歌詞が“意味”を超える時 ー心に響く歌の秘密ー④
⑺ 歌の中にはすでに“全て”がある
「身を削って作る」という言葉がありますが、本当に、作るってそういうことだなあと思います。
いつだって、「これは自分の作品だ」と、胸を張って言えるものだけを作る。
たとえサラッと作ったように見えても、です。
『ピカソの30秒』という逸話をご存知ですか?
ファンがピカソに絵を頼むと、彼は30秒で描き、「100万ドル」と言いました。
「30秒で描いたのに?」とファンが驚くと、ピカソはこう答えました。
「30秒じゃない、30年と30秒だ。」
つまり、物理的にかかった時間と、作品の価値は関係ありません。
5分で作られた歌だって、作者のそれまでの経験、考え方、培ったもの全てから作られています。
生きている中で積み上げてきたもの、湧き上がってきたテーマなどが、その時の時代の空気やその瞬間感じていることなどと反応を起こして、形になるのだと思います。
だから、どんな作品だって、作者の人生そのもの。
歌の中にはすでに“全て”があるのです。
メッセージも感情も響きも、全部。
シンガーにとって大事なのは、まずはまっすぐ作品(歌)に向き合うこと。
そして、「すでにそこにあるもの」を、自分の声というフィルターを通して伝えるんだという、謙虚さのようなものを持つことなんじゃないかなと思います。
そういうベースの姿勢があった上で、シンガーそれぞれの解釈やアレンジなどが乗ると、心に響く歌声になる。
一番最初に書いたポーランドの合唱団は、究極的に謙虚に、「時代」という素晴らしい作品を伝えていました。
エゴのかけらもなく、本当に心の奥までスーッと入ってきました。
たとえ一見クセが強いシンガーでも、心に響く歌を歌う人は、みんなその基本姿勢を持っているように感じます。
ちなみに、自分で作った歌でもそうなんです!
「すでに歌の中にあるもの」を真摯に伝えるという基本は、自分の作品でも他の人の作った歌でも、同じ。
そして、
毎回、まるでその歌を初めて歌うかのように、丁寧に歌うこと。
そうすれば、何年歌い続けても色褪せることなく、その歌とその時々の自分との間でしか生み出せない、新鮮な「響き」が生まれ続けるはずです。
⑻ 歌のために普段からできること
というわけで、『どうやったら心に響く歌が歌えるのか』を簡単にまとめると、
☆丁寧に発音すること
☆まずはまっすぐ歌ってみること
この2つです。
普段の会話でも意識して発音をクリアに。
苦手な発音を見つけたら、歌詞を読む練習や、滑舌トレーニングもオススメです。
歌う時には、“ラッパの口”🎺を想像すると、口の開き具合も自然に良くなると思いますよ。
ぜひぜひお試しください。
そして、もう一つ、とても大事なこと。
それは、歌を聴く時にも、
自分の心にどう響いているか?
何が届いているか?
を意識して、その響きを感じることです。
歌詞の意味やその歌に関する情報など、言葉で言い表せることではなく、それを超えて、心の奥深くに届いてくるもの。
胸を震えさせてくれるもの。
これは当たり前といえば当たり前のことかもしれないですね。
でも、情報過多で忙しく、頭ばかり使いがちな現代ですから、少し意識して深く感じるようにすると良いと思います。
どんなふうに音楽を聴いているかは、歌う時にも大きく影響するからです。
音楽が、歌が、あなたにとってより素晴らしいものになってゆきますように。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ーーーおしまいーーー
おわりに、、、
これを書いている途中に、ブライアン・ウィルソンの訃報が飛び込んできました。
2000年に、ポール・マッカートニーが、こんなことを語っています。
「ブライアン・ウィルソンの音楽には、演奏すると涙が出るようなものがある。
なぜそうなるのか、はっきりとはわからない。
それは、必ずしも言葉やメロディのせいというわけではなかった。
何か深いものが歌の中にあったんだ。」
そして、ブライアンのそんな才能に敬意と感謝を表しています。
ポールが涙したその“深いもの”こそ、まさに、このシリーズ『歌詞が“意味”を超える時』で私が伝えたかった音楽の素晴らしさです。
私もブライアン・ウィルソンの音楽に涙し、感銘を受けてきたファンの一人です。
ご冥福を心からお祈り申し上げます。
✳︎✳︎✳︎大塚利恵の作詞レッスン✳︎✳︎✳︎
言葉の響きで、心を動かす歌を。
今回のブログは「歌う」ことにフォーカスを当てて書きましたが、実は、歌詞を書くコツにも通じる部分がめちゃめちゃあります!
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