この期に及んでまだ迷ってるのかと、人は言うかもしれない。
でもキミは『定まっていない』のではない、と僕は思う。いやむしろ、揺れているキミの方が本当は定まっているのかもしれない。
自分と偽りなくきちんと向き合おうとしているから、自分の本当のペースで歩こうとしているから、自分の本音を探そうとしているから、安易に逃げていないからだ。
きちんと目標を定めた者は立派だ。丁寧に歩みを進めるなら、たとえ紆余曲折があろうとも、彼らはいつかちゃんとゴールにたどり着くものだ。
しかし思えば僕らは、いつだって知らぬ間に、誰かの夢を見せられていたり、誰かの成功に憧れていたり、誰かという名前の占い師や解析データに指示されて動かされていたりも、する。そしてそういう生き方に何も疑問を持たないでいたりも、する。それが一番楽だからだ。
あらゆる物事に時間的な期限が設けられ、誰にでも当てはまる唯一の方法があるかごとくの詐術に魅せられ、最短のルートなるものを脇目もふらず駆け抜ける。
教えてやろう。
それは貧しい考え方だ。
だから定まらないキミへ伝えたい。
定まったらそれでよし。でも揺れていても、心配するな。誰かと比べて悲しむことはない。ましてや自分を低く見る必要などまったくない。キミは自分の本心と今の自分との距離感を正確に測ることができている。揺れる心と向き合えるキミは本当の自分の人生を生きている。
今から言うことを覚えておきなさい。
真っ直ぐに歩くことだけが人生ではない。もっと迷いなさい。
キミはいつか新しいスターになる人だから。
“他の人々が急いで行わなければならないことをのんびりとすることができる人だけが、価値ある何かを成し遂げることができます。”
ベルトルト・ブレヒト(ドイツの劇作家)