タダイマトビラ 村田沙耶香 感想とわたし的解説 母親という幻想から別の幻想へ | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

[ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

小説や漫画のあらすじとネタバレ感想が中心。恋愛(純愛・ラブコメ・学園モノ・セックス)、SF、コメディー、ファンタジー、冒険、裏社会、芸能、政治、スポーツ、料理、ホラー、格闘技、歴史、ファッション・・・名作・傑作・話題作満載!人気ブログを目指します。


テーマ:

タダイマトビラ
不思議の国のアリスが夢から覚めて、ハートの女王が支配する不思議の国から帰還する。
その時に開いた扉が、タダイマトビラ。

主人公はアリスであり、不思議の国というガラスの器でもある。



母親と娘
恵奈はけして認めたくないだろうけれど、母娘はとてもよく似ている。

愛されなかった子ども時代。実母への嫌悪と愛情と憧れと絶望。
取り繕う空虚な明るさと嘘。愚かなまでの正直さ。
家族や母親というものへの過剰な期待。

母親の義務と仕事として家事と子育てをこなしていた芳子(恵奈の母)は、なぜ口先だけでも子どもを愛しているフリをしなかったのか。

それは芳子もまた母という存在に強い憧れと期待を抱いていたからだと思う。
「母」「母性愛」「子どもへの愛」に嘘をつきたくなかった。
日常で楽しくもないのに笑うことはできても、食べたくもない甘いものを口に押し込むことはできても、親子の愛情で嘘はつけなかった。

わかっていないのにわかったフリをすることの方が簡単なのに、生々しいほど赤裸々に正直に、真実の愛に至る道を探していた。

やり方はわからなかったけれど、愛せるなら、子どもを愛したかったのだと思う。
それよりももっと、子どもとして愛されたかったのだと思う。




ラストの解釈
文章の通りに読めば人類の終末になる、SF展開。
しかしわたしは恵奈の内的な物語の変容と解釈したい。

これまで恵奈は家族愛が存在する(しかし自らの家庭には存在しない)世界に生きていた。
家族の情愛のない現在の家庭を「仮の家」と断じ恋愛によって新しく築きあげる「本物の家」でまっとうな家族愛を作り上げることを目標に生きていた。そのために積極的に恋愛に勤しんだ。
しかし弟に「失敗する」と予言されていた通り、うまくいかない。表面的には完璧にうまくいっていたのに、本質的に嘘だったことに気づいてしまった。ホントウの家族、ホントウの愛を求めていたはずなのに、ホントウを心の底では信じていなかった。

浩平の姿にカゾクヨナニーをみたのは自らの投影である。
ナニオを現実の人間にうつしてホントウの家族を作ろうとしていたのは恵奈なのだから。

それを認められない恵奈は、世界の解釈を変える。

家族というシステムは幻想なのだ。
家族、恋愛、対人関係ーそれらはニンゲンという生命の器がうみだした幻想なのだ。
ニンゲンも蟻や微生物と同じただの生命体であり、個としての人生やそれらがつくる社会は生命を積み替えて運ぶための装置なのだ。

その解釈は、遺伝子の乗り物という生命科学の物語。

恵奈は不幸な家庭に育ったシンデレラが王子様に出会って幸せに暮らす物語に馴染めず、科学という別の物語に乗り換えたのだと思う。






ダブルミーニング?深読み?
恵奈:胞衣?…主人公の名前はえな。胞衣(えな)は胎盤など胎児をつつむ袋。
カゾクヨナニー:家族よ何?……家族愛を自ら慰めるというのならカゾクオナニーでいいはずなのに、ヨナニーとした。よ、に意味があるのでは?
ヨナニー:世、何?……この世とは何なのか?という問いかけ?  



母親という存在への過剰な幻想
偏見かもしれないけれど、天才的な女性作家で子どもを産んでいない人には共通するなにかがあるような気がしている。
萩尾望都の「イグアナの娘」「残酷な神が支配する」や新井素子の多くの作品などから感じる匂いのようなもの。
それは極限までひろげた想像の翼の羽ばたきから甘く香る。

子どもを産むか産まないか、望むか望まないか、望んでも得られないか。
産む性としての女であれば、妊娠や出産や子どもというものに無意識でいることは難しい。

そして何でもそうであるように、想像は既知の物事よりも未知なるものに対しての方が自由だ。

何十年も考えて想像して発酵した産み育てる「母親」という存在への過剰な幻想。その匂い。
それはわたしにも懐かしい匂い。
妊娠出産する前は、どの女もが抱く恐怖の匂いでもある。

未経験だった頃に抱いていたセックスへの幻想に少し似ているかもしれない。

快感なのか、痛みなのか、衝撃なのか、奇跡なのか。
実際にしてみるまでは、想像するしかない。
それは誰にとっても個人的な体験で、比較しようもない。

激しい感動の体験かもしれないし、あっけない退屈な体験かもしれない。
どうであれ、そうなってみれば、未知であった時には空想でしかなかったことが、こういうことか、となる。

期待はずれかもしれないし、想像以上かもしれない。

なってしまえば未知だった頃には戻れない。

母親になるというのも、そういう体験のひとつだ。







親子についての記事

母がしんどい 田房永子 毒親か愛情か 

子どもは親を嫌っていい くますけと一緒に 新井素子 

のび太のママのように  

あたし、おかあさんだから に思うこと 

出産と産後の話 

 

 

 

 

 

 

 


村田沙耶香 感想記事  
コンビニ人間 芥川賞受賞作 
殺人出産
消滅世界 村田沙耶香  
タダイマトビラ 母親という幻想から別の幻想へ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 




ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

読者登録してね





blogram投票ボタン


にほんブログ村 本ブログへ  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

ridiaさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

    ブログをはじめる

    たくさんの芸能人・有名人が
    書いているAmebaブログを
    無料で簡単にはじめることができます。

    公式トップブロガーへ応募

    多くの方にご紹介したいブログを
    執筆する方を「公式トップブロガー」
    として認定しております。

    芸能人・有名人ブログを開設

    Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
    ご希望される著名人の方/事務所様を
    随時募集しております。