2024年9月練馬区議会第三定例会での会派の一般質問について掲載します。
正式な議事録は区議会HPからご覧になれます。
保護司と再犯防止について
質問
保護司は、犯罪や非行をした人たちが再び罪を犯すことがないよう、その立ち直りを地域で支える民間のボランティアで、全国に約47,000人が保護司として活動しています。
刑務所から仮釈放された人や保護観察中の少年らと定期的に面接したり、住居の確保や就職に関する支援を通じて再犯防止を促すこと、また街頭パレードや広報、市民向け講演会など活動は多岐にわたり、国の保護観察官と協働し、地域に欠かせない存在です。
今年5月に滋賀県大津市で、保護司の男性が更生支援していた保護観察中の男に殺害されるという痛ましい事件が起こりました。この事件を受け、有識者検討会が法務省で開かれ、保護司の安全確保策を議論しました。
また、全国の保護司にアンケートを実施、不安の有無などを聞き取った調査結果を公表しました。
多くの保護司が不安に思っていることは、「自宅で面接すること」でした。法務省は調査結果を受け、全国の保護観察所に対策を指示し、対象者との面接にあたって公民館など公的施設を利用できるよう自治体に配慮を求めています。
練馬区では以前から区立施設等で面接できるような仕組みをつくっています。保護司からは自宅から近くで便利で、安全面からもよいとの声が多くあがっています。
こうした保護司の安全を確保するという取り組みをいち早くできたことを高く評価いたします。
更生保護の周知啓発についてお伺いいたします。
日本の保護司の歴史は古く、その先駆けとされるのが明治21年設立の「静岡県出獄人保護会社」です。天竜川の治水を進めたことでも知られる事業家の金原明善らが、出所者の再起を支えるため立ち上げました。その熱意は広がり、各地で同様の事業が多く生まれました。これが後の保護司制度へ連なっていきました。
長年の経験で培われた日本のノウハウは貴重で、今後の対策づくりに反映させたい、日本の制度から取り入れるべき点は多いと世界からも高く評価されています。
法務省が主導した国際会議で4月17日を「国際更生保護ボランティアの日」にすることが決まっています。それに合わせて練馬区でも、更生保護に関わっている保護司、更生保護女性会、BBS会、協力雇用主等の活動を区報で大きく特集しては如何でしょうか。毎年7月は、「社会を明るくする運動」の強調月間及び再犯防止啓発月間です。
品川区では、「社会を明るくする運動」の活動を区報の2,3ページを使って見出しに大きく特集しています。
豊島区では、広報特別号で特集しています。練馬区においても周知啓発に力を入れてほしいと思いますが如何でしょうか。
次に、保護司の兼業促進について伺います。全国に約47,000人いる保護司は、60歳以上が約8割を占め、平均年齢は65.6歳と高齢化と担い手不足が深刻化するなか、法務省が、保護司のなり手として自治体職員などの地方公務員に協力を呼び掛けています。
荒川区では、区職員が保護司として保護観察を担当するなど、他自治体から注目を集めています。きっかけは、保護司の担い手不足を聞いた区長が、地域活動やボランティアに熱心だった職員に声をかけたことです。
区は職務と保護司の活動が両立できるようなサポート体制を整え、平日の日中の活動が多い保護司について、資格試験の受験や講演会の聴講と同様に職務が免除される活動の対象に加えました。
これらの取組は「荒川モデル」と呼ばれ、他の保護司会から問い合わせが頻繁にあるといいます。
区職員が保護司になることを制度化した自治体もあります。豊島区は2021年3月、同区保護司会と協定を締結し、区の子育て政策などを担当する部署の部長、課長、係長が保護司になることにしました。行政サービスを活かした対象者への支援を促進する狙いがあり、すでに異動した人も含め、5人の職員が保護司を務めています。
対象者の中には精神疾患を抱えた人も多く、以前よりも福祉などの専門知識が必要なケースが増えているようです。行政と連携できれば保護司の負担感を軽くし、なり手増加にもつなげられます。
また、退職者に保護司活動を本格化させる同区では、「保護司が一人で背負うのではなく、行政がバックアップするべき時代だ」と強調しています。練馬区では、保護司の定員が146名に対して、現状86名と60名も不足しています。職員の保護司の兼任を後押しし、活動時間は免除になる制度をつくることを提案します。
また、定年を迎える職員に対して、退職後の奉仕活動の一環として保護司活動について紹介するなどしては如何でしょうか。ご所見をお伺いいたします。
再犯防止についてお伺いします。
刑法犯の検挙件数は、年々減少していますが、検挙者に占める再犯者の割合は増加しており、令和5年版犯罪白書によると、令和4年は47.9%と検挙された者の約半数が再犯者という状況になっています。
再犯防止には、居住と雇用の安定が重要です。練馬区では、再犯防止推進計画に取り組んでいますが、区内事業者へ東京都認定ソーシャルファームを推進しては如何でしょうか。
新たな協力雇用主の開拓・確保への支援として、建設工事入札参加資格審査や総合評価落札方式における協力雇用主等に対する優遇措置などの取組を行っている自治体もあります。
豊島区では、区が発注する建設工事において、総合評価方式を実施するに当たり、協力事業主の受注機会の増大を図るため、新たに雇用対策評価項目の一つに「法務省の協力事業主制度に登録」を設定しています。
事業者にもメリットがあり、練馬区全体で支え続けるのに必要な対策ではないでしょうか。区のご所見を伺います。
答弁
●福祉部長
犯罪や非行をおかした人が犯罪をせずに生活していくためには、就労や住まいの確保など継続的な支援を受けられる体制を整え、地域社会の理解協力の下で、自立更生を援助する更生保護活動が重要です。
区は、これまで、社会を明るくする運動のフェスティバルやつどい、パネル展等を保護司会等と協力して実施しています。また、区役所での紹介リーフレットの配布、合同校長会での活動周知など広報の協力を行ってきました。
今後も、更生保護活動についての周知啓発の効果的な方法を保護司会等と検討しながら、協力して実施してまいります。
保護司は犯罪や非行をした人の立ち直りを支える重要な役割を果たしていますが、人材の確保が課題となっています。区では、職員が公務運営に支障をきたさない一定の範囲で兼職等を認めており、過去に保護司の兼職を認めた事例があります。職務専念義務免除の承認があれば、勤務時間内に従事することができます。
また、定年退職した職員が保護司として活動している事例も複数あります。退職後の地域活動の一つとして保護司活動を考えることができるよう、職員に対する活動紹介の機会拡充を検討します。
出所者等の就労の確保は、再犯を防止するために重要です。引き続き、就労サポート事業等の支援を実施するとともに、事業者に対して、ソーシャルファームや協力雇用主への支援を紹介し制度の活用を働きかけていきます。
総合評価方式による入札は、地域貢献に関する評価項目等について、これまでも様々な声をいただいており、国・都・他自治体の状況も参考に、引き続き検討してまいります。
区は現在、次期地域福祉計画の中に包含する形で再犯防止推進計画の検討を進めています。保護司の人材確保・活動環境の整備や出所者が社会的に孤立することを防ぎ社会復帰するための支援について、計画の中に位置付けてまいります。