冷たく妖しく美しき幻想時代小説。
年下の火消し鳶との結婚前に知った真実、
菊を愛する隠居の医師が出会った人形を操る少年。
鷹匠が見たもう一つの鷹…
江戸の移ろう季節の中に浮き上がる
哀しい恋の物語たち。
どの作品も物悲しく、ハッピーエンドと思える作品は
ありませんが、それがなんとも美しい。
菊や桜、火…あらゆるものに惑わされるかのように
悲劇に向かう主人公たち。
心が痛みながらも、その端正で幽美な文章に
花の香りのようなかぐわしさを感じます。
おじいちゃんが少年に惑わされてしまう
「十六夜鑑」はあからさまな欲求になりそうな
瞬間が怖ろしかったですが、霞のように
消えてしまってかえってほっとしました。
どの作品も正直ろくな
人間がいませんので、素敵な恋物語を
求めたら刺さります;;
ですが清も濁も併せての見事な作品群には
ため息がつきません。
濃い短編集でした。
次は海外ドラマ
GRIMM シーズン2 第20話
「女神のキス」の感想です。