グリーフケア必要論の時期尚早 | ペーパー社会福祉士のうたかた日記

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社会福祉士資格をとるまでと、とったあと+α。浮世のつれづれ、吹く風まかせの日々。

新型ウイルスでの死別について、
「今こそグリーフケアが必要」と
記事が掲載されたのは先月下旬。

悲しみは分かち合える
AERA 2020年6月8日号より抜粋

ネットの抜粋でも荒っぽいけど
紙ベースの元記事でも同じこと。
間違ったことを書いてはいないが、
全面的に賛同することは難しい。

これは編集上の都合でもあって、
割り当てたページが少なすぎる。

手も握れない、お顔も見れない、
今まで経験したことのない死別、
ご遺族、そのご葬儀、ときて、
グリーフケアの第一人者の見解と、
取材した全部を詰め込んだ結果、
収拾がつかなくなったのだろう。

いや、
記者さんご本人に聞いてないから
わしの推測でしかないんだけど、
こんだけとっ散らかった内容で、

「悲しみは分かち合える」からの、
「今こそ求められている」という
結論って乱暴すぎやしないかね。

グリーフケアに関わる身として、
現在、真っ先に言ってほしいのは、
中途らへんにあるココの部分。
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新型コロナで大切な人を亡くした遺族がつながる方法はまだありません。これでは吐き出すことができないまま悲しみや喪失感はより深くなり、和らぐには時間がかかります。
(宮林幸江教授)
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だが、まだ遺族からの相談は1件も寄せられていない。相談窓口への一歩すら、遠い様子が見てとれる。
(医療自己遺族や医師らでつくる団体『Heals』)
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わしが所属している団体も同じ。
さぞ多かろうと思われているが、
なんのリクエストも音沙汰もない。

が、

この無反応、無音と静寂について、
"所属する全員が遺族"という
わしらみたいなケア集団の中では
うん、そうなるよねとわかるけど、

マスコミとその周辺はどうしてか、
そのへんが無神経無理解なんよね。

うちにも取材を申し込んできて、
「相談、来てないっすかむかっ」と
キレてきた会社があったので、

こっちも事務局が、
「まだそんな段階じゃないむかっ」と
キレ返してやったって話がある。

要するに、マスコミ連中って、
死別悲嘆を軽く考え過ぎてんだよ。
まだ回復を語るには早すぎるの。

負った傷が痛いって訴える相手に
元気よく、明るく、前向きに!
リハビリを勧めてるようなもので、
そんなもの支援でもなんでもない。

そんなねえ、

分かち合いが効果的!つっても
そこに至るには「間」があるの。
死別した!→ホラ回復だ!とか、
一足飛びにはいかないんだって。

死別とは、
自分の一部の永久的喪失をいう。

故人がいてこそ成り立っていた、
完全であった自分自身、人生、
思い出、未来とかいったものが、
理不尽に不完全になってしまう。

叫んでも、泣いても、呼んでも、
怒っても、恨んでも、悔やんでも、
完全な日々は二度と戻らない。
この不完全は修正不可能なのだ。

と、

ケアにはいろんな流派があって、
一概にこうだとはいえないが、
少なくともわしがめざす回復は、

やんわりと悲嘆を薄れさせて、
なんとなく気持ちが軽くなる、
正体不明のカタルシスではない。

「二度と完全に戻れない自分と
どうやって生きていこうか」との
人生に対しての極限的な考察、

そこから、
自らの選択と決定による再構築、
時にすべてを捨てた新たな構築、
「この自分で生きていく」という
清冽な覚悟にいたる過程である。

(参加されるご遺族には、
こんなことは言いませんけども)

この過程を共に泣き、語り合い、
歩いていく傍らを歩いていくのが
わしのやってるグリーフケアだ。

だいたいねえ、
死別の悲嘆っつうものは、
慰めや励ましで倍増はあっても、
消えてなくなるもんではないよ。
一生、悲しいもんは悲しいの。

喪失は自分の中にセットされる。
なくなるんではなく、変容する。

そういうことも知らないんなら、
遺族にはケアが必要でしょ!
分かち合いの場が必要でしょ!と
決め打ちするのはやめてほしい。

遺族が「自分にケアが必要だ」と
気づくまでには時間がかかる。

なんつうか、この記事から漂う、
"悲嘆は暗いもので不幸なもの"、
一刻も早く脱出すべきといった
偏った悲嘆観こそ困ったもんだ。

悲嘆は愛情の重さに比例する。

「そう悲しむな」という励ましや
「悲しみを忘れて」という助言は
「その愛情を捨てろ」と同じこと。
そんなことできっこないだろよ。

わしなんか、
早く元気になってね!と言われ、
幾度となくカチンときましたよ。

むかっ
どこに元気になる必要あります?
悲しんでちゃいけませんかね?
なんかアンタが困るとでも?など
心の中で毒づいてた遺族ですよw

遺族の心は複雑に揺れ動いている。
安易に触れると逆効果になると
あわせて書いといてほしいもんだ。

次にもし特集を組むときには、
取材対象を1組か2組かにしぼって、
もう少し丁寧に書いてもらいたい。

あ、あと、
【大切な人を失った悲しみを
癒やすためのワークシート】って、
こんだけ見せても意味不明だよ。



これやるには前後にモノスゴイ、
繊細なレクチャーが必要なの!
やる側に理解と技術が不可欠で、
いきなりやらせてもだめだよ。
知らない方は手を出さないが無難。

身近でできるグリーフケアは、
周囲がせっかちにならないこと、
立ち直りや受け入れなどを
励ましの名のもとに強制しない。

ご遺族に何か言われたら
「そんなことないよ」ではなく、
「そうだよね」「つらいよね」
「残念だね」と共感すること。
こんだけで十分ケアになります。

この禍がいつか過ぎ去って、
自ら気づいてこられる方がいて、
わしは共感の限界に苦悶する。

でも、
わしはレジリエンスを信じる。
信じてケアしていこうと思う。


今日も明日も、その次も、
できる範囲で、できることを。


ricorico1214