零式

故 炭粉良三氏が辿り着いた合気の世界。彼は己が世界を零式(れいしき)と名付けた。

己の存在も、力も技も不要。ただあるがままの、何者にも縛られる事の無い状態。そこには一部の「我」すら存在してはならない。故に零(れい)。

零式は医武同源。手を当てるだけで病をも癒すと言う。

かつて炭粉氏が零式を後継に伝える為に、幾名かの希望者を各流派から募り、求道者に零式の基礎を伝授しようと試みた。
勿論私も参加者の一人だった。

その後、氏から出版が叶わなかった、とある原稿を頂いた。

そこには零式を体得する迄の、戦慄が走るが如き苦闘の記録全てが記されていた。
また、零式後継者のもう一人であるK先輩から、外部開示厳禁の動画を授かった。勿論、炭粉氏の許可が有っての事だ。

動画には、顔面有りの殴り合いの中、静かに零式が産声を上げた瞬間が捉えられていた。

零式は実戦の合気であった。
そこには武道家として、空手に一生を捧げた男の集大成とも呼ぶべき世界があった。

宮本武蔵 二天一流の世界が。

炭粉先生、我々後継の徒は遺戒を守り、先生から授かった零式を更に深化させて参ります。

いつかあの世で再会する際は、笑顔で私達の話を聞いて下さい。
共に酒を酌み交わしながら…

またお会いするその日まで。

合掌
鎮魂 完


偉大な先達。

故 「炭粉良三」氏は常日頃から語っていた。

曰く、
「合気で出来る事は、力でも出来なければならない」
「実戦の武道家は強い。なまじ合気が出来ると言って、舐めてかかったら瞬時に殺される」と。

道理だ。
アスリートや格闘家が、歯を食い縛り、痛みと苦痛を乗り越えて醸成されたフィジカルを舐めてはならない。

何の苦行もしてこなかった輩が、合気のからくりを知り、少しばかりの技が出来る様になったとして、いい気になって他者を見下し我貴しとする傲慢さは許せない。

先日、某団体所属の方が当門流に来てこの様に語った。

「この流派は合気の技術のみ伝えている。まだ初門である。我が門流こそ真の合気を伝える流派である」と。

…勘弁してくれ。

何でも秘密の呼吸と、真意を融合させることで潜在能力が飛躍的に向上、発揮できるのだと宣った。

ならば、先ずは私に技を掛けてみよと伝えた所、自信満々で技を掛けてくれた。(同様のケースは数十回経験している)

果たして、彼も私に一切の技を効かせる事が出来ず、言い訳をしながら帰路についた。

合気を学ぶ者に伝えたい。
フィジカル鍛錬を行う者は強い。「心身不二」が合気のコアであるなら察せねばならない。
彼等は、鍛錬を経験した事の無い君達より遥かに強いのだ!
故に大東流の佐川総師範は高齢になっても鍛錬を辞めなかった。

武芸者よ。決して奢るべからず。
類似する徒は決して少数に非ず。

炭粉氏の遺言の一つ。

「求道者が道を外さぬ様、君達が後継を監視、指導せよ」

身体をはって、先達の遺言を実践します。

押忍

続く



偉大な先達が旅立った。日本武道の奥義である「合気」を誰よりも求めた人格者であった。
人を愛し、武を愛し、夢を愛した人であった。

「炭粉良三」

偉大な先達は多くの使命を我々後継の者に託し、旅立たれてしまった。

豪快であった。初対面ではいきなり「全力でかかってこい!」それも居酒屋で懇親会を行っていた時であった。

詳細は禅導会のオフィシャルブログに掲載して頂いたのでそちらを参照いただきたい。

https://www.zendo.jp/archives/1747


大好きな先達であった。

晩年、彼が血を吐く程の苦しみを経て体得された「零式」合気。


ある時、たまたま出張で私が名古屋を訪れた時の話だ。秘密裏に炭粉さん、元氣空術名古屋支部長であった小磯さん、現名古屋支部長、そして私の計4人が集った。


後継者の一人として、先達から託されたのは、正に魂のメッセージであった。

その一端は我々が担わねばなるまい。これは使命でもあろう。


武における先達の心を継ぐ一人として、同門、後継に伝えねばならない。


続く






金剛体の体得は空手家、いや、立技に特化した武術を修する者の世界を塗り替える。
是非習得して欲しい。完全に脱力された体はこちら側の意図を相手に伝わり難くする為、当然合気もかけ易くなる。

以前の記事にも記載したが、攻防戦とは互いに意図を伝えるコミュニケーションの一つと言える。
故に互いに反射をして、それぞれの身を守り、力を行使して「倒す」と言う意図を相手に伝えるのだ。
物理的に筋肉量が多く、柔軟性に富み速度とスタミナを有する側が勝ちをおさめる。

至極当たり前の理である。

然るに、金剛体の状態は完全脱力。
これは相手との接触時に、こちら側の意図を相手に伝え難くする。
力が無い故に意図が伝わらないのだ。


仮に相手がこちら側の意図に気がついたとしても、最早対処が間に合う筈はない。
柔らかな力で静かに質量を伝達し、いつの間にか相手を完全に制してしまえる。
武術を求める者は、是が非とも金剛体をマスターすべきだ。

ではどうすればマスターできるのか?
下段の Linkに習得法を記載しておく。各々修練に励むべし。

https://youtu.be/27BvBkNr20w

本日はここまで。


空手界伝説の妙技「交差法」は「金剛体」によって実現出来る事は述べた。それでは金剛体とは一体如何なる状態であろうかを考えたい。

そもそも金剛とは、一般的には金剛石=ダイヤモンドを表す言葉である。
イメージとしては、全身に力を滾らせ硬化させる状態を容易に想像してしまう。

しかし考えてみていただきたい。身体を硬化させれば、それは即ち力み(りきみ)となり、武術で言うところの「居つき」となる。当然、全身隙だらけになってしまう。

更に時間的制約も生じる。人間が全身に力を漲らせられる時間などたかが知れているであろう。
また力みは速度を殺す。百害有って一利なしだ。

稀代の天才空手家である「畑村」先生は、金剛体の本来あるべき姿を再現された。即ち、脱力による四肢の連結である。

金剛体では力は不要だ。故に如何なる時でも自在に動ける。相手からの攻撃は点で捉えている様に見えるが、実は接触と同時に全身の指先に迄、全ての衝撃による運動質量は分散し、帰着べき場所(質量を吸収する箇所=硬化した攻撃者との接触点)に返る。

つまり金剛体が出来る人間に攻撃をしても、その衝撃は自分に返ってくるのである。

続く。

尚、世界最大のフルコンタクト空手団体「禅道会」のオフィシャルブログに、当方の自伝⑤、⑥が掲載されました。私の様な不詳な者を取り上げていただいた事に謹んで感謝申し上げます。

https://www.zendo.jp/archives/1758