日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.34~ハイドンマラソン第8回 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今年も充実した「京の冬の旅」になりました。そのあとは、京阪で京橋、そして いずみホールへ。


日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.34~ハイドンマラソン第8回

19時~
いずみホール

指揮:飯森 範親(日本センチュリー交響楽団首席指揮者)
ヴァイオリン:漆原 朝子


定期会員の演奏会。今年度最後の回です。ハイドンマラソン2年目の最後の回。

HPからの聴きどころは
『今シーズン最後のハイドンマラソンは交響曲第16番、第37番、第100番「軍隊」というラインナップです。初期、中期、後期の作品がそれぞれバランスよく配置され、ハイドンの制作ポリシーの変遷が味わえます。各曲の第1楽章冒頭を聴いただけでそれぞれの違いがはっきりとわかります。
宮廷だけの嗜み事であった音楽が広く一般大衆に楽しめるようになった時代の変化の中を生きたハイドン。
ハイドンマラソンでは近代音楽の基礎を築いた彼の生き様を知ることができることでしょう。
2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲。ソリストに漆原朝子さんを迎え、第4番をお贈りします。かつてシューマンチクルスで共演している彼女との息のあった演奏が期待できます。』と。

最初の曲は
🎵ハイドン:交響曲 第16番 変ロ長調 Hob.I:16
チェンバロは恒例、P.エスカンデさん。オケは両ヴァイオリンが6の両翼配置。
第1ヴァイオリンを除いたpの弦からスタートの第1楽章。ここでは細かな表情づけが巧妙で、特に第2楽章が独立して動くところが光りました。
弱音器指定のヴァイオリン(第1と第2が最後まで一緒。つまりヴァイオリンは1部。ついでにオクターブ下でチェロのソロもまったく同じ)が 柔らかい音楽を奏でる第2楽章。反復記号がついているので、ヴァイオリンに隠れてしまう、チェロのソロのバランスを反復後に生かすなどの工夫があれば…と。
目まぐるしくヴァイオリンが駆け回る第3楽章。アンサンブルの訓練みたいなところが、演奏する側は怖そう。今日は特に両翼配置のヴァイオリンが合わせるのが大変そうでした。でも、掛け合いの場面はとっても上手く決まりました。

オケの配置替えの間で飯森さんのお話が入ってから
🎵モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K.218
エスカンデさんは下がって、オケ(弦)は同じ大きさ。
有名なこの協奏曲。以前は「軍隊」とアダ名されていたこともある作品。漆原姉妹の妹、朝子さんは鎌倉でのアンサンブルでは聴いてはいるものの、ソロでは久し振り。
冒頭の1回聴けば口ずさめてしまうリズミカルで明るい音楽。速めのテンポの潔癖な音楽。もう少しダイナミックな起伏が欲しかった感もありました。
美しい第2楽章は 朝子さんのキャラクターには合っている感じがしました。
第3楽章ではロンド形式。挿入された部分は、拍子やテンポの変化が大きく、エキゾチックで魅力的。私は後半のアンダンテの部分の民族音楽的な響きの(ソロが重奏する)箇所が特にお気に入り。ここではG線を開放弦で鳴らす場面、朝子さんはGの音を強めのバランスで弾きました。これはとてもエキゾチックな雰囲気を醸し出すことができてとても良かったです。

休憩のあとはハイドンが2曲
🎵ハイドン:交響曲 第37番 ハ長調 Hob.I:37
チェンバロが加わった、ヴァイオリン6の両翼配置。
ランドンによると 前半の交響曲第16番より3~6年前の作品。それより ハイドンの交響曲に分類された106曲の作品の中で、最初のものではないかと言われてきたくらい。つまり 本当のハイドンの『最初の交響曲』らしい。ハ長調なのでティンパニが加わりますが、ランドン版ではそのパートは任意。つまり最初はティンパニ無しで書かれた可能性が高い。もうひとこと付け加えるならば、ティンパニパートは果たしてハイドン作かは、微妙とも言える。今回はティンパニつき。
元気いっぱいの第1楽章。でもCDでもなかなかまとめるのが難しい作品。今回は飯森さんのティンパニを強打させることもない、繊細なニュアンスが良い方向に向きました。古典的なバランスのとれた美しさが聴けました。
粗削りなメヌエットの第2楽章。トリオからメヌエットに戻る時に、仕切り直しのような間を持つのは 私好み。
雨の夕暮れのようなハ短調のアンダンテの第3楽章は、ヴァイオリンに弱音器の指定が無く、弦4部だけのしっとりとした響き。楽器の組み合わせを変えてはいるものの、弦は2部で書かれている。そうなると 反復前後でニュアンスの変化を求めたくなってしまう。そう、ある町の風景を2回見れば なにかは絶対に違う風景となるのですから。
最後は3/8拍子の第4楽章。やっぱり粗削りの急速な音楽。繰り返しをしても あっという間に終わりました。
演奏効果のあがりにくい作品ですが、強弱やフレージングを上手くまとめた なかなか良い演奏となりました。

最後は
🎵ハイドン:交響曲 第100番 ト長調 Hob.I:100「軍隊」
今日の締めは有名な「軍隊」。チェンバロは外され、両ヴァイオリンを8に拡大。もしかして協奏曲の隠れた副題に呼応しているのかなぁ~とは 考えすぎかも。
この交響曲では、リラ協奏曲から編曲されて転用された第2楽章と新たに作られた第4楽章に、トライアングル、シンバル、大太鼓という、軍隊で使われた(本来はトルコ風というべき)楽器が使われたために この様に呼ばれるようになった。このトルコ風楽器の場目では、以前、ブリュッヘン/新日本フィルや鈴木秀美/山形響 などでは様々な趣向が見られたわけで、飯森さんにも(ハイドン交響曲全曲演奏を目指すわけだし、山形響の音楽監督なんだから 秀美さんの出し物は知っているわけで)そんな期待を持ってしまう。でも今日はCDのための録音をしているので、ホールを歩くことができなかった模様。その代わり?、打楽器に シェレンバウムを加えて、さらに東洋の響きを強く模したように感じました。
また、第2楽章の120小節からのトライアングルは近年の傾向通り、演奏されましたが、125小節のあと133小節まで、つまりそのあとの打楽器の参加の場面まで休まず演奏させていました。明るく私はとても効果的で好感が持てました。

コンパクトにまとめた古典的な演奏は爽やかな仕上がりでした。ハイドンをマーラーやベートーヴェンの時代から辿ってきた交響曲作曲家とみれば、イマイチでしょうが、バッハや前古典の無名の作曲家の発展系と捉えれば、納得のでしょう。現代のショスタコーヴィチまでの交響曲を知った耳には、どれくらいベートーヴェン以降を忘れて聴くことができるかで評価、感想が変わりそうでした。

今日も8割以上の聴衆。来期もいっぱいになって欲しいです。

今夜は天王寺の旅館でゆっくり休みます🌠