2007-07-27

傘のなかで

テーマ:大切なモノ

長いエンドロールが終わる。

場内が明るくなる。


Tは私の涙を見つけて

顔を背けた。


ああ

映画のなかの

雨のキスシーン。


暗闇のなかで


初めてTに握られた手が

涙をぬぐうために

そっと

ほどかれる。


立ち上がって

ぎこちなくひらく

二人の距離。


Tはいつものように

話しかけてくるけど

なかなかもう一度

手をつないではくれない。


なごりおしい

汗ばむ手のあたたかさ。


オレンジ系の

男の子の

整髪料のにおい。


わたしも少し

Tへの思いを

行動に出せたら


この苦しいココロが

いくらか

楽になるのだろうか。


出口に向かいながら

周りの大人のカップルを見る。


みんな

さりげなく寄り添って

微笑んでいる。


あ、雨。


なんだか

ひどく明るい声がでた。


かばんから取り出した

小さな折りたたみ傘を

Tに渡して


わたしは

半そでのシャツから伸びた

Tの腕に

自分の腕をからませる。


かすかにTに触れる

わたしの胸から

ふっと

おとしたTの視線から


この激しい鼓動が

伝わることを確信しながら。






雨の季節。

初めての相合傘は

どきどきします、ね。

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2007-07-20

金魚すくい

テーマ:あなたが教えてくれたこと

電球に照らされた夜

ゆらゆらと

ゆれている 水。


白い水槽の中で

ただよっているのは

あれは鮮やかな色の

小さな金魚、たち。


光る水面が

何度もはねて

重なる波紋の輪の向こうに


好奇心に輝く

瞳がみえる。


水がぬるくなっていくのと

同じ速さで

みんなといるのに

飽きてしまって


誰かの差し出す

もろいすくいに

さっと


でも

しずかに飛び込んでいく。


震える

呼応する

鮮やかなココロ。


すくったのも

すくわれたのも

おたがいの意思。


だから


主でも従でも

加害者でも

被害者でもなくて


たとえ

自分自身のふしあわせにさえ

責任をとる必要はない。


見詰め合って

触れ合って

喜びの瞬間があって


記憶と呼ばれるものが

ぬるくなっていくのを

見守りながら


おたがい

ゆらゆらと

ただよう。


そんなふうに

いきる。





お互いの重なる思いがあって

スクワレル(スクウ)のだと思います。



今から宮古島です。


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2007-07-13

姉妹のように

テーマ:喪失

  猫姉妹



S子には勝てない。


容姿も心根も

声の美しいトーンも


わたしには

なにひとつ

勝てるものがない。


あまりに違いすぎるから

はじめから

戦意喪失。


S子への友情は

嫉妬じゃなくて

あこがれに近い。


男の子が片思いをするように

彼女が好きだ。


そういうと彼女は笑って

「両思いじゃん」っていうけど。


おそろいのワンピ。

おそろいの靴。


姉妹だったら

どっちが姉かな、なんて

笑って歩く街。


男の子が目で追うのは

いつもS子だけど

わたしは彼らの横顔を

盗み見られる。


ある日

素敵な彼女が見つけた恋人は

やっぱり素敵な人で


こればかりは

おそろい、というわけにも

いかなくて


人見知りのわたしは

まともに目を

あわせることもできず


やっぱり

幸せそうな二人の横顔を

盗み見る。


やさしそうな男の人。

笑うと

目がきれいに細くなって


ああ、お似合いだなと

声にはだせずに

ああ、お邪魔だなと思いながら


おめでとう、

よかったね、と


悲しみの跡のない

特別の

改心の笑顔を作る。


でも


彼女はもうわたしの顔など見ていなくて

彼はなぜか

穴の開くほどわたしを見ていて


誰にも触れられた事のない

私の唇の

形が色っぽいですね、などと

からかうようにでも、なく。


彼女はなぜか

初めてわたしに怒って

さっさと早足で

帰ってしまい


あんなに仲のよい姉妹のような

S子とは

もうそれから一度も

会っていない。


肩まであるわたしの髪をなで

キスをするのは

S子があの日連れてきた彼だ。


醜いわたしは

残酷な喜びにおびえ

時々隠し切れない

自己嫌悪がのぞく。


幸せな夜。

たとえ

彼の腕の中でも。







来週は宮古島に行ってきます。

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2007-07-06

放課後

テーマ:大切なモノ

まぶしい光の初夏

夏の制服の白さ


窓を大きく開けて

風の通り抜ける放課後の教室は

はしゃぐには

少し静か過ぎて つい沈黙が増える。


いつものように

Tは一つ前の席に後ろ向きに座って

今 教えたばかりの問題を

ノートに書き写している。


公認のただの友達。


中学も一緒だったから

二人だけで

こんなに近く向かい合っていても

私たちには噂もたたない。


Tのシャープペンがたてる

小さな音を聞きながら考える。


友達の言うように

私の何と

Tの何が

全然つりあっていないのだろう。


最近

話していても

なかなか目をあわせないTの

綺麗な長い指。


いきなり

私の手のひらを重ねたら

Tはどんな風に

顔を赤らめるのだろう。


校庭で誰かの歓声があがる。

夏の空はまだ少しも暮れていかない。


外に気を取られていて

ふと 気づくと

Tが私の横顔を

じっと見つめている。


― 次の問題にいく?


聞きながら

Tのノートを覗き込むと

白いページに一行


 お前が好きだ。


心臓が どきん、と鳴る。


何も答えられないうちに

Tの指が

私の両手首を強くつかんでくる。


― あ、


Tの顔が近づいてきて

思わず目を閉じると

制服の下の肌はぬれて


一筋の汗が

胸元を静かに滑り落ちていく。




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