この牛は、いかにしてこの穴を通り抜けたのか | Knowledge Pod

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タイトルは、「物理学者はこう考える」というジョークでして、
掻い摘んで説明すると、木の衝立に空いた穴から牛の尻尾が出ていて、
普通の人なら「牛が向こうから尻尾を出しているんだな」と思う所、
物理学者は真剣に「こいつどうやって穴くぐったんだ?」と考え込んでしまうというものです。
超ステロタイプなジョークであり、全ての物理学者がこんな訳無いというか、
これ別に物理学者じゃなくても成立するんじゃないかと思ったりもするんですが、
それはそれとして、こういう風に見方を変えて物事を考えるのって結構重要だったりします。
それが、コロンブスの卵だの、ゴルディアスの結び目レベルである必要はありません。
身近な例で言えば、これまで何の興味も無かった分野に目を向けてみたら、
案外面白そうに見えるなんてのは、まさにこの一種と言えるでしょう。
度合いは天と地ほどの差があれど、思考パターンが変わることに違いはありません。
何でこんな話をしたかというと、仕事柄植物に接する事が日常になっているんですが、
これまでの人生で一切緑に興味を示さなかったあたしにとって、
仕事をきっかけに知った緑の世界が妙に奥深過ぎたってのがあります。
今や、人ん家の庭を見る度にレイアウトを分析する程職業病になっている訳ですが、
その中で行き着いたのが「盆栽すげぇ」という考えです。

これだけの前振り置いておいてそれかよと思うかもしれません。あたしもそうです(をい)
爺様方が庭でチョキチョキ切ってる盆栽なんぞ地味だろうという声も分かります。
でも、ちょっと考えてみて、盆皿に樹が植えられているって凄くありません?
花ならともかく、地中に根をしっかり張らないと自身を支えられないはずの樹が、
土がわずかしか入らない盆の中で最低限の根を張って平然と生育している。
しかも、その状態でウン十年生き続けているんですよ?水も満足に蓄えられないのに。
そう思うと、今まで地味と思われていた盆栽が、実は異様にダイナミックかつスリリングな代物であると感じられるのです。
何せ、貯水機能がまったく期待出来ない以上、水やりは一度でもミスれば即終了。
必要最小限の養分を成長に全て集中させる為、見栄えの調整も兼ねて、こまめな剪定も欠かせない。
ある程度成長したら植替もしなければならないが、盆のサイズを誤ると成長に狂いが生じる為、
植替のタイミング、植替先の盆の整備等、ミスの許されない息詰まる展開の連続。
そりゃ、自分で買っておきながら、職人に預ける人も出ますわね。

何が何やらって感じでありますが、あたしはこんな感じで盆栽に対する見方を変えた結果、
思いもよらない一面が見えてしまい、大変驚いている訳でございますよ。
皆さんも一度、身の回りのものを改めて考え直してみたらいかがでしょう。
こんなどうでもいいレベルの発見やら、もしかしたら高レベルのアイディアが生まれるかもしれません。