淋しい大人たち 一条ゆかり | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

[ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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一条ゆかり特集について記事を書こうと思っていたら、いつのまにか「淋しい大人たち」のレビューになってしまった。


主人公の祐美は恋に悩む女子高生。
普通の家庭のふつうの女の子です。
普通すぎる家庭に退屈さを感じてしまうほど「幸福な」女の子。

ある時、自分の父親がどうやら不倫しているようだと気がつきます。

不快感や不安以上に好奇心にかられ、不倫相手らしき女を探ろうとします。

相手の女は、ハウスマヌカン(オシャレな服やの店員を当時はそう呼んでいたのです)の真理子。

この真理子さんと祐美はうっかり仲良くなってしまいます。

話してみると楽しいしきれいだし、色んなこと(おしゃれカンケイ)を教えてくれるしで、こんなお姉さんがいたら良かったのに、なんて思ってしまう。

オバさんでパッとしない母親より、そりゃ若くて綺麗で楽しい真理子さんの方がいいよなー、なんておもってしまう。
こんな「いいオンナ」の真理子さんと「いい仲」になれるなんて、冴えないオヤジだと思ってたけど意外にヤルじゃん、なんて父親を軽蔑するどころかちょっぴり見直してしまう。

無邪気で残酷な、率直な若い娘の感性です。

祐美の父親と真理子の恋愛も描かれるのですが、これがまあ、清らか。

真理子は優しくて穏やかな「北山さん」(祐美の父親)を尊敬のように慕っていて、北山はそんな真理子に「初恋」のように新鮮なときめきを感じています。

そこに肉欲はなく、微笑みを交わして胸の鼓動を感じ合うような、そんな恋愛なのです。

しかしね、既婚者のステキな恋愛はいつもそうですが、恋愛の美しい表舞台に立てるのは、裏方が日々を調えているからなんですよね。だけどそんなことは浮気している当事者はまったく気づかない。見えるのはダンディーで余裕のある大人の男。その余裕はどこから来ているのか、そんなのはわからない。考えようともしない。

純粋な、プラトニックな、初恋のような、恋!

女子高生の祐美は、そんなところに清廉さを感じて、その辺の「汚い不倫」とは違うって思っちゃう。

真理子さんと父親に肩入れしすぎて、とうとう母親に
「わたしがパパでも浮気するから」と言ってしまいます。



「別に…本当のことなんだから ママのいうことなんか 祐実やパパにはうるさいだけなのよ どうせそんなもんよね 主婦なんか損ばっかり 一生懸命 家を磨いても 食事を作っても 洗濯しても 誰も褒めてなんか くれないのよ みんな当たり前だと思っているのよ ああいやだ こびりついて 落ちやしない」
「ママ パパだって ママはよくやってくれているって」
「そのあげくが 浮気なんてたまらないわよ!!どうせ ママは中年のおばさんよ 若さも美しさも何の取柄もないただの主婦よ 今さら若い娘(こ)と比べられても 勝てるはずないじゃない」
「ママ…そんな…」
「あんたにこんなこと いっても解るわけないわよね まだ17で 肌だってツヤツヤで 夢だって 何だって これからなんだから ママだって昔は若かったわ… 夢だっていっぱいあったわよ だけど… こんな おばさん 誰だって相手になんかしやしないわよ」
「やめてよママ わかったから あたしが悪かったの」
「解るもんですか!!夫に相手にされなくなった妻がどんなにみじめで情けないか!!あんただってママの年になれば解るわよ!!」


母親の激昂に、やっと「ママもひとりの人間で、女で、傷ついている」ことに直面しておののくのです。

ママって女捨ててる、と思いながら、女だと認めていなかった。
母親が母親業やるのは、空気がそのへんにあるくらい当然で、意識もしてなかったわけです。
 
「あたし いいすぎたわ」って!
「わかったから あたしが悪かったの」って!
しょうがないけど、祐美はなーんにもわかっちゃいない。
 


北山にしても、自分の妻に甘えきっているんですよね。

自分の「女」じゃなく、カーチャンに対するように甘えている。
妻を母親扱いしているから、平気でカーチャンに洗濯してもらった服を着て「初恋」相手とおデートできるんです。


浮気相手の真理子に、
「なにが初恋よ ばかにするのもほどがあるわ」
あんたに私の気持ちがわかる?自分の夫が他の女と初恋なんて!!私は何なのよ!?ただの家政婦?それとも慰安婦なの?」
「なにもあんなおじさん相手にしなくってもいいじゃない」
「あの人はわたしぐらいがちょうどいいんだから」

と叫びます。

それは悲痛な叫びです。
 
刺激やときめきはなくても愛はあると信じていたのを裏切られたこと、女性としての尊厳を傷つけられたこと、妻や母親としても侮られていたこと、それまでの積み重ねてきた年月の価値、取り戻せない若さ、そういう諸々がすべて含まれている重い言葉です。


祐美も北山も真理子も、この血を吐くような叫びを聞くまで本当に妻という存在に無関心で、その鈍感さにはゾッとします。


 
一応、救いはあります。
 
この件で、もうおじさんとおばさんなんだもん、と油断していたママが化粧やおしゃれをちゃんとするようになって、家族それぞれが気を遣いあうようになったこと。
 
当たり前が当たり前ではないという緊張感をそれぞれが持つようになれたのは良い変化といえましょう。
 
 
 






このお話を初めて読んだ時は独身で祐美に近い年齢だったけど、当時からママに感情移入していました。

そして今はさらに突き刺さる。

10年後、娘が祐美の年齢になったらもっと刺さるのだと思います。



 
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集英社
2013-07-29




 
女ともだち (1) (集英社文庫―コミック版)
一条 ゆかり
集英社
1999-11
 
 
 
 


短編なので読みたい人は有閑倶楽部12巻か、「女ともだち」文庫版の1巻2巻のどっちかに収録されてます。
 








 

 

 

 

 

 

 


 




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