甲府でもブックオフ | 古本屋レッドブロンコ開業準備室

甲府でもブックオフ

 国産の250CCのスクーターに乗り換えたことで随分久し振りに浮き立つ感覚が得られるようになった。車はあるが、ガス代が掛かるので一人で遠出する気にはならない。バイクならガス代も気にならないし、それより何より開放感がある。そんなわけで子どもが学校や幼稚園のある日にサラリーマンの休みの日があったので、家内の許しを請い、学生時代によくツーリングで立ち寄った甲府に出掛けることにした。甲府はわがまちから比較的近く、風光明媚な土地であるうえ、温泉もあるしで日帰りに遊びに行くにはベストの場所である。そのうえ、ブックオフ創業者の出身地であるからか、甲府近辺だけで10店舗ものブックオフがあるのだ。残念ながら、逆に、ネットで調べる限りでは、まちの古本屋はほぼ絶滅しているものと思われた。時間が許せば、生き残ったまちの古本屋を探したりしてみたいとも思った。

 

 ということで、昨日の朝5時半に出発し、奥多摩廻りの柳沢峠を抜ける遠回りコースで甲府を目指した。わがまちからは甲州街道を利用すれば、高速を使わずとも2時間余りで甲府に着く。古本屋巡りだけなら8時頃にゆっくりと出発すればよいのだが、早朝に出発したのは懐かしい道を走るために遠回りをするからだけではない。甲府の近くに、近頃よくテレビや雑誌で取り上げられる「ほったらかし温泉 」という立ち寄り湯があり、何とそこは日の出の1時間前から営業していることを知ったからである。立ち寄り湯の営業開始時間は大抵10時頃であり、ブックオフの開店時間と被ってしまうが、朝から営業している立ち寄り湯があれば、ライディングで疲れた体を温泉で癒してからでもブックオフの開店時間に間に合うので、時間をロスすることなくブックオフ巡りに充てることができる。ほぼ予定通りの8時半頃に、フルーツパークの奥にある「ほったらかし温泉あっちの湯」に到着すると、平日の朝であるにも関わらず、既に先客で賑わっていた。施設は安づくりではあるが、ここの売りは早朝営業というだけでなく、風呂からの眺めにある。そう、山梨側からだと山並みの向こうになる富士山を勝沼周辺のブドウ畑やまちなみとともに堪能できるのである。日の出前にオープンするのもお湯に浸かりながら日の出を眺めることができるようにしたためである。旅館に泊まれば、湯船の中から日の出を楽しむこともできようが、立ち寄り温泉でとなると日本広しと言えでも数少ないであろう。まして、富士山を背景にしてとなるとほかにはないかもしれない。昨日の朝は、霞がかかっていたため、視界は今ひとつであったが、それでも富士山ほかの山容とブドウ畑の大パノラマは迫力と美しさに満ちていた。甲府のブックオフに遠征しようという方には、「ほったらかし温泉」から始めることをお勧めしたい。

 

 さて、甲府周辺のブックオフ巡りで最初に選んだのが湯村温泉近くの甲府塩部店であったのだが、ちょうど10時にそこに到着したものの店の中が暗い。よく見ると、貸店舗の看板が掲げられていた。店の外観や内装もブックオフのままなのでつい最近までは営業していらしい。グーグルの地図機能で「甲府・ブックオフ」を検索し、その地図をプリントアウトしたのだが、流石のグーグルもリアルタイムの情報更新にまでは対応できていないようだった。帰ってブックオフのホームページで調べると、グーグルで検索したときに掲載されていた甲府周辺の10店舗のブックオフのうち2店舗は既に削除されていた。迂闊であった。グーグルを過信していたらしい。やはり原典を当たらなければいけなかった。気を取り直して次に向かった甲府平和通り店は、しっかりと営業していたのでほっとした。ここでは特に目新しいものはなかったが、手ぶらもなんなのでハヤカワのノンフィクションなどと250円CDを数枚押さえておくに留まった。

  

 次に向かったのが、甲府下石田店。ここでもおもしろいものに出くわさずに、仕方がないので安いCDを漁ろうと棚のCDを抜き出すと、何と105円のCDがかなりあることにすぐに気付いた。どこのブックオフでも不良在庫化しそうなCDを105円で処分することがあるが、大抵はワゴンに入れて処分品的な扱いであることえを明確にしている。商品も15年以上も前のヒップホップやジャケットからしてイケてないものばかりだが、ここのブックオフのはほかのブックオフなら250円で出しているようなものに105円を付けていた。そこで端から入念に見ていくことにし、CD棚だけで1時間半くらい掛けて105円のCDだけで17枚を籠に入れてしまった。根気があると自分でも感心するし、ちょっと恥ずかしいが楽しいんだな、これが。ただ、普段なら250円だと気軽に買うのだが、こういう状況だとえらく慎重になる。普段の250円が105円で、普段の750円が250円という感覚になるから不思議である。そんなこんなに時間を費やし、2店目を終わった段階で既に15時を廻っており、昼飯も食わなかったので、ブックオフ巡りを切り上げ、ほうとううどんの名店「皆吉」で遅い昼を摂り、金を浮かすために甲州街道をひた走り、19時前に帰った。それが昨日の出来事。私というサラリーマンの休日の過ごし方なのだ。みっともないけど。


アンデルセン

須磨敦夫編 【アンデルセン童話・物語挿絵集】 長江舎1997年

 

甲府塩部店の通常価格の棚で見つけ、950円もしたが、目ぼしいものに当たらなかったので、つい買ってしまった。ネットで調べたが、出版社のデータもないし、編者の名で調べても別のアンデルセンの研究書に当たるだけでこの本の情報は出てこなかった。挿絵の図版集だが、物語別にイラストが掲載されているだけで、何の説明もない。誘発されるのはインスピレーションではなく、フラストレーションだったぞ!

 

 
ヨルゴス
リトモ・ラティーノ
 
甲府下石田店で105円で購入した17枚の中で一番期待したのがこれ。帯が残っており、「ダンサブルなパワー・ボッサ!シャレたラテン・ラウンジ!ジャズのフリー・スピリット!」とあった(35文字のうちの日本語はたった6文字だ!)ので、インスピレーションが誘発された。もしかしたら750円でも買ったかもしれない。家に帰って聞いたら、ちょっと想像とは違うが、105円ならめちゃくちゃ得した気分だ。だが、アマゾンで調べたら、マーケットプレイスに掲載されていた28点のうち100円以下が9点で、1円が2点あった。そんなものなのか。まさか残りの16枚もみんな1円なのかと思って調べたら、ほかのはそれなりの値段でホッとした。でも一番期待したのが一番価値が低いとは困ったもんだ。