(小説)『Rondo of Dragon』Story 18. 悲劇と誘惑 | 憧宮の 書斎 兼 アトリエ

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たまにブログや読書レポート等。

目次
〇〇〇〇〇〇〇










ーごめんね、泣かないで、クレイヴー

「ーっ!」

飛び起きたクレイヴは、荒くなっている呼吸を整えようと胸元を握りしめた。

冷たくなっていく、愛しいヒトの体。

その感覚が残るもう片方の手を見る。

「ルーチェ・・・」

呟いた直後、クレイヴは部屋を出、もう起きているであろうルーチェの部屋へ向かった。


「ルーチェ、」
「わっ、クレイヴ?」

部屋に入ったそのままの勢いで、クレイヴはルーチェを抱きしめた。

「どうしたの?疲れた顔してる」
「今回の戦い・・・お前は行くな」
「・・・どうして?」

なだめるように彼の背中へ腕をまわしながら、ルーチェは静かに問う。

「嫌な予感がする。頼むから、行くな」
「大丈夫」

体を離し、ルーチェはクレイヴの頬を両手で優しく挟んだ。

「私は死なない」
「だが、」
「行かない方が、後悔する」

そう言うルーチェの瞳には、強い意思が宿っている。
それを認めたクレイヴは、思わず口をつぐんだ

「お願い、行かせて」
「・・・わかった。だが、無理はするな」
「うん、ありがとう」


舞う砂埃に、刃がぶつかる音。
そして、時折放たれる火炎放射。
そんな中で、クレイヴとルーチェは剣を振るっていた。

ー北が壊滅状態です!

北にいるアルカディア戦士から、二人にテレパシーが送られる。

「私が行く!」
「待て、ダメだ!」
「信じて、クレイヴ!」
「待て、行くな、ルーチェ!ルーチェー!!!」

クレイヴに一瞬の笑顔を残し、ルーチェは彼の制止を振り切って北へと向かった。


北へたどり着いたルーチェは目を見開いた。
多くのアルカディア戦士達の遺体が、むせ返るような血のにおいを放ちながら、そこら中に転がっていたのである。

「皆・・・」

昨日まで共に歩んできた仲間を想い、涙をこらえてルーチェが先へ進もうとした、その時ー。

「まだ生き残りがいるのか?」

「!」

不意に声が響き、ルーチェは剣を構え、声の方向ー空を見上げた。

「・・・あなたが、やったんだね」

射るようなまなざしで、ルーチェは声の主である男をにらみつける。

「死ぬのは弱いからだ。弱いのが悪い。強さこそが正義だ」

冷たく言うと、男ーサウロは剣を抜き、急降下してルーチェへと斬りかかった。

「強い者は弱い者を守るものだ!」

言いながら、ルーチェはサウロの剣を弾き、彼から距離を取る。
そして、剣の先をサウロに突きつけて続けた。

「強さこそが正義じゃない、愛あってこその強さが、慈しみの心がある強さが、本当の正義だっ!」
「愛、だと・・・?」

言い終わるなり、ルーチェはサウロに斬りかかっていく。
何度も斬り結び、何度も弾きあう。
その時、サウロに隙ができ、ルーチェはそれを逃さず斬ろうとしたーしかし。

ー同族殺しの異端者め

「ぅ・・・!?」

突然頭の中に声が響き、彼女は頭をおさえてよろめいた。
それを逃すサウロではない。
やがて彼の剣は、ルーチェの左胸を貫いた。


「ルーチェー!!!」

不意に現れたクレイヴが、倒れるルーチェの体を受け止め、彼女の頬に手を当てた。
かろうじて意識が残っているルーチェも、こたえるように、彼の頬へ手を当てる。

「ルーチェ!ルーチェ、あ、あぁ、そんな・・・」
「ごめんね、泣かないで、クレイヴ・・・」
「ルーチェ!嫌だ、オレを一人にするな!!!」
「ごめん、ね・・・」

謝った直後、ルーチェは瞳を閉ざした。
彼女の名前を何度も呼び、強く抱きしめるクレイヴ。

「弱いから、そうなる。やはり強さこそが正義だ」

そう言ったサウロの頬に一閃が走り、一筋の血が流れる。
一瞬何が起きたかわからず、彼は冷や汗をかきながら前を見た。
そこにはルーチェが倒れているだけで、先程までいたクレイヴの姿がない。
それに気づいた直後、背後からどす黒い殺気を感じ、彼がそちらへ視線を向けた瞬間ー。

「が、はっ・・・」

大きな一閃がサウロの背に走り、彼はその場に崩れ落ちた。


「ルーチェ・・・」

覚束ない足取りで、クレイヴはルーチェに近寄り、再び強くその冷たい体を抱きしめた。

「神よ・・・どうか、ルーチェの願いが、夢が、間違いでないならば・・・どうか彼女に、再び命をお与え下さい・・・」

祈りの言葉を口にするも、腕の中の彼女は冷たいまま。

「っ、神などいない・・・神が、ルーチェを殺した・・・なぜ、殺したあああああ!!!」

絶叫するクレイヴの脳内に、声が響く。

ーそう、神なんていない。次の彼女のために、楽園を創ろう。神なんかに邪魔されることのない、楽園を

「楽園・・・次の、ルーチェのために・・・」

ーそう、今度こそ、シアワセになれるように

「シア、ワセ・・・」

呟いたクレイヴは、光のない目で曇天を見つめると、冷たい笑顔をその表情にうかべた。









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