シャンプー広告から見る「洗浄成分」発展の歴史 | かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき

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ホントは前回の除菌ウェットティッシュに派生して「薬用ハンドソープ」の話をしたかったんですが…、

(ハンドソープも買い込んであるのです。笑)

 

今日はあんまり時間がないのでちょっとした小話を。

 

 

先日Twitterで以下のようなシャンプー広告のツイートが話題になりました。

 

 

これは花王社の1932年から1983年にかけてのシャンプーの広告の変遷をまとめたもののようです。

 



ご覧のように、

 

花王が推奨するシャンプーの頻度は1932年には「月2回」だったものが、

 

1935年には「週1回」、1965年には「5日に1回」

 

そして1983年には「1日1回」

 

 

と、シャンプーの頻度がどんどん多くなっているということに気がつくと思います。

 

 

 

この広告の変遷を見て、Twitterユーザー間では

 

  • 「シャンプーメーカーがシャンプーを売りたいからどんどん頻度を多くしていった」
  • 「日本の過剰な衛生観念はシャンプーメーカーの陰謀!」
  • 「生活水準的にシャンプーは高級品で庶民はあまり頻繁にできなかった」
  • 「みんな臭かったから気にしてなかったのでは?」
  • 「将来的には1日に5回くらいシャンプーするようになるかも」
 
などなど色んな意見が出ていました。
 
 
 
 
ただ一番大勢を占めていたのは恐らく「シャンプーメーカーの陰謀」という意見だったのではないかと思います。
 
 
 
僕もそれは一理あるのかもな…と思わないことはありません。
 
 
実際、
 
世界中探しても「洗剤」で身体や髪を毎日のごとく頻繁に洗わなければならない動物など、
 
今や人間だけです。
 
 
というより、発展途上国では洗剤など使ったことがない原住民とかも普通にいますからね。
 
だからこの先進国の「毎日洗浄文化」というのは、
 
実は行き過ぎた衛生観念なのではないか…
 
 
というのはかずのすけも以前から「過衛生」という言葉を使って注意喚起していたことです。
 
 
 
 
だからそういう意見も完全否定するわけではないのですが…
 
 
僕はこの広告を見た時にちょっと違う視点を持ちました。
 
 
 
それは
 
この「シャンプー頻度の変遷」が、そのまま「洗浄成分の発展の歴史」と重なるのでは?
 
と感じたことです。
 
 
 
 
◎昔のシャンプーの主成分は「石けん」だった!
 
 
これはTwitterでもちょっと紹介した話なのですが、
 
僕の手元にある
 
【洗剤・洗浄百科事典(朝倉書店)】
 
image
 
によれば、
 
 
日本国内では浴用洗剤を含め、
 
1950年くらいまでは『固形石けん』と『粉末石けん』しか利用されていませんでした。
 
【図:洗剤・洗浄百科事典(新装版), p.19, 皆川基ら , (2003)より一部改変】
 
 

 

今のシャンプーの主成分である「合成洗剤」は1960年頃から台頭してきたもので、

 

つまり花王さんの広告でいう32年・35年のシャンプー(髪洗い)は間違いなく「石けん」が主成分であったと考えられます。

 

(当時のシャンプーは粉末だったそうです…)

 

 

また、パッケージを見る限りでは3枚目の商品も同じ商品のようですので、これも石けんが主成分であった可能性が高いと思います。

 


ただ、1965年には粉末合成洗剤の生産量が石けんを優に上回っているため、

 

もしかしたらこの当時から合成洗剤が用いられていた可能性は否定できません。

 

 

 

まぁ少なくとも30年代のシャンプーは「石けん」でできており、

 

毎日の洗髪が推奨できなかった理由は実はここにもあったのではないかと僕は思いました。

 

 

 

というのも、

 

「石けん」という洗剤は『弱アルカリ性』の洗剤です。

 

 

人の髪はアルカリ性に傾くとキューティクルが乱れて猛烈に軋みが発生する性質があります。

 

さらに髪のような動物性繊維はそれそのものがアルカリに弱い特性があるため、

 

頻繁に髪を石けんで洗うことは髪のダメージを誘発する懸念があるのです。

 

 

 

しかも当時の石けんが現在の石けんのように高い純度が保たれていたとは思えず、

 

現在の石けんに比べて相当アルカリ度が強かった可能性が非常に高いのです。

 

 

 

 

元々石けんは動物性繊維を洗うことに向かないということが

 

現在の合成洗剤が作られた一つのきっかけとも言われていますので…

 

 

当時のシャンプーメーカーがこの点を危惧していなかったとは僕には思えません。

 

 

 

 

おそらくは、

 

当時のシャンプーの成分では髪が毎日の洗浄に耐えられるものではなかったため、

 

1週間に1回程度の頻度の洗浄を推奨していたのではないでしょうか。

 

 

 

 

◎1940年頃には歴史上初めて実用化された合成洗剤 『ラウリル硫酸Na』 が登場!

 

 


【図:洗剤・洗浄百科事典(新装版), p.19, 皆川基ら , (2003)より一部改変】

 



さらに史実でいえば、

 

最も早く「合成洗剤」が用いられた商品が発売されたのは1937年のことで、

 

これが今も稀にシャンプーなどにも用いられている『ラウリル硫酸Na』です。

 

 

↑の図では『AS』と書いているものがこれです。

 

ラウリル硫酸Naは難しく言うと『アルキルサルフェート』というタイプになるのでASと略されています。

 

 

 

このラウリル硫酸Na系の成分は現在でも外資系メーカーを中心に

 

今でもシャンプーの主成分に用いられています。

 

 

合成洗剤なので石けんのようなアルカリ性がなく、

 

中性のため髪を洗っても過剰なごわつきは生じません。

 

 

 

 

しかし、ご存じの方はご存じの通り、

 

 

ラウリル硫酸Naはとても皮膚刺激の強い成分でして…。。

 

 

日本メーカーは今やこの成分をシャンプー等の主成分に用いることはありません。

 

 

 

シャンプーの背面を確認して成分の上位に「ラウリル硫酸Na」「ラウリル硫酸アンモニウム」などの成分名があるものは、

 

ほとんどが外資系ブランドのはずです。

 

 

 

元々敏感肌が多い日本の風土には合わない洗剤だったと言えるでしょう。

 

 

 

タイミング的には1965年のシャンプーにはもしかしたらこの成分が用いられていた可能性もあります。

 

 

ただ皮膚刺激や使用性などの面を考えても、

 

これも十分に毎日の洗髪に耐えられるような内容でなかったのは明らかです。

 

 

実際「5日に1回」という週一と大して変わらないペースですので…。

 

 

成分的にそれまでのものと比べて明らかな優位性があったとは考えにくいです。

 

 

 

 

◎1970ごろより現在の主流 『ラウレス硫酸Na』 が実用化される

 

 

そして、1970年を迎えると、

 

ついに現在のシャンプーの主成分として最も利用頻度の高い

 

『ラウレス硫酸Na』

 

が実用化されます。

 

 

先ほどの図で言えば『AES』がそれに当たります。

 

「ポリオキシエチレン・ルキルーテルルフェート」

 

の頭文字をとっている…はず。(笑)

 

 

 

 

このラウレス硫酸Naはさきほどのラウリル硫酸Naを大幅に改良した洗浄成分で、

 

液体シャンプーの主成分としてとても使い安い成分になっています。

 

 

皮膚刺激などもASと比べれば相当良くなりまして、

 

今の国内シャンプーの主成分のうちかなりのシェアを占めています。

 

 

 

 

恐らく1983年の広告の「エッセンシャル」では、

 

ラウレス硫酸Naが主成分に用いられていた可能性が非常に高く、

 

 

歴史的にみれば、

 

この時にようやく大半の消費者が毎日洗髪しても問題ないレベルのシャンプーが出来上がった…

 

 

という風にも見ることもできるわけですね。

 

 

 

 

つまり、

 

これらの広告の変遷は、

 

そのまま『シャンプーの洗浄成分がどのように発展してきたか』という歴史とも紐付いている

 

と僕は思うのです。

 

 

 

だから単純なシャンプーメーカーの陰謀では話は丸く収まらないのではないでしょうか。

 

 

 

 

◎最近では「1日2回」洗っても大丈夫な成分にもなっている!

 

 

 

そして2000年に入ってからは、

 

 

それまでよりもさらに低刺激化された洗浄成分がどんどん開発され実用化されてきました。

 

 

例えば

 

  • コカミドプロピルベタイン
  • ラウラミドプロピルベタイン
 
などのような『両性イオン界面活性剤』等と呼ばれる極低刺激の洗浄成分も今では高い頻度で利用されています。
 
 
これはベビーシャンプーの主成分だったり、
 
サロン専売品シャンプーのダメージヘア用の非常にマイルドなシャンプーの主成分だったりに使われています。
 
 
 
最近だと
 
  • ココイルグルタミン酸Na
  • ラウロイルメチルアラニンNa
 
など『アミノ酸系界面活性剤』というタイプの洗浄成分も多く使われるようになりました。
 
 
これはラウレル硫酸Naなどよりもさらに低刺激化された敏感肌用の洗浄剤。
 
洗浄力が低めのためさっぱり使用感に慣れている人にはあまり好まれませんが、
 
敏感肌やアトピー体質でも1日に数回洗おうと負担の少ない洗浄成分です。
 
 
 
あとは
 
  • ラウレス-5酢酸Na
  • ラウレス-4カルボン酸Na
 
などの『エーテルカルボン酸系界面活性剤』が新しく使われるようになってきています。
 
アミノ酸系より洗浄力は高めで低刺激性もかなり優秀な洗浄成分で、
 
構造と性質の類似性から「酸性石けん」と呼ばれています。
 
 
ちょっと石けんと使用感や構造が似ているのに、弱酸性でも洗える成分。
 
 
 
 
上のツイートでは
 
「このままいくと1日に何回も洗うようになる」
 
という風に言う人もいましたが、
 
 
成分的に何度洗っても刺激になりにくいように改良されてきているため、
 
もしそういう習慣になっても問題無いものも多数あります。
 
(ただし低刺激のシャンプーはそれなりに高価ですが…)
 
 
 
◎ラウレス硫酸系とかで1日1回洗うのは洗い過ぎになる人もいる?
 
 
実際、
 
ラウレス硫酸Naとかの洗剤でもそれなりに洗浄力も高いし、
 
人によっては毎日の洗浄に耐えられない人はいるんですよね。
 
 
それで湯シャンなど、数日置きにシャンプーをする人も今実際にいます。
 
 
 
これは正しい対処だと思います。
 
 
僕もラウレス硫酸系だとかなり乾燥してしまうクチなので、
 
今ではアミノ酸系などを基本に使用しています。
 
 
 
僕自身は「メーカーの陰謀」という話には首をかしげたい部分も多いのですが、
 
 
今後もしメーカーがより高い頻度のシャンプーを推奨してきたとしても
 
我々がそれに追従する必要は全くありません。
 
 
 
 
シャンプーの頻度などはその人の生活のあり方にとても関係していると思っていまして、
 
毎日整髪料を付ける人は当然毎日シャンプーしなければならないし、
 
逆に普段から整髪量を使わない人は別に毎日する必要はないでしょうし…
 
 
自分の生活に合わせて上手に頻度も商品も選んでいければそれが一番良いのではないかと思います。
 
洗浄剤の洗浄力をある程度把握しておけば、
 
毎日何回だって安心して洗える商品を選ぶことも可能です。
 
 
 
僕はある程度不要なものは洗えて、
 
オシャレもできる方が絶対美容としては良いと思っていますので
 
湯シャンやほとんどシャンプーしない習慣が必ずしも良いこととは考えていませんが…
 
 
何にせよ色々なことを考えさせられる資料でしたね。
 
 
 
 
 
 
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