ポリティコン上下 桐野夏生 | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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桐野夏生の作品はいつもリアルで、この作品も、フィクションだけどノンフィクションだとしても不思議はない…そう感じさせる。
北朝鮮からの脱北者や難民が流れ流れて東北の特殊なコミューンにたどり着くというのもありそうな話。
ポリティコン 上 (文春文庫)ポリティコン 下 (文春文庫)
いつもの圧倒的な筆力でラストまで読まされたけれど、魅力的な物語か?と問われたらビミョーな出来。

好感が持てる登場人物がいっさい現れないのも苦痛だし、陰鬱な雰囲気のなか、ピカレスク小説のような圧倒的な悪が現れないのもスッキリしない。
どうせならもっと徹底的なディストピアになってしまえば面白かったんじゃないかな?

主人公のトイチはダサくて貧乏で女好きで自己中で、どうにも好きになれないどうしようもない男なんだけど、根っからの悪じゃない。
根性悪の高齢者ばっかりの村で最年少の若者として頑張って働いているし、不器用でキモいやり方だけど、トイチなりに女に好かれようと色々アプローチする。努力はしてるんだよ、トイチは。

それを雑に利用しようとする我儘なジジババ、村の女ども、マヤ。
彼らがトイチに蹂躙されても、あんまり同情できない。
甘い汁だけ吸おうとして逆襲されてるだけにしか見えない。

とくにマヤは後半の主人公みたいな位置づけで、転落する不幸な美少女っていうと哀れなんだけど、ちっとも可哀想じゃない。
美しい容貌のせいでいろんな男に目をつけられるけど、それを利用しようとする小狡さが空回りして転落しているだけ。
言い訳が多いし、自分で言うほどには努力しないし、低きに流れがち。
そりゃ、そうなる。

男の趣味も悪いし、愚か。
でも、現実にもこういう女っているんだろうなと思う。

登場人物はみんな好きになれないけど、みんな現実にいそう。



物語として面白くないのは、リアルすぎるからだと思う。

マヤの母親がどうなったのか真相が明確にならないのも。
トイチとマヤの結末も。

多分、現実にならこういう玉虫色の決着になる。

でもね…小説だからさ……大どんでん返しがあったり爽快なラストになったりしてもいいんじゃない…?


ポリティコン 上 (文春文庫)
桐野 夏生
文藝春秋
2014-02-07