Autograph・自作箱のレストア | Garage Full Scale 奮闘記 - Amebaブログ

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LOTUS車のレストア記事。他に「Dr. AMP Lab.」名義の記事も収録。

クラッシック音楽とオーディオに目覚め、コンサート・ホール(当時はそんなに立派なホールは無かったのだが)に通い、色々なレコードを聴いて、オーディオ雑誌を読み込み、五味康祐の記述にも影響されて、「Autograph」こそクラッシック音楽再生の至高ではと若造の分際で考えるに至った。

通い慣れたレコード兼オーディオショップの店主から、市内の「S先生宅にAutographがある。プリはマッキンのC-22、メインはMC-275」と聞かされた。たまたまお嬢様が同級生だったので頼み込んで試聴に行って確信した。これだ!

後年、YAMAHA名古屋店のオーディオ・コーナーで「TEAC/進工舎箱のAutograph(HPD-385A入り)」を試聴したが、遜色ないと思った。(後年、フェライト・マグネット・ユニット(K3838?)を納めたAutographには余り感心しなかった。)

1976年頃に、代理店がシュリロ貿易からTEACに移った頃、市場のニーズはAutographの再販であった。ところがTANNOY本社でも正確な図面は残っておらず、老練な職人はもれなく引退し、細かな治具が残っていただけであったそうな。止む無く委託先の「進工舎」で現機を解体し、図面を起こし、再生産に至った、と言う話であったと聞く。

それを記事にしてしまったのが季刊「FM-fun誌」である。

1976年秋号で「自作特集~銘機オートグラフに挑戦!!」で、経緯が記され、図面が公開された。1976年冬号では一部図面の訂正や追試が記事となり、更には1977年春号では上杉佳郎氏が「タンノイ/オートグラフ用KT-88Single」アンプの記事まで掲載されるに至った。21世紀に入り、CAD/CAMソフトが流通し出すと、件の図面をデジタル化して、難しいアングルの解析も行われていた様である。

今でも、シュリロ貿易扱い(即ち1970年代初頭のMG-15搭載)のAutographは、非常に高価と聞く。それに対し、TEAC/進工舎箱のAutograph(HPD-385A入り)はその1/4位?
我が家に鎮座するTEAC/進工舎箱に「MG-15」を換装した愛機は、オリジナルと比べても遜色ない物と自負している。

前置きが長くなった。

「終活」の一環で、主に米国系の大型SPの処分先を逡巡する内に、「ミイラ取りがミイラ」になってしまった話。

中京圏発祥の老舗のオーディオ店で「Autograph・自作箱」なる物を見つけたのである。それが破格値。これはBerkley箱にHPD-385Aを納めて使ってもらってる友人に最適では?
その情報を伝えた所、やはり友人が食い付いた。

店に赴き、現機を確認し即決!
ダメ元で値引き交渉したら更に安くなった!

自作箱」と称され破格値だったが、仔細に見ると、表面にはツキ板が貼ってあるし、細部の造りも申し分ない。さしずめ件の図面が公開された頃に、指物師か家具屋に作らせたものであろう。

MG-15(若しくはHPD-385A)はSP取付けは、0-3-6-9時の4カ所、フロントホーン部とはその45°ずれの4カ所と伝わっていた。ところが件の「自作箱」には0-3-6-9時の4カ所の取付け穴が無い。前オーナーはどうやって取り付けていたのだろう?

SP取付け部のラワン材は40×40cm、20cmが中点である。そこをマーキングし、HPD-385Aのフレームをあてがい。取り付け位置を決めて、鬼爪ナット(M6)を鋳込んだ。

キャスターが付いていなかったので、ホームセンターでキャスターを購入し、19mm厚の板を介して取り付けた。前2点は貫通してM8の爪付きナットで締結。後ろ一点は、M8の六角コーチ・スクリューで固定した。袴から僅か1mmだが充分実用になった。

クロスオーバー・ネットワークを取付け、隙間を木材で埋める。同じくSP端子板も隙間を木材で埋めて取り付けた。

余計なネジ穴はパテで埋めて、手抜きがしてあった黒塗り部分も追加で塗装。
予習通りSPユニットは、M6キャップボルトでフラットに固定された。

身長=150cm、体重=70Kgと巨大である。後部の手掛けの切り欠きにロープを通して、GFS特製の0.5tホイストで吊り上げて立たせた。圧巻!

こうなると音を出したくなる。
テキトーなCDプレーヤーに、ここの所の試聴ソースである「J・ウィリアムス/VPO」をセットし、(半ば確信犯的に)SV-S1616D(KT-44version)を繋いで音出し。出だしは「ネバーランドへの飛行~映画Fookより」。
このソースは、少々やり過ぎ感もあるのだが、ウィーン楽友協会・大ホールの音を、直接音と間接音も含め、良く捉えている。弦楽器がガット弦だと判る音。加えて低域の再現性もセパレーションも申し分ない。

久々に「Autograph箱」に入った「HPD-385A」を聴いた。この期に及んでまだダイアフラムの固さが残るので、Energy Control は「-1」でOK。
何せガレージという野外開放環境なのだが、高域のプレゼンスはやはりMG-15と遜色ない。
特筆すべきはやはり低域の強靱さで、MG-15とは明らかに異なる、重くしっかりとした低音。それはそれで価値がある。
やはり、「Autograph」は本国箱も、TEAC/進工舎箱も自作箱も関係ないと断言する。その構造自体が大切なのだ。

「Autographの低域はボンボンしてて締まりが無い・始末に負えない」と言う意見があるが、それは不見識と言う物では?コンサート・ホールでのオーケストラの低音部は、何も「ダンピング=制動」されていないのである。従って、それを駆動するアンプもダンピング・ファクターはそれ程高い必要はない(TrアンプのDF=100なんて論外?)。

加えて、英国のSPを鳴らすのなら英国の真空管に限る。米国製真空管とは全く違う世界である。戦前とは言わないが、戦後~1960年代の真空管が良いのでは。

その事が判るまで半世紀掛かった。自作真空管アンプも50台を超えた。友人宅では、これまた里子に出している近作「Feranti PT-4(PEN-A4)pp」で満足する音が出ると思う。
いつかはAutograph」の夢が叶った時に、最上のアンプがあるのだから頼もしい(自画自賛も甚だしい)。