①貿易黒字の拡大ではなく財政赤字拡大しなければ、国民は豊かになれない

 

 底辺までをも含む国民の幸福のためには貿易黒字の拡大ではなく財政赤字の拡大を行わなければなりません。

 金本位制の頃から、ほとんどの経済学において、貿易黒字を出している国は国内市場への貨幣供給が過剰となることでインフレ傾向となり、インフレ傾向になると、貿易競争力が落ち、貿易収支は悪化の方向に向かい、景気循環はそれの繰り返しであるという景気循環分析が行われていました。

 実際、「財政政策」によっても、「貿易黒字」によっても、国内経済はインフレに誘導され輸出製品の原価が上がって輸出競争力は下がります。

 しかし、注目すべきは「財政政策」は賃金を上げる方向に作用し、「貿易黒字」は賃金を下げる方向に作用するという事実です。

 貿易黒字と財政赤字は同じように国内への貨幣供給となるのに、その各々賃金に対して全く逆の効果をもたらすことに着眼することは重要です。

 積極的な「財政政策」とは、税収を減少させたり、政府支出を増加させたりすることですが、近代国家においては、「財政政策」とは、低所得者や貧困層を救済するためのものであり、国際競争力強化を目的とする方向性はありません。

 そしてまた、貿易黒字政策よりも財政政策の方が、雇用の拡大や賃金の切り上げによって限界消費性向を高めますから、景気回復効果は高いのです。

 ケインズは、景気をコントロールするためには、金利政策よりも雇用政策の方が有効であると言っています。雇用政策とは財政政策を指します。

 財政政策を行えば、景気が良くなり、そのとき確かに、インフレ傾向が出て、輸出競争力は下がりますが、輸出で儲かる投資家などが不満を持ったとしても、これは特に先進国においては、雇用政策が行われるのですから、低所得者や貧困層を含む国民社会は豊かになります

 なぜなら、先進国においては、国内であらゆる消費財が潤沢に生産されるので、輸出で得たお金で外国から消費財を輸入する必要がなく、国内であらゆる消費財が潤沢に生産されているので、その後は、生産の心配よりも賃金という分配の心配をしていれば良いだけだからです。

 このブログの後半でも触れていますが、今、輸出競争力を上げるために国民は貧困化を余儀なくされています。

 「輸出第一主義」が賃金を下げる方向に向かうのは、経団連などの輸出業者たちが、価格競争力を上げるために原価を下げようとして、下請け価格を値切り、下請け企業の労働者の賃金を下げさせようとするからです。

 いまや、自民党政府は経団連をはじめとする国際投資家の手先と化していますから、中小企業潰しや移民増大による完全雇用の妨害、国内雇用の規制緩和など、経団連の望みを全て実現しています。

 輸出企業の株主は、財政政策による「賃金の上昇を伴う真の景気回復」を望みません。輸出企業のほとんどは上場企業であり大企業です。

 輸出企業自身の黒字によって国内市場への貨幣の供給が増え、それによってインフレになった場合は、輸出競争力は下がるものの、自らの利益を追求した結果ですから、輸出企業にとってそれはある程度は受け入れられるものでしょう。

 しかし、その輸出競争力の低下という災いが、自分たちの輸出による儲けではなく、低所得者や貧困層への所得再分配のための財政政策によって起こったのでは、輸出企業は犠牲となるだけですから、それは絶対に我慢出来ません。

 よって、輸出企業は積極的な財政政策に反対し、貿易の経常収支だけで景気循環を行うように政策に圧力をかけるのです。

 さらに、輸出企業の悪巧みはこれに留まりません。

 すなわち、貿易黒字が出ていても、国内景気が回復し物価や賃金が上昇するのを、指をくわえて見ているということはなく、政治家に働きかけてデフレを維持し、むしろ強化する政策を行わせるのです。

 すなわち、デフレの維持や強化は、低所得者や貧困層から貨幣を奪い、お金を使わせない政策によって行われます。

 低所得者や貧困層に増税すれば、税金は真の強制貯蓄ですから、直接的・物理的に国民の消費性向が下がり、国内をデフレの状態に維持することが出来ます。

 そうすると、貿易黒字が出ていても、国内の景気は低迷したままであり、物価や賃金が上がらず、輸出競争力は維持されるのです。

 しかし、こんな理由で低所得者や貧困層の貨幣を奪う政策を繰り返していては、いつまで経っても輸出企業だけが儲かり、景気は回復せず、国民は貧困になるだけです。それはまた、GDPが増えないことを意味します。

 また、経団連などの一大勢力、その番頭である自民党政治家、そのシンパの経済評論家やマスコミは、マンデル・フレミング理論を呪文のように繰り返し、「日本が財政政策で経済成長させようとすれば利子率が上がり、円高になり、そのことで貿易収支が悪化し、国内景気はむしろ悪化する」と嘘を言い続けています。

 財政政策が行われても、利子率が上がるかどうかは政府が決めることであって、必然ではないし、財政政策でマネーストックが増えるのですから、本来は円安になるはずです。国が為替相場に介入するので短期的に円高に触れるかも知れないという程度のものです。

 利子率が上がるとか、円高になるとかは、政府がやることであり、自然現象のように言うのは変です。

 仮に、円高になり、そのことで貿易収支が悪化したとしても、それによって国内景気が悪化するなどということは、財政政策を忌み嫌う新自由主義的な政府でない限りあり得ません。

 アメリカを見れば判りますが、貿易収支の赤字が長年繰り返されていますが、世界一の経済成長を続けています。それは、アメリカは新自由主義の国で、財政の崖などがある緊縮財政の国であると言いながらも、本当はまともな知恵を持った積極財政の国であり、日本よりはるかにまともな財政政策を続けているからです。

 日本人は、暗記する力はありますが、考える力が足りないので、マンデル・フレミング理論を教えられると、狂信的な宗教家のようにそれを信じ続けます。

 現在の日本では、マンデル・フレミング理論は、経済学会の不動の教義です。これに逆らえば、社会的地位だけでなく、研究仲間を失います。

 しかし、ケインズは、マンデル・フレミング理論に対して、人間があり得ない行動をすることを前提とした屁理屈であると言っています。

 しかし、このマンデル・フレミング理論は、日本においては、経団連などの一大勢力、その番頭である自民党政治家、そのシンパの経済評論家やマスコミが、財政政策を否定するために利用しているのですから誰も逆らえません。日本の経済学も彼らに支配されていす。

 同時に、同じ口で、「外国人の投資を呼び込んで、日本を経済成長させることは良いことだ」と言っているのです。

 この二つは互いに矛盾します。

 「日本が財政政策で経済成長すれば外国人は日本に投資しようとし、そのことで円高になるので良くない」(マンデル・フレミング理論)ということと、「外国人の投資を呼び込んで、日本を経済成長させることは良いことだ」ということは、外国人の投資に対して全く逆の立場を採っていることに注目すれば、その本当の意図が判ります。

 これらの発言の趣旨は、ただ一つ、投資家の投資は良いことだが、日本政府財政政策をやるのは悪いことだという一点に存在します。

 そして、日本の中小企業にも投資させたくないです。

 「日本人が投資しないので外国人に投資させる」というときは、日本人は投資しづらい環境にして、外国人に優遇措置を与えるということです。まるで日本人差別ですが、これは日本人差別とは少し違います。その証拠に経団連の誰も騒ぎません。

 外国人とは、比喩的な表現であり、つまりは国際投資家のことであり、日本の上場企業の投資家たちのことです。すなわち、大企業の株主たちのことです。

 上場企業の投資家たちは、たとえ日本国籍を持つ日本人であろうと、自分達さえ儲かれば国や国民はどうなっても良いという、その精神性は外国人投資家と同じです。

 これは、まさに、バブル崩壊と呼ばれる経済政策の後に行われた不良債権処理の都度、自民党政府によって日本の資産が外国人にられて来た同じ道を踏襲するものです。

 輸出においても、輸出企業が製品を海外に持ち出し、代わりに外国から外貨を持ち帰り、金融機関で円通貨と交換して、円通貨を国内で使うことで景気回復するのですから、貿易黒字も財政赤字も国内市場への貨幣供給政策であるという意味で同じものです。

 為替介入はほとんどの場合が円安誘導のためのドル買い介入であり、数少ない円買い介入の必要があったとしても、ドル買い介入したときに得たドルを使うわけですから、輸出で持ち帰ったドルはほとんど何の役にも立ちません。

 だから、輸出で得たドルを円に換えて国内市場に供給する方法も、財政赤字で国内市場に供給する方法も、国内市場への円の供給という意味で同じなのです。

 むしろ、財政赤字によるものの方が、近代国家の本来の目的である低所得者や貧困層への所得再分配が出来ます。

 貿易赤字になり、そのままにしておけば、国内の貨幣が流出し、デフレになりますから、財政赤字を拡大してなかなかインフレになりません。このことは、財政赤字を拡大し、低所得者や貧困層への所得再分配するときに好都合です。インフレにならなければ、むしろ、さらに、所得再分配を手厚く出来ます。それはインフレになるまで続けることが出来ます。

 インフレは富裕層の貯蓄の実質価値を下げ、完全雇用が達成されますから、インフレそのものも、通貨の供給をもって行う富裕層から低所得者や貧困層への所得再分配政策となります。

 この所得再分配政策は、貿易黒字のときと同等の景気回復または好景気の維持を可能とします。

 貿易赤字のときに景気が悪化するのは、その時同時に、わけの判らない政治家が緊縮的な財政政策を行うからです。

 むしろ、貿易赤字のときはデフレになる転換点ですから、デフレにならないように積極的な財政政策を行わなければなりません。

 そして、そのことは、見方を変えれば、貿易赤字のときはインフレ懸念を持つことなく、財政赤字を拡大して行う積極的な財政政策に着手するチャンスでもあるということです。

 積極的な財政政策を行えば、景気が悪化しないどころか、国民の貧困問題は解決され、合わせて持続的な景気回復を果たすことが出来ます。

 アメリカは慢性的な貿易赤字ですが、世界で最も経済成長しています。

 また、財政赤字を拡大し積極的な財政政策を行うことは、貿易黒字競合し、その結果は、労働者の産業部門の中で、内需型企業と外需型企業の雇用の分布の変化という形で現れます。

 積極的な財政政策を行い、貿易企業の労働者が内需型産業に転職するにまかせておけば、内需型産業が強化され、国の体質も良い方向に変わって行きます。

 労働者の職域分布を変えるほどの貿易赤字と財政赤字の組み合わせが必要なのです。

 

 

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