今日は、外来で時々ある質問について。「私の今周期は中刺激なのでしょうか、低刺激なのでしょうか」というものです。

 

以前にも書きましたが、体外受精においては、自然周期、低刺激、高刺激等の方針があります。中には完全自然周期とか中刺激という用語を使う場合もあります。本来やこういう基本的な用語の定義は統一されているべきだと私も思いますが、残念ながら、これらは、各施設、各医師が自由に表現している(≒勝手なことを言っている)だけで、これを低刺激とか中刺激というコンセンサスはありません。

 

クロミッドのみを内服して注射をしない周期のことを、「自然周期」、クロミッドも飲まない周期のことを「完全自然周期」と表現するクリニックがありますが、多くのクリニックではクロミッドのみ内服する周期を「低刺激」、何も飲まない周期を「自然周期」と表現したりします。

 

HMG注射を隔日でする刺激を低刺激と呼んだり中刺激と呼んだり。HMG 150単位で毎日注射をする周期は、刺激周期となりますが、「高刺激」と呼べるものなのか、ちょっと抑えめに毎日注射する刺激周期というような位置づけとするのかも、各施設により変わります。150単位は高刺激です、なんていう先生もいますけど、残念ながらそれはその先生の中ではそういう風に呼んでますという以上のものではありません。

 

本当は、ちゃんと共通化したほうがよいのだろうけれど、施設により色々な方針や考え方もあるし、利害だけでなく、各施設の歴的背景もあります。もし共通化しようとすると、スタッフへの教育もやり直し、ホームページや資料も作り直すことになるかも知れないし、説明会のビデオを作っていたとしたら作り直し、料金表や場合によっては電子カルテの設定から、やらなければならないことは色々ありそうです。全部やるとなれば、費用も時間も労力もかかります。また、バリエーションに富む各クリニックの刺激1つ1つについて、この場合はどうするのか、などと議論するのもかなり億劫です。どのクリニックの呼称に合わせるのかという問題もあります。どのクリニックも当然自分たちが使っていた呼称に合わせたいに決まっていますので、利害は一致しません。そして、私たちは、どのクリニックでどういう刺激を何と呼んでいるのか、何となく知っており、患者さんの話は理解できてしまうので、呼称がバラバラでもあまり困っておらず、刺激の呼称共通化へのモチベーションが湧かない、したがってなかなか改善されないことになります。誰かリーダーシップ取ってくれたら便利になると思うんですけど、私すら面倒だなあと思ってしまうくらいですから、実現への道のりは遠いものかも知れません。

 

リプロダクションクリニックは高刺激周期のクリニックだ、と言われることもありますが、自然周期も低刺激も中くらいの刺激も同じくらい積極的に行っています。その周期のコンディションによってあらゆる刺激を選択できるのが当院の強みです。卵巣刺激でお困りの方は、ぜひ当院での治療を一度お試しください!