理不尽に終わるところがいいホラー。
生きづらさを抱えうまくいかない人生に絶望しながら怨み憎しみに身を焦がす……不幸な負け犬たちが集う場所がある。
そこにいるのは闇に白く光り輝く美しい救世主。
つらく苦しい気持ちを吐き出せば、やさしく受け止めてくれる。
イヤなことはすべて消え去る。
憎んでいた相手も消え失せる。
デスノートのように。
魔法のように。
あの人は助かるのね!と思わせておいてあっさり……
好きだったからかわいそうだと思った。
でもあの唐突さがこの物語にはマイナスになってない。
この世の理から離れた悪いもの━━に、人間の道理は通じない。
すべてが嘘━━というより、人間の尺度では測れない。嘘と真実という区別すらそれにはない。どうにもならない。
対策は……触らぬ神に祟りなし。
近づかない、見ない、気づかない、相手に認識されないように、気づかれないように、情報を与えないように、心も体も距離をとって、できれば忘れて、なかったように。
興味を持って近づくと厄災が降りかかる。
愛情でも好奇心でもどうにもならない。魅力に囚われて救われたような気になって、いつのまにか掬われて巣食われている。
人を呪わば穴二つ。
デスノートを使った人間が行ける天国はない。
かといって、これをしたらセーフということもない。
まさに災厄。最悪。
ミライちゃん:メンヘラ女子。根は優しく聡い。とらすの家から脱出しようと試みる。
坂本美羽:小説家を諦めきれない底辺ライター。とらすの家を調べる。痴漢など性被害に遭いがち。自己評価が低く自分を無能バカブスだと思っているが、おそらくバカではないしスタイルが良い美人だと思われる。
白石瞳:坂本美羽を捜査する警察官。明るく朗らかで可愛らしい努力家。虐待されて育ったが前向きに生きている。
川島希彦:なぜか中学入学以前の記憶がないけれどあまり気にしていない。いじめられっ子のともちんと親友だったが、しだいに疎遠になり、井坂君と親交(いろんな意味で)を深めていく。
物部清江:あやしい占い師?らしき女性。鼻血を出す。
カクヨムの続編(スピンオフ)を読んだ。
物部清江の家族が登場。『異端の祝祭』にも出てきた彼もいる。世界観が繋がっているらしい。
菊地秀行の魔界都市シリーズにいつもせんべい店店主や白い医師が見え隠れしているように、芦花公園の作品には物部ファミリーがいるのかもしれない。