米賃金上昇加速か、テキサス州西部が示す「好循環」
5月1日、米テキサス州西部は原油価格上昇の恩恵で地域経済が活性化し、雇用や賃金が過去最高水準に達する一方、住居費や飲食費なども上昇している。写真は石油採掘用機械。同州ミッドランドで4月撮影(2018年 ロイター/Ann Saphir)
[ミッドランド(米テキサス州) 1日 ロイター] - 米テキサス州西部は原油価格上昇の恩恵で地域経済が活性化し、雇用や賃金が過去最高水準に達する一方、住居費や飲食費なども上昇している。つまり失業率低下が賃金を押し上げ、物価上昇圧力につながるという好循環の見本がここに存在する。
2016年に回復基調となった原油価格は今年に入って1バレル=60ドルを突破した。ノースダコタ州バッケンなどで06年に始まり、8年続いた前回のシェールオイルブームの最盛期の価格水準には及ばないが、パーミアン盆地を中心とする今回のブームには単位面積当たりでより多くの原油を抽出できる技術進歩という強い味方がいる。
ダラス地区連銀のエコノミスト、マイケル・プラント氏は、今の原油価格60ドルは100ドル並みの価値があると指摘する。
なぜならダラス地区連銀の最新調査によると、シェール業者の採算水準は1バレル=25ドル程度まで下がっており、もはや価格が100ドルに達しなくても大きな利益が得られるからだ。
こうした環境を背景に、テキサス州西部のミッドランドやオデッサといった都市は景気の好調さを実感しつつある。
エネルギー業界に掘削機器を供給する企業を経営するデール・レッドマンさんは、16年初め以降で従業員数を3倍に増やし、はるか遠方の市町村から人材を集めている。賃金も引き上げた結果、現在1200人いる従業員の半数以上は給与所得が10万ドルを超えている半面、地域の住居や生活にかかる費用も跳ね上がったという。
ミッドランドのモラレス市長は、住宅物件の在庫減少や賃貸料金の上昇には今のところ対応できているとしながらも、人手不足が最大の問題で自ら経営する飲食店では従業員をつなぎとめるために半年ごとに賃上げし、結果として店のメニュー価格も上げていると付け加えた。
ミッドランドとオデッサの2月の失業率はそれぞれ2.5%と3.2%だった。
賃金上昇の広がりに期待
米政府の統計によると、最近数四半期にわたって成長の足を引っ張ってきたエネルギー部門の投資は、経済に対してプラスの寄与に転じ始めた。もっとも石油業は米国内総生産(GDP)のおよそ2%程度にすぎない、とミシガン大学のキリアン・ルッツ教授は話す。となれば経済全体への波及効果も限られる。
また原油の輸出が増加し、16年第4・四半期から昨年第4・四半期までに米国のエネルギー分野における貿易収支の赤字額を半分に減らす力になったとはいえ、ずっと膨大な米貿易赤字総額にはほとんど影響しない。
それでも低失業率と賃金上昇の密接な関係性を示す実例として、ミッドランドとオデッサの現状はマクロ経済的にそれなりの意味を持つ。
米国全土で見ると、雇用が90ヵ月連続で増加し、失業率が4.1%まで下がってさらに低くなると見込まれているにもかかわらず、賃金と物価の伸びは依然として驚くほど低調だ。
ネーションワイド・ミューチュアルのチーフエコノミスト、デービッド・バーソン氏は「他の地域がテキサス州西部と同じような状況になり始めれば、全国的に賃金上昇の勢いが強まるのは間違いない」と述べた。
バーソン氏は、賃金上昇が全国的に加速する局面は恐らく来年初めに到来し、それが物価上昇率を想定以上に押し上げると予想している。
(Ann Saphir記者)
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