RCA/3C33 pp at 鈴蘭堂「SL-770」シャーシー | Garage Full Scale 奮闘記 - Amebaブログ

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LOTUS車のレストア記事。他に「Dr. AMP Lab.」名義の記事も収録。

1979(昭54)年11月1日、電波新聞社発行、オーディオ別冊「管球式アンプ自作マニュアル」の202-209頁に、上野忍(ペンネーム?=KEN AUDIO店主)「3C33プッシュ・プル ステレオ・アンプ」の製作例が載っていた。

(画像は同誌から引用)

鈴蘭堂「SL-770」のシングルアンプ用のシャーシーで2A3pp並の出力が得られる、当時としては不思議だが何とも魅力的な外観で、いつかはと思って「RCA/3C33」を2ペアー購入して死蔵していた(1Pairは富士商会、もう1Pairは? 忘れた)。

3C33 pp」の作例は、浅野勇氏のウィリアムソン型、渡辺直樹氏のアルテック型(6AN8AによるP-K分割型位相反転)の資料が手元にあるが、前者はゲインが高過ぎ、後者は素っ気なさ過ぎのように思えた。

そこで上野忍氏のリーク・ミュラード型位相反転を採用する事にした。6J5(6C5)-6SN7の前段部は、初段で約10倍、位相反転段で約5倍の利得があるので、負帰還(-6dB=1/2倍)を施しても、「2A3」の約半分と推察されるグリッドの防振電圧(約25V)には充分と思われた。

この時のためにと言うか、鈴蘭堂「SL-770」シャーシーが残っていたので、これを活用する。

元設計の特注トランスは「TANGO MX-280」に置き換える。同時に出力トランス「TANGO CP-40-5」も「TANGO FX-40-5」に置き換えた。チョークコイルは「TANGO MC-5-250D」。


製作記事では出力管(3C33」の落とし込みは「10mm」のスペーサーだが、ピンの挿さり具合が不十分で、最終的には「2mm程度=3mmナット1個分」でピタリと収まった。

他は原設計通りなのであえて付け加える事はない。あえて言えばカソード抵抗のW数をケチったりとかである。凶と出るか吉と出るかはまだ不明。

いつも通り、AC100Vラインからヒーター配線、B電圧配線、アース配線などと進めていけば、約1週間で配線は終わる。前回の「WE310A(T)-WE336A(T) drive WE300B Single c/w WE274B」の様に、「SATO ML-18」端子板を使用しているのでいつものラグ端子とは趣が異なるが、仕上がりはむしろ好ましいか?

通電し各部電圧チェック後、無帰還で少し試聴。死蔵していたHOVLAND/MUSICAPはフィルムコンらしく抜けが良いが聴きようによっては高域がきつく感じられる。

無帰還のD.F.は1.2程度。特性改善とD.F.アップを目指して「-7dB」程NFBを施して、マイカコン(240pF)で微分補正。D.F.は3.6まで改善。

歪み率<5%なら出力「9.6W」、<10%なら「13W」と言っても良いと思う。尤も<10%の正弦波は見るにも耐えないが。歪み率は測定手技のせいか少しガタついている。

周波数特性はNFBありで秀逸と言えよう。微分補正の効果もあり高域はダラ下がり。


NFBを施した状態で試聴すると、低域の量感は著しく改善された。

但しいただけないのがMUSICAP=フィルムコンの音。何ともササクレ立つ。聴くに堪えない。購入当時はまぁまぁの価格だったような気がするが、同じフィルムコンならEROとかASCの方が遙かにマシな気がする。全て取り去ってオイルコンに交換したい衝動に駆られたが、「0.1μF/600VDC」が全て出払っていた。窮余の策としてDel-Ritomoのオイルコン(0.01μF/600VDC)をパラって試聴してみたら「サ行」が収まってまともに聴けるようになった。この手があったか。

改めて聴き直すとハイ・ファイアンプとして合格点をあげられると思う。但しこれでなければと思う所がない、優等生的な音と評価すべきか。送信管系のタイトでソリッドな音である事は確か。でもこの系統のサウンドなら、例えばかつてレストアした「LUX/MQ-60C」の、傍熱3極菅ppとさして変わりがない。むしろ片chで80mAの消費とそれに伴う発熱が酷い。1時間ぐらい聴いていると出力管近傍のシャーシー表面は熱くて触れないギリギリの状態。長時間連用には問題有りと感じた。

渡辺直樹氏の記事に「バンタム級」アンプと言うサブタイトルが付いていたが、正直な所、その例えの真意が掴めないでいる。やはり一般の真空管とは容姿が異なり、それが一興のようなアンプに思えた。例え防振電圧が倍になっても「2A3/6B4G」の直熱3極菅のppアンプの方が良いように思う。せっかく組んだので棚に飾っておこう。

ちなみに6J5の代わりに6C6を管内で3接したと思われる6C5でもさして音に変わりは無かった。

これで鈴蘭堂製「SL-770」シャーシーの在庫は無くなった。

鈴蘭堂から引き継いだ、TAKACHIのSRDSLシリーズも奇数番がディスコンになった。何とも寂しい限りだが、再びオリジナルデザインで製作を進めていきたい。