読売新聞ヨミドクターの4月11日記事より抜粋

 埼玉協同病院(埼玉県川口市)に2月初め、若い女性(18)が生後2週間の長男の健診に訪れた。同級生の夫と高校を中退して産んだ子だ。同居する母親(42)に付き添われ、化粧気のない顔は、まだあどけない。


 助産師の萩原なるみさん(24)が出迎えると、おしりかぶれの相談や、大工見習いの夫が育児に協力的なことを楽しげに伝えた。将来を考え、4月から高卒資格を取る通信教育を夫婦で受けることも報告した。


 「やっぱり、いつもみてくれる人だと安心して話せます」と、女性は話す。同病院は、10代から22歳の若い母親に対し、妊娠中から産後まで、同じ担当助産師がきめ細かい支援を行う。


 年間1万5000人にのぼる10代の出産。無職のシングルマザーや経済的に自立できていないカップルが多く、人生経験も家族の絆も不十分で、虐待や母子の健康悪化につながりやすい。同世代の「ママ友」も少なく、孤立しがちだ。


 同病院は早くから10代ママへの担当助産師制を導入。助産師の伊藤由実さん(28)は、「複雑な背景を持つ若い母親を支えるには、個々にじっくり相談に乗ることができる関係作りが必要です」と、説明する。


 ある17歳の母親は夫も父親の自覚に乏しく、子供を「かわいくない」と拒否していた。伊藤さんは本人や夫と何度も話し、「おっぱい頑張ってあげてるね」などと褒め、地域の保健師とも連携して家庭を訪問。夫婦は少しずつ心を開き、育児にも前向きになった。


 「妊娠初期から自然にかかわる助産師が良き理解者となり、地域での支援につなげることが大事」と伊藤さん。本人の同意を得て、助産師から保健師へ情報を伝える仕組みも作り、連携を強めている。


 愛知県豊田市は、10代の母親が毎月集う「ティーンズママの会」を作り、母子手帳交付時に全ての10代ママに呼びかける。家庭相談員や保健師、保育士らが加わり、悩みを自身で解決できるよう学び、離乳食や家計のやりくりなどの育児や生活の基礎を学習する。


 自動車産業が盛んな同市は、派遣労働者や期間工などの不安定な労働で生計を立てている世帯も多い。全国から転入も多く地域のつながりも薄い中で家庭環境が荒れ、温かい家庭に憧れて、若くして妊娠する女性も目立つ。だが、学歴がないため低所得となり、結局、親と似た家庭環境を作ってしまいがちだという。


 家庭相談員の三ツ口仁子(みつぐちじんこ)さん(58)は、「困った時に頼れる場所を知り、自分に自信を付けてもらうことで、負の連鎖を断ち切りたい」と話す。