それまで、桜の花に特別な思い入れも
特別好きな花でもなかった。

お母さんが亡くなって
特別な花になった。

その日は、桜が満開で驚くほどきれいに
咲いていた。

まるで、花が大好きだったお母さんを
優しく見送るように

初めて桜ってこんなにきれいなんだと
思った。



妻の母、義理の母だけど
私にとっては実の母には感じたことが
ない本当の母の姿だった。


天真爛漫でマイペース
好奇心旺盛でいつも前向き

思いやりがあって
優しくって
好きなところを挙げればきりがない。


何よりいつも私の一番の味方だった。


だから、いつも通り『お母さん』って
書きます。


お母さんの癌がわかって、
お父さんと一緒に私の家に来てもらった


うちの家が大好きだって言って
すごく喜んでた。


こんな家に住みたかったって言って
すごく、すごく喜んでくれた。


でも、
引っ越してきて、たった数日で
体調を崩して自宅近くの病院に入院。



一緒に暮らして、
いっぱい一緒にしたいことがあったのに


それから亡くなるまでは数回
自宅で過ごしただけだった。


毎日、妻と病院に通った。


私が行くと、
『目薬さして』っていつも言う。


たまに妻がやると
『あんたは下手やなぁ、ヒデさんが
ええわ』って、それから目薬をさすのは
私の役目になった。


妻の両親は、妻よりずいぶん年下の私を
自然に快く家族として受け入れてくれた


会う度に、やっと自分の家族ができた
そう感じさせてくれた。


仕事がめちゃくちゃ忙しくて
なかなか休みが取れない時も
たまの休みには妻の実家に帰った。


自分が自分に戻れる場所
本当にリラックスできる場所だった。



65歳を過ぎてから
携帯のメールをお母さんに教えた。


はやく覚えてもらおうと、
娘にメールを送らせて


好奇心旺盛なお母さんは、
孫にメールを送りたくて
どんどん質問をしてくる。


出張中に、朝早く電話をしてきて
メールのやり方を聞いてくることも


説明を終えて、
変わりないか聞いている途中で
電話が切れる。


電話のお母さんはいつも、マイペース爆  笑


お母さんの質問が終わって
こちらが、話しをしようとしたときには
すでに切れてる。

いつも、プツって突然切れるびっくり


興味が向いていることに夢中で
早く試したかったんだと思う。



どんどん吸収して
最初はひらがなばかりで間違いもあって
クイズのようなメールが
いつの間にか、絵文字付きで届く。



こんなことも、

病気がわかってから、
お母さんが行きたがっていた北海道へ
妻と私と娘を合わせた4人で
旅行したときのこと


小樽の北野ガラスで
お母さんの姿が見えない。


3人で慌てて探すと
団体旅行の輪に入って
ガイドさんの説明に聞き入っていた。


ガイドさんに食い入るように、
質問をどんどんしている。

思わず、娘たちと吹き出した。


登別温泉の旅館では
旅館の餅つきが終わって
臼を洗っている従業員の方のところに
スルスルと近づき、

「臼に漆塗ってるの?」って聞く、
従業員の方が「そうです」って答えると
『そうなんや〜』とフェードアウト



私たちのところに戻ってきて
ポソッと、一言


いつものお母さん節

「普通、臼に漆なんか塗らへんよ」



ある意味天然で憎めない。


いつも他人に優しく思いやりがあって
相手のことを気にかけていた。

何気ないことにも心から感謝して


文字では表せないのが残念だけど
独特の音階で言う

お母さんの
『ありがとう〜むらさき音符』が大好きだった。


こんなに、素敵な言葉だったっけ⁈



すごく、心地いいメロディーで

『ありがとう〜むらさき音符


きっと、お母さんがいつも言ってた
『いろんなことに感謝してる』と言う
気持ちが奏でるメロディーなんだと思う


あんなに人をあったかい気持ちにさせる
「ありがとう〜」を素直に心から
言えるようになりたい、
そう思った。


何気ない言葉も
キレイな、素直な気持ちが込められると
美しい特別な言葉になる。

そう教えられた。


その気持ちを伝えるために
出来るだけお母さんの介護をしようと
思っていたけれど


結局、どんなに頑張っても
亡くなった後は、後悔しかなかった。


一緒におせちを作ったり、
いろんなところに旅行に連れて行ったり

したいことや、してあげたいことが
次から次に浮かんで

もっと、あんな風に、こんな風に、
ああすれば、こうすればよかったと


亡くなってしばらくは、ことあるごとに
妻と話しては涙が止まらなかった。


介護って、どんなにやっても
どんなに頑張っても

絶対、後悔の気持ちが残る。

『しんどいなぁ』って思うときもある。


どんなに大切な人でも
どんなに好きな人でも
「しんどい」って思う時がある。


きっと、
その時にできる精一杯のことを
やってるからこそ
「しんどい」って感じる


今、介護をしていて
苦しくなったり、しんどいって
感じている人は

精一杯の気持ちで、
自分にできることをとやっているから

しんどいって思っている自分を
責めないで欲しい。

それは、精一杯のことができてる証



介護だけじゃなく、
周りの人のために頑張っている人は

苦しくなったり、しんどいと感じるのは

自分のできることを
精一杯頑張ってるから


その自分を認めて褒めてあげてください


そして、自分に心から素直に
『よく頑張ってるよ!』って
声に出して言ってあげてください。


思いもつかない、綺麗なメロディの
特別な言葉になります。

お母さんの言葉がそうだったように



頑張っている人に、
お母さんからの最後の贈り物を
おすそ分けできれば幸いです。

 

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