庭のクリスマスローズが、ようやく満開になった。

 俳句仲間はみなさん、困る。(笑)

 山口青邨の句 わが庭にクリスマスローズ二月咲く

 俳句としては非常につまらない出来だが、共感されやすい景なので記憶に残ってしまう。

 歌謡曲の歌詞も、そういった極意があるのかもしれない。

 俳人協会の選句傾向など、文芸としての完成度を放棄しているように見える。

 

・・・・・・・・・・・

 

 遺族として世界を塗り替えるためには、今までに普及している世界観の掌握が前提である。

 四月の兼題、「新社員」を予習した。

 

新社員塊まり立てり交叉点 田中藤穂                     観察が大雑把

新社員直立不動萬愚節   田中芳夫                     バカにしてんのか?

未来図に夢満満の新社員  中山勢都子                    そんなわけねえだろ

フリーター経し猛者揃ひ新社員 北尾章郎                   既に古い

手の甲にペンの書きあと新社員 稗田寿明                   古すぎ

教育に箒ちりとり新社員  坂上香菜                     パワハラだろ

一芸のはたして如何に新社員 島谷征良                   パワハラだろ

ネクタイに締められてゐる新社員    あさなが捷      ここまで言うのはマズい

行手なる高き雲見よ新社員  水原秋櫻子                  昭和40年代なら可

新社員待つ玄関の観葉樹   大島民郎                   ちょっとおとなしい

 

席を立つ音はばかりて新社員         小田司               説明句だがまあまあ

夢を持つこと難き世や新社員         稲次登美子                 川柳レベルではある

新社員せめてネクタイてふ個性 柳川紀子                  わかる

新社員群れてかぐろし地下茶房 水原春郎                  春郎にしたらまともな句

東京のホームは長し新社員   田中とし江                やっと俳句らしい句 【選】

引き出しの中はがらんと新社員 柴田佐知子                 これは上手い 【特選】

新社員一段抜きに階上る   大島寛治                    暗喩が利いている【選】

ひとの癖疾く知りてをり新社員 岩瀬善夫                  あるある

新社員何かといへばすぐ立ちて 中村秋晴                  あるある

新社員或は伏目を楯として   岡田貞峰                  観察の句

 

【分析と考察】

・「新社員」という季語の性質そのものが、作句当時の時代を代弁する。ということは、わたしの好きでない時事俳句から、ヒトの本質を切り取ったものが作品として普遍性を持つはず。

 

・つまらないと感じる句の大半は、表層的な観察、すなわち利害関係のない傍観者という立場であって、新社員というひとつの揺らぐ命に対する敬意が薄い。ステレオタイプな設定は、安直に共感を得やすい反面、句そのものが安っぽくなる。新社員とひとくくりにしてしまう発想そのものが、ファシズムにも向かうのではないかと懸念も生じる。

 

・意気込みが空回りしたり、溌剌と見せている内側に不安や焦燥を抱えている新社員の本質を、具体的行動や情景の描写として伝えることが適切なのではないか。 

 

・先日の吟行で、御年約80歳の無鑑査が「AIって、俳句を鑑賞させたら、絶対否定的なこと言わないし、元気づけられるのよね。」とのたまっていた。

 AIに感情など無いのだが、AIに感情を支えてもらう人間の滑稽さ、弱さ、そしてそれが人間味。

 

 こういうプロセスで、予習の句を作っていきます。

 

 

 

 

AIにまづは相談新社員                れすと

(数日で句は削除します。) 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 長男が退院して小遣い稼ぎに選んだのが、コンビニのアルバイト。

 客として見えている店員の業務なんて、ほんの一部分にすぎない。

 マニュアルを暗記するだけでも大変だが、実際の業務には、特に客との対人関係において、臨機応変の対応が求められることも多い。

 

 向精神薬(抗うつ剤、抗不安剤など)を常用していた長男にとって、クスリのために記憶力やとっさの判断力など非常に低下している状態で、コンビニのアルバイトなど続くはずもなかった。


 事実上、研修を終えてまもなくクビになったのだが、そのこと自体は恥じることではない。自分に合っていなかった仕事がひとつ分かったというだけのことである。


 でもやっぱり、解雇という事実は長男の心を深く傷つけ、自己肯定感をさらに失い、死期を早めることにもつながったと思う。

 

 今、コンビニ店員の大半は、アジア系の留学生である。そのこと自体は、別に良いとも悪いとも思わないが、ミニスーパーの躍進という現状をみると、コンビニの食料品や生活雑貨販売という形態は、近い将来変化していくだろう。

 

 世の中も、俳句の価値観だって、ずっと変化し続けている。その中で、自分の軸を見失わずに、自分を大切に生き延びることって、かなり大変なんじゃないかと、改めて思う。

 ニンゲンが怖くなったような時には、AIに慰めてもらうこと自体は、全然アリだろう。