智と和也は2人、撮影スタジオの前室でPV撮りの順番待ち待ちをしていた。
前室には20インチモニターが備え付けてあり、和也は そこに映っている撮影中の雅紀を指さし、ツッコミを入れては楽しそうに笑っている。そして時々 智の反応を窺うように、上目づかいで唇を尖らせるから、
このよく動く嘴の感触って どんなだろう?
と、智は思ったし、思った時にはもう 和也の嘴は丸く艶やかな唇に包まれていた。
あの画を描いてからも和也からのスキンシップは止むことはなく、自分が触れたいときに触れてくる。
それが嫌なら距離を取ればいいものを、気が付 くと智は和也の傍らにピタリと寄り添っていた。だから和也もまた変わらずに智に触れた。
智は智で、だんだん遠慮している自分が馬鹿らしくなったから 弄りたいときに和也を弄った。
指で触れるより和の唇は柔らかい気がする。。。
形状を見つめ、その感触を理解できるまで食んだ。 強く優しく隙間をなくすように触れたり離れたり。
和也は そんな智の生体観察のような愛撫を受け入れ、自らも好んで智の体に触れるから、この行為は暗黙の承諾として2人の間で成り立った。
もともと距離が近く、体のどこかは触れていた2人だから、和也からしてみれば唇の接触なんてのはその延長だろうし、胸の先端を指先で擦られることも単なるオフザケとしか思っていないのかもしれない。
智の長い指は、和也の胸の先をクルクルとなぞる。それが固く尖っていく様がいじらしくて可愛くて、いつまでも愛でていられた。
智は和也のことを好きだ。と思う。
でも好きの範囲ってのはとてつもなく大きくて、よく分からなくなる。
“すごく好き”のラインを越えてしまえば、食べ物だろうと人だろうと趣味であろうと その優劣とか境界とかが自分の中で曖昧になってしまう。
分からなくはなるのだけれど、
それでも ほかのメンバーの唇の感触が気になることがあっても、 自分の唇を絶対に重ねない。。。と思う
『二宮さん、そろそろスタンバイお願いします。』
ノックとともにスタッフが声をかけてきた。
和也は智の手を解いてちょっとだけ咎めるような視線を送った。
『じゃぁ、行ってくるね。』
『あ、ねぇ和。』
和也が立ち止まり振り向く。
智にとって和也は 間違いなく、今現在1番好きな人だった。それだけは分かっていた。
『結婚しよう!』
しばしきょとんと固まった後、和也はクスッと笑い、
『あなたの好きの最上級は“結婚” だもんね。 あなた、前に ご自分の心友にも結婚しようって仰ってましたよね?』
『う゛っ!』
困った智は首の後ろを摩り、一寸の間考える。
『ん…じゃぁさ』
和也の背中を押し スタジオの方へ送り出しながら耳元で囁いた。
『おれ、人生でやりたいことやり切ったら、最期は和と居たい!』
『ぷっ。なにそれ?…まぁ考えおくよ。』
和也は そっけない素振りでそう言うと、駆け出した。
『お疲れ!』
『おお、次 和ちゃん?頑張ってね♡』
撮影を終えた雅紀と すれ違いざまにハイタッチをする。
そして自分を待つスタジオの人ごみの中へ飛び込んでいった。
『和ちゃんめちゃ張り切ってるね? これでもか!ってくらいニッコニコしてたよ。なんかいいことあった?』
前室に入るなり雅紀が言った。
『天邪鬼なんだよ。』
『え?どゆこと?』
智はソファに寝転がってフフッと笑った。
一応のおしまい。
でも つづく。
嵐案件が 良いことも微妙なことも怒涛のように押し寄せて
挫けそう~~(ノД`)・゜・。
この話、描き切れるか!?自分!(´;ω;`)