■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記 -33ページ目

模様替えしました

ちょっとはRED & BLACK な感じになったでしょうか?

写真は、2003年ロンドンにて。

ワンデイモアの何が好きかって?

ワンデイモアのシーン、

今までは、歌とともに盛り上がっていく舞台の熱気が好きだった。

最後のコーラスを締めるように、アンジョルラスがびしっと銃を上に掲げると、

客席からも拳を上げたい衝動にかられた

…のは自分だけ?


今年は、胸を打つポイントがちょっと変わった。

もちろん歌は素晴らしい。

でも熱い涙を誘うのは、後ろの方で行進している学生の何人かが、

「さあ、隊列に参加しなよ!」」と、

ちぎれんばかりに手を振って呼び掛けている姿である。


そのとき、学生たちは決して客席を見ているのではないのだが、

希望しか見えていないような若者たちの輝く表情を見ると、

観ている方も思わず「よし、列に入るよ!」と手を挙げたくなってしまう。


もちろん、本当に客席から拳を掲げるわけにはいかないので、

拍手にその気持ちを込めている。

舞台の上にも、それが伝わるといいなと思いながら。





宿屋の上手テーブル観察記

2005年公演から、テナナルディエの宿屋の上手側テーブルに注目している。

クールフェラック、ブリジョン、グランテール、モンパルナス

(か、クラクスー…)役の4人が集まって騒いでいる席だ。

宿屋を訪ねたカップルが

「ひーどーい所ねっ!」

「毎度のことさ」

とあきれ返ると、

合いの手を入れるように、上手テーブルで4人が立ち上がって

「う~~~い」

と、乾杯する。舞台でかなり目立つ。


話は聞こえないけど、わいわい盛り上がっている。

「この酒まずいな」とでも言いあっているのか?

時々マダム役の女性たちが座っている方をちらちら見て、

気にしている様子。

その間にも、クールフェラック役の客は

テナルディエにズボンの後ろポケットを狙われている。おまぬけ。


次にこのテーブルが目立つのは、ケンカが始まるときだ。

ブリジョン役の客が突然、

「おい ゴルァ!!」と怒って立ち上がり、

同じテーブルの客にからもうとする。

身体も声も太いのでわりと怖い。


最初は、なぜこの客がいきなり怒りだすのか

理由が分からなかったが、、

8日に観て、ヒントが見つかったので仮説を立ててみた。


「おい ゴルァ!!」の直前、

グランテール役の客がくしゃみをしていた。

そのときに唾が、皆で飲んでいる酒の瓶に入ってしまった

のではないだろうか。

ブリジョン役の客は、おそらくそれを誤解して

「こいつ、わざと瓶に唾を入れやがったな」とて怒っているのでは…。

さて、真実はいかに。


その後、いつの間にか無事誤解はとけて、4人は仲直り。

大げさに称えあっているので、よく分かる。


こういう芝居がはいったということは、今年の公演から、

アンサンブルキャストの個性を

より強く見せていこうということになったのだろうか? 

見るツボが増えるのは忙しいが、

一人ひとりの人間像を見せてくれるのは大歓迎だ。


知られざる訳詞の逸話

下のほうの記事 で、レミゼの歌詞について取り上げたが

(とても貴重なコメントをいただいています。ぜひご覧ください)、

月刊『ミュージカル』最新号で、

また知られざる訳詞の逸話を知り、うなってしまった。


訳詞にあたっては、英語の歌詞と同じ母音になるよう、

イギリス人スタッフから要望があったという。

彼らは日本語の歌詞の意味が分からなくても、母音だけを聴くのだそうだ

(詳細は同誌を参照ください)。

なるほど、感情をかたちづくるのは、言葉だけでも音楽だけでもなく、

そのバランスなんだな…。


それを見て、はたと思い出したのが

ABCカフェでグランテールがマリウスをからかうシーンの歌だ。

英語の歌詞を初めて聴いたとき、日本語に慣れている耳には

意外な言葉に感じてびっくりしたが、本当に驚くべきはそんなところではなかった。


英語:

Is Marius in love at last?

