●チオプリン遺伝子検査キット)日本人の潰瘍性大腸炎/クローン病患者に朗報 | 潰瘍性大腸炎 & クローン病&過敏性腸症候群の改善・完治・根治

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潰瘍性大腸炎/クローン病の治療で最先端の研究をしている慶応大学病院で、チオプリンの治験が最近、高率で実施されているのを知りました。何が起きているのでしょうか??

 

▼ 重篤な副作用が出るチオプリンを安全に使うための開発

チオプリンは、錠剤で価格が安い。でも、患者の1.5%に重篤な副作用が出てしまうことから、医師らは、自信を持って患者の治療に使うことができなかった。

が、重篤な副作用は、ある特定の遺伝子を持った人だけにでる。その遺伝子検査方法の開発、認可取得を実現したのは、角田 洋一助教授/東北大学病院 消化器内科下部消化管グループです。

 

インタビュー記事があったので、要約掲載します。

 

写真1:インタビューに
答える角田先生

 

▼ 日本人に適した炎症性腸疾患(IBD)の治療薬選択に向けて

潰瘍性大腸炎は、日本の患者数は20万人を超え、日常診療で見受けられる難治性の疾患だ。

しかも、20~30代で見つかり、その後も、一生付き合っていかなければいけない。外科治療も行われるが、特にクローン病は一度手術しても完治はせず、別の場所に同じような炎症性疾患が生じてくる。

 

▼ アジア人に起きやすい副作用
チオプリン製剤は、特に欧米でステロイド依存性の難治例に対する第一選択薬。ステロイドやその他の代替療法の維持療法として重要な役割を担っている。

しかし日本では、欧米ほど普及しなかった。日本人の100人に1.2人くらいの割合で、服用開始初期に急激な骨髄抑制、欧米人にはまれな白血球低下症や貧血にという重篤な副作用、リスクがあるため。

 

▼ ゲノム解析

海外留学から日本に帰国した2013年、角田先生は、どの患者が副作用を起こしやすいのかを知ろうと、チオプリンを使用者から同意を得て血液検体を集め、ゲノム分析を思いつく。

 

そんな矢先、韓国の研究者らが論文を発表。欧米人と違う遺伝子多型がアジア人にはあり、チオプリン製剤による副作用、とくに骨髄抑制が起きるかどうかが変わると。


この論文は画期的で、研究者として先を越されたというか、ショッキングだった。

すでに集めた血液検体で確認したところ、NUDT15の遺伝子多型が、骨髄抑制だけでなく、他の副作用、特に脱毛とも強い相関があることがわかった。

▼ 脱毛
脱毛は、例えば、抗ガン剤によるがんの治療では特に有名な副作用だ。死に至ることはないが、患者にとっては、長期使用だと耐えがたい問題。

 

▼ 大プロジェクトスタート
角田氏は、これを2015年の厚労省の総会で発表。韓国グループ論文発表の数カ月後という速さで、内容も大きな反響を呼んだ。

その後、39施設の専門施設が参加し、2,630⼈の炎症性腸疾患の患者DNAを解析。チオプリン製剤の副作用の発生予測とNUDT15遺伝子のコドン139の関係を示すことができた
これにより、1%の重篤な副作用を起こす患者を判別し、危険な状態を回避して別の治療に誘導ができるだけでなく、残り99%の患者は治療を安心して受け入られる。

 

◎ DNAの一部にコドン139があり、この内容次第でチオプリンでの副作用が起きるかどうかを教えてくれる

 


 

◎図3:NUDT15遺伝子多型検査キットの判定結果と、チオプリン製剤による重篤な副作用の発症率。Cys/Cysというアミノ酸を生まれ持った人は、重度の白血球減少が起きる。

 

 

厚労省に相談し、2018年に遺伝子多型の情報を正確かつ迅速に検査する「NUDT15遺伝子多型検査キット」の製造販売承認を取得

▼ 医師が躊躇していた古い薬を新技術で使いやすく
検査キットによる測定は、末梢血の取得から遺伝子型判定まで、わずか約2時間ほどで完了。

現在、保険適応になる遺伝多型検査は、抗がん剤と副作用を調べる検査UGT1A1のみ。そこへ、潰瘍性大腸炎/クローン病用の検査キットが認可され、現在治験中。

 

チオプリン製剤は安価で、50年以上前から使われ続けてきた薬剤。遺伝子解析技術の活用で、重篤な副作用が回避可能で、高額な抗体製剤を多用することが多い潰瘍性大腸炎/クローン病の寛解維持治療において適切に使用可能になる。

 

▼ 手探りの開発検査キットはわずか2年半でデビュー

「チオプリン製剤の副作用を予測する遺伝子検査の可能性がわかったが、実際の現場で使うにはどうする?「そんなのだれか偉い人がやってくれる」「こんなの自分には無理」とずっと思い逃げてきた。でも、多くの先輩方から「ご自身がやりなさい」と励ましをもらった。

 

遺伝子検査を作るということはどういうことなのか、法的倫理的なこと、企業や特許など何もわからないところから、「私にできるのかな?」と毎日思いながら進めてきた。

 

「実際、途中で大きな挫折を何度も経験。でも、気づくとわずか2年半で検査キットは、現場で使えるところまで来ている。周囲の多くの先生方のサポートと、なにより今回研究で見つかった結果がとても重要かつ患者の役に立つものだと、私自身が信じていたからだと思います」。

 

この成果により、1%の重篤な副作用を起こす患者を判別し、危険な状態を回避して別の治療に誘導ができるだけでなく、残り99%の患者は治療を安心して受け入れることができるようになる。

すべてのチオプリン投与を要する患者に恩恵がもたらされると角田先生は期待している。

 

2019 年から保険適用

 「チオプリン製剤の投与対象となる難治性炎症性腸疾 患及び急性リンパ性白血病等」が対象の予定で、 1 回検査が可能。原価料金は約6万円。