国家試験対策_民法改正の概要 | ペーパー社会福祉士のうたかた日記

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社会福祉士資格をとるまでと、とったあと+α。浮世のつれづれ、吹く風まかせの日々。

民法といえば【権利擁護】ですが、
毎年、見たことも聞いたこともない、
アカン知らんのが出るのも風物詩。

たとえばこんなのね。
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第29回国家試験【権利擁護】
問題79 次のうち、日常生活自立支援事業における日常的金銭管理の根拠を民法上の典型契約に求める場合、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 寄託契約
2 委任契約
3 請負契約
4 雇用契約
5 消費貸借契約
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日本語としておかしいのを省いても、
1と2と3の違いを知っていて、
ワカル、できるって受験生なんか
ほとんどいやしねーよと思いますよ。

これ正解は2だそうですけども、
こんなところで勝負しなくていいよ、
できないものはできないでいいよ。

モチは餅屋と言いますんでねえ。
わしらは民法の専門家になりたくて
試験を受けるんじゃないわけです。

わしらができなきゃいけないのは、
困りごとになる前に防止すること、
困りごとの原因を除去すること。

それでも困り事が起きてしまったら、
あ、コレ民法がカラむあかんやつや!
早よ司法書士さんに声かけな!と、
パッと動き出せることなんであって、

>ん~とね~
>日常生活自立支援事業というのは、
>民法上は委任契約なんですよね~
>寄託は物を預けることなんですよ~


だとか、得意げに話したところで、
は?だからなんなん?で終りっしょw

で、

民法が制定されたのは、
約120年も前の明治29年(1896年)。

そっからほとんど改正なしで、
判例とか解釈で補ってきたけども、
さすがにもうだめってことで、
2015(平成27)年から着手された。

成立は2017(平成29)年5月26日。
公布が6月2日で、施行は3年以内。
次回の試験範囲にはギリ入り得る。

TVや雑誌なんかで特集してたのは、
賃貸借の敷金ルールの明文化とか、
約款の規定がきびしくなったこと、
無銭飲食などの時効が統一されたり、

いわゆる「生活に密着」って点で
まとめられていましたけども、
わしらが知らなきゃいけないことは
何よりも、新設されたこれイッコ。
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第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
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民法にしてはめずらしくというか、
一読して意味が分かる新設の条文。

「買いたい!」「売ります!」等、
法律行為の意思表示をしたとき、
当人に意思能力がなかった場合、
その契約は無効になるというもの。

え、今さら?っていう感じですけど、
民法には今まで明記されてなかった。

明治時代、
法律行為をする者=判断力がある者
という大前提があったので、
そうじゃない場合については、
判例で示されていただけなんですね。

「意思能力」とは何かっていうと、
成年後見制度のとこで出てきました、
「事理を弁識する能力」とされる。

で、この明文化に関しては、
詐欺被害、高額販売、押し買いから、
認知症者や精神・知的障害者を守る、
という意味合いがあるというのは
言わなくてもわかるところだけども、
なかなかどうして一筋縄ではいかず。

というのは、
法律で決めたからといっても、
「当事者が意思表示をしたとき、
意思能力を有しなかった」ことを、
どうやって証明するのかっていう…

各位ご承知の通り、
認知症の進行ってゆるやかなもので、
その傾向はあるけど受診していない、
なんてお年寄りは巷にゴマンといる。

はたして、意思表示をしたときに、
専門医の診断書があったかどうか、

もし診断がついてたとしても、
判断力は完全になかったのかどうか、
客観的に証明できるものは何もない。

実習とか、施設や通所や在宅で、
認知症の高齢者さんと接していると、
判断力ってどこからどこまでか、
何ができたら事理弁識なんだか、
線引きが難しいことを体感実感する。

普通に会話ができて、買物炊事もOK、
火の元戸締りもしっかりできている、
でも認知症って方はたっくさんいる。

だから、わしらが、
ひとたび福祉のエリアの外に出て、
認知症の高齢者が、だまされて、
高額のフトンを買わされたことを
判断能力がなかったんだと言っても、

裁判所という場所では、
いやぁーだって会話はできるでしょ、
新聞読んでて囲碁も打てるでしょ、
これで意思能力がなかったつっても、
通りませんよあーた、となってしまう。

ということを考えると、この条文、
イイコトばっか起きるとは限らない。

意思能力の証明はむずかしい!
もしもコトが起きてしまったら、
裁判所を説得するのは不可能!

という流れになって、

だったら、
意思能力に不安がある人たちには、
もれなく成年後見人をつけよう!
成年後見制度を大いに利用しよう!
そうだそうだ!それがいい!

という流れになって、

ワタシこのヒトの成年後見人です!
後見人なんでワタシが契約します!
ワタシが財産を管理してるんです!
法律的には正しい手続ですんで!

と、
成年後見制度を悪用する輩が
異常増殖するってことも考えられる。

そういう目でもっかい見てみると、
意思能力がない者との契約は無効、
という規定って、守られているのは、
契約した双方、なんだよね。

事理弁識能力がない者が契約したら、
社会経済の安全が脅かされるので、
障害者や認知症の高齢者とは、
契約っていう関わりは避けましょう、
っていうように読めなくもなくなる。

これが試験に出る出ないってのも、
とても重要なことだけれど、
こんなに大事なことを決めといて、
周知されてないってのもどうなの?

施行はまだだけど、施行されたら、
社会福祉士はどうしたらいいかって、
考える材料にもなってきますです。

ではまた。



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社会福祉士、民法の改正の概要の一部。
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