絶対領域
オーバーニーじゃなくて
サイハイ
あなたが見たいのは
どんなに細く絞っても
肌につく
薄赤のライン。
その領域の境界。
脱いだらダメで
ずらすだけで
わたしは
ずっと うつむくだけで
遠巻きな欲望の
遠慮のない強さに
静かに そっと
傷つくこともある。
好きか
嫌いか
なんて
シンプルな質問には
答えられない。
だから
膝頭をゆるめて
気をそらす。
つかんではダメで
触れるだけで
壊してはダメで
使うだけで
誰に
指摘されなくても
わかっている。
最初から
あなたは
一度も
わたしを 見ない。
サイハイソックスって
かわいいですよね。
昔から
筋肉質で脚が太いので
履いたことは
ありませんが…。
昔の男
季節の変わり目の
ぼんやりとした風が吹き
記憶の中の
甘い香りが
わたしを嬲る。
あからさまに
ときめくのだから
みじめだ。
普段
思い出すこともない
昔の恋人は
ほんの少しだけ
幸せじゃないときに
目の前に
あらわれる。
どんな偶然か
どんな皮肉か
たとえ遠く離れていても
わたしが
わたしであるかぎり
この人の支配から
逃れてはいなかった、と
心から知る。
隣の人なんてどうだっていい。
ただ
彼の気をひきたい。
しつこすぎて
冷たく
追い払われるまで
誰かに
懲りないと笑われても
同じ過ちと
別れを繰り返す。
光り、影。
弱者と強者。
行為のときの彼の
説明のない涙が
また 見たい。
先月の小説講座は平山夢明さんでした。
基本的にホラーが好きなわたしは
平山さんの小説も映画評も大好きですが
ご本人は、というと
面白すぎ!想像以上の楽しさでした。
ご一緒にお酒もいただき
楽しさが増したところで
先に帰らなければいけなくて本当に残念でした。
ゴールデンウィークは
映画「第9地区」を見に行きました。
発想も斬新で
映像もグロく美しく面白かったです!
先が読めずに短く感じました。
唇の痛み
晴れの日を選ぶ。
風のある。
ありきたりな
再会の言葉はない。
いつだって変わらない
微笑みの
その目を
のぞくだけで通じている。
車の激しく過ぎる
大通りを
わざとふざけて
横切るのは
ただ
あなたが いきなり強く
わたしの手を
握りたいからだ。
その腕に
しがみついて
離さない。
人目につかない
物陰に着くまで
他愛もない冗談で
笑いあう。
たいていは
ビルの裏口で
時々は
公園の木立の奥で
まず
唇ではなく
舌先で触れ合うのが
ルールだった。
受容の意思が確認され
あとは
ことばじゃない声と
悲しくはないため息だけが
許される。
こんな場所で
立ったまま
非常識で
信じられないほど
幸せで
あなたが
やりすぎた
と、謝るまでは
何度
波が押し寄せてきても
わたしは
唇を噛んで
けして泣かない。
先日、ジムのトレーナーに
「このトレーニングをすれば
ビキニを着て海でナンパされますよ」と
言われました。
ナンパはいらないけど
ビキニって
ちょっと魅力的。
わたしの年で日本で
ビキニの人はあまりいないしなぁ。
変わったことが好きなので
無理そうだけど
今年の夏のかなり高めな目標として
がんばろうかな、と思います。
山桜心中
あの山桜の下で
わたしを
オトコが待っている。
オトコは裸足だ。
脱ぎそろえた靴の
磨かれた革の上に
柔らかな花びらが
そっと触れては落ちている。
約束まで
あと3時間
オトコの手に
銀の携帯電話
いや、それまで、
ここで君を待つ
もう着いたから
花びらを浴びて
ここで君を
だから、ゆっくり来なさい
オトコの声は
傷ついて枯れている。
土が
わたしの代わりに
オトコの足を
柔らかく包む。
わたしは少しも
優しくしない。
適切な優しさは
わたし自身の
過去の傷を露呈する
そんなふうに考えるオトコに
少し
うんざりしているからだ。
心中でも
するつもりかもしれない。
それなら
それもいい。
古い捻じ曲がった
桜の枝を見上げて
ふたり
横たわる。
最後だから
汚れて
心中だから
離れないように
絡まり合って
結局は
思いとどまる。
あらためて
絶望できないほどの
ものの美しさを
外でなく
お互いの内に
発見して。
今年は上野、浅草、お台場、白金、王子に
桜を見に行きました。
家の近くでは
まだ美しく桜の咲いているところがあります。
肌温
必要以上に
怖がる必要なんてない。
あなたを
ひどく
傷つけるつもりはないから。
わかってる。
道具なんかじゃなくて
ただ
わたしの素手で
叩かれるとき
あなたに
伝わる
この体温の
生々しさが
こわい、というのは。
肉体より
関係性の
傷ではなく
痕を
つくる
鈍い
防御の延長のような
ながい
痛みの
記憶の
愛撫としての
祈りとしての
打擲の音が
― 鳴る。
ちょっと短かったのですが
小説はなんとか応募しました。
まだまだ下手ですね。
ブログは本当に休みがちでしたが
また、きちんと書いていこうと思います。
7月に予定している合同の写真展は
ようやく写真をきめました。
映画も少しずつ観に行きはじめています。
昨日観た「ハート・ロッカー」は面白かったです。
ロック、で
小さな乾杯が
繰り返される夜。
あなたが
夢中で
話している間
グラスの中で
解けていく
氷を見ていた。
「支配」とか
「欲望」とか
あなたが
唾を飛ばし
何度も
繰り返す間
にがくて
深い香りの
舌を焼き
のどを掻くものが
その手の中で
静かに
薄まるのを見ていた。
もしかしたら
支配とか
欲望へ
あなたを導いたはずの
言葉には
もてない
濃度のものが。
小説の講座があり
お酒を飲んで小池昌代さんとお話しました。
わたしの中で詩人は
吉原幸子さんだったり
伊藤比呂美さんだったり
強烈な個性!という印象でしたが
小池さんは優しい静かな感じの方でした。
サインをいただいた本「転生回遊女」を読むと
言葉とか
言葉の音とかこだわりのあることが
よくわかります。
また、
人を植物のように感じたりすることは
詩では
やりやすかったりするので
わたしでも書いたことはありますが
さすが、小池さん、
そこからさらに進んで書かれているので
素晴らしい!と思いました。
なんか
これを書きたくて
さらっと今日のブログは書いてしまいましたが
今は応募したい小説に時間をとられているので
なかなか更新できなくてすみません。
応募できるかどうか
微妙なところです。
嘘の効用
胸に強く
抱きしめられるとき
わたしは迷う。
あなたに見えない
こんなに近く
どんな表情も
ふさわしくなくて。
眼をとじれば
いいのかな。
さらしてる
と思わせたら
成功で
もう
あなたは
わたしに
つけ込まれている。
嘘をつくよ。
とことん
自分を甘やかして。
傷つけても
わざと
なんて
本当は好きで
なんて
口を閉じれば
いいのかな。
うまくもないあなたの嘘にも
素直に
だまされている嘘をつくよ。
痛々しい
と思われたら
きっと
重たい
と思われたら
きっと
わたしを
暖かすぎる
腕のなかから
放してくれるから。
他の人と同じように
お前は
手に負えないと
わたしを
そんなつまらない場所に
縛り付けたりしないから。
バス通学
時間通りに
バスは来た。
放課後の
重い脚をひきずって
ケイコとわたしは
ステップをあがる。
がらんとした車内の奥の
1列に並んだいつもの席に
わたしが前
ケイコは後ろ
制服の右手は
つないだまま。
風を切ってすぎる
景色は
乙女のパステルピンクで
春に向かう甘い香りに
涙はいらない。
― もういいよ。
返事はない。
首筋に
押し当てられた額が
小さく震えているのに気づいて言う。
_ 彼でしょ?
わたしを卒業する
ケイコを祝福して
つないだ手を静かに離す。
大人になって良かったことは
外見や言葉にかんけいなく
優しい人がきちんと
わかるようになったことだな、と思います。
最近のマイブームは、「あべま」。
昼休みにイヤフォンで
ノリノリで聞いていたら笑われてしまいました。
踊る人
ようやく
性別の見分けられるほど遠く
その
男の人は立っていた。
自分にしか聞こえない音に
耳をすませ
少し歩いては立ち止まり
また歩いて。
長い手足の
ゆるく
体に沿って
重さを感じさせない
しなやかな動き。
鳥がはばたく前の
直立する
静かな佇まいで
そこに。
顔も見えない。
声も聞こえない。
ただ
踊る人なのだ、と
わたしにもわかった。
風が吹き
木々が揺れ
雲が走る。
ようやく
性別の伝わるほど遠く
ひとらしく
わたしは立ち
届かない笑顔と
拍手を送る。
美しさから
適切な距離を保ち
感じるための心を
空っぽにして。
最近、他のものを書いていて
なかなか更新できなくて
すみません。
舞踏をやっている人の
美しい佇まいは
ちょっと
人間離れしている気がします。
パパゲーナ
バレンタインの
サプライズなんて
待てない。
「僕に
チョコレートは」って
ストレートにねだる。
いつもちょっと
意地悪なあなたは
あきれたような顔で。
くる?
え?
夜の街をぬけ
人ごみをぬけ
振り返らない
あなたを追った。
知らない裏道。
うすぐらい街灯。
たどりついたバーの
重い扉を開けると
あなたは親しげに
カウンターへと進んでいく。
いい?
うん。
マスターと笑って
カウンターの中で
袖をまくる
あなたをみた。
チョコリキュール
生クリーム
そして僕の知らないブランデー
あなたの細い腕が
シェイクをすると
グラスの中に
カフェオレ色の
パパゲーナ。
何?
甘くて強い
大人の味。
僕は
無邪気に笑うのをやめて
静かな
マスターを横目でうかがう。
バーテンダーの友人に教わった
パパゲーナを
今年のバレンタインは
贈りたいと思います。