ〜ん………」
「まあ生きてりゃいろいろあるでしょうからねぇ………」
「上の子は上の子でさぁ…………ったく〜」
「下の子は下の子でさぁ………はぁ〜」
自分で言ってきた笑
えっ？
私の知らないこの空白の十日間の間に
お子様方のことでなんかあったんでしょうか？
事件？
事故？
それとも………
マツモトさんの前振りのせいで
聞くのが怖いような怖くないような………
何故だか妙にドキドキするというか………
こんな悩めるマツモトさん初めてかも………
恐らく真剣な話なんでしょう
わかんないけど………
もしや
わざわざ今日来てくれたのはお香典返しよりも何よりも
その話を聞いてほしいからかな？