I have never heard him ‘ooh’ and ‘aah’


日本語:

ついに恋をした

堅物マリウスが


そう、「『うぅ』とも『あぁ』とも言わないようなやつが…」という英詞と

「堅物マリウースがー」という日本語詞、最後に伸ばす母音がそろっている。

「『うぅ』とも『あぁ』とも言わない」を「堅物」と訳したところにだけ注目していたけど、

言葉の響きまで意識した訳だとは、まったく気がつかなかった。

気がつかないようにさせているのが、プロの技なのかもしれないが…。


同じような箇所は、もちろんほかにもある。

「レ・ミゼラブル」は、妥協しない精神の賜物なのだとあらためて感じ入った。


きれいな心を伝える難しさ

今日(8日)、山口バルジャン昇天の間際、

「そうコゼット、言う通りに 生きて、生きてみよう…」の後だったと思うが、

河野コゼットが「パパ…」と呼び掛けている生声が聞こえて、

うるっときてしまった。

ひいき目かもしれないけれど、芝居として計算して言っているというより、

感情が高ぶって思わず言葉がこぼれたように見えた。


バルジャンが息絶え、悲嘆にくれるコゼット。

その後ろにひざまづいて控える岡田マリウスを見ると、

胸を手に当て、深くゆっくり礼をしていた。

死者への尊敬に満ちた美しい所作に、マリウスの真心を感じて、泣いてしまった。


コゼットとマリウス、二人のきれいな心をそのまま素直に伝えるのは、

とても難しいことなんじゃないかと思う。

河野コゼットと岡田マリウス、ありがとう。



客席も舞台に巻き込まれたみたい

8日夜公演の東山アンジョルラス、

険しい表情が、若いリーダーの苦悩を表しているようで、

ぐっと引き込まれた。

3月は、ベテランのアンサンブルに助けられている感じがあったのに

どんなきっかけでこんなに成長してしまうんだろう。


そして、これまでのレ・ミゼラブル観劇で初めて遭遇した光景。

エピローグで「民衆の歌」とともに学生たちが列を組んで現れるところ、

東山アンジョルラスは客席前方を数回見渡しながら歌っていたのだ。

「列に入れよ、我らの味方に 砦の向こうに憧れの世界…」

まるで、客席に呼び掛けているように見えた。

本当は、だれかを探していたのかもしれないけどね。仮にそうであっても、いいや。

「舞台も観客も、明日のために戦う同志なんだ」という想いが伝わってきたようで、

目頭が熱くなってしまったから…。



レミゼなぜなに

なぜなに●その1 テナルディエが首から下げているメニュー


パンフの写真によると、次のようになっている。


・stew with potatoes

・stew with bacon (たぶん…)

・stew only


注:今朝書いた内容が間違ってたので修正しました


てっきりフランス語で書いてあると思ったのだが… 英語? どうしてだろ?

RED AND BLACKの歌も、最初に聴いたときは

「なんでrougeとnoirじゃないのか」と思ったけど

ロンドンで作られた英語作品だから、歌詞が英語になるのはまあ当然かと納得した。

でも小道具まで英語にするのは、なぜなんだろ?


なぜなに●その2 アンジョルラスとマリウスが配っているビラの内容  


何が書いてあるのだろう?

きっと本物そっくりに文字が書いてあるのだろうな。

そして、英語なのかフランス語なのか? それが問題だ。

いま気づいたけど、バルジャンの仮出獄許可証も気になる。

毎日破っているのだから、毎日新しく作っているはず…


追記:ABCカフェでグランテールが読んでいる新聞はフランス語だった!




女にも「対決」がある

対決するのは、何もバルジャンとジャベールだけじゃない、と思う。
「パリ・10年後」で乞食婆と若い娼婦が言い争うシーンは、いわば女版の「対決」だ。

「どぉきなってぇ! 淫売め! あたしのこのショバ荒らすのか!?」
「古ぎつね! クソッ ババァァアアアア! あんたのお客は楽しむかい? (へへんっ) 」

ドスのきいたこの声を聞くと、「あぁレミゼを見に来てるぞ!」と実感がわいてくる。キャストが荒木里佳さん×鈴木智香子さんのときは、特にゾクゾク感が増す。
腹の底からというより、体中の筋肉をふりしぼって出しているかのような、強く太い声。生きるか死ぬかをかけて争うときの、野性的な力。スラム街のすえた空気まで感じられる気がする。

何かのインタビューで、ある役者さんが「乞食たちのシーンをしっかり演じないと、アンジョルラスや学生たちがなぜ革命を起こそうとしているのか客席に伝わらない」と言っていたのを思い出した。
女二人の対決が、このシーンを印象付ける上で大きな役割を果たしていることは、言うまでもない。それにしても、「淫売」だの「クソババア!」だの、現代の日常生活ではめったにお目にかからない言葉に、説得力を持たせてしまう役者さんの力量には感服する。

話はそれるが、先日観た公演で若い娼婦の体当たり演技が心に残ったので、乞食婆と対決したあとの動きをずっと追ってみた。乞食婆に襲いかかろうとしたところを、ヒモに「ほっときな、おいマドレーヌ、このババァ病気で狂ってる」と押しとどめられたあと、アンジョルラスに言い寄っていたとは、これまで気づかなかった。というより、ヒモが「お客さん!(いい娘がいますぜ!)」と売り込んでいるのだが。革命を呼び掛けるビラを配っているアンジョルラスは「困ったな」という表情で二人をふりきり、舞台奥へ走っていく。お客を逃した娼婦は、ふてくされてヒモにやつあたりしていた…ような。週末は、荒木さん×鈴木さんの対決がある。観~る~ぞ~♪

追記:
二人がやりあってすっ転ぶところ、迫真の演技なのだが、役者さんは毎回同じところをすりむいているため、絆創膏が欠かせないとのこと(詳しくは役者さんのHPを探してみてください)。
身体をはったお芝居、心して観ますので、どうぞお大事に…。

この役者のここを観ねば(ジャベール編)

下の記事と同様、「あえて1つだけ / 筆者の私見」で見どころを挙げてみます。


■ジャベール編


・岡ジャベ

最後にバルジャンと相対して「見ろ、ジャベール! 死にかけてる! 譲れ!」と

いう気迫に圧倒されたときの表情。けんかに負けた犬を思わせる目は、

観ていてつらくなる。


・今ジャベ

バリケードで学生たちに正体がばれて捕まり、居酒屋へ連行されるとき。

舞台袖へ向かって歩いている途中で、自分の腕や肩を押さえつけている

学生の手をいきなりふりはらい、一瞥をくれるところ。

「私に触るな。さあ好きにしろ」という顔は、学生を威圧しているのか。


・綜馬ジャベ

「待つぞさあ、24653」とバルジャンに道を明け渡したあと、

身体が斜め45度になるくらいふらふらして立ち上がれなくなり、

「あいつは、どんな悪魔だ!」という嘆きになだれこんでいくところ。

おじさんの脆さである。


この役者のここを観ねば(バルジャン編)

それぞれの役者さんについて

「あえて1点だけ」注目点を挙げるとしたら…?


ミーハー全開で行ってみましょう。


■バルジャン編


・山口バル

「彼を帰して」の静かな静かな歌い出し。

暗がりに揺れるローソクの灯のよう…というのは以前に書いた。


・別所バル(5月出演なし)

バリケードで戦う学生たちの背後で

「無駄に命を落とすようなマネはやめなさい」とばかりにおろおろしていたところ。

マリウスだけではなく、すべての若者への慈しみが感じられた。


・石井バル

今年は未見。「彼を帰して」の熱さがどうなったかに、まず注目したい。


・今井バル

テナ夫妻に「この子を連れて帰る」と言った後、リトルコゼットに

「そこ座ってなさい」と促す優しい目。

本当にそう聞こえてたときもあった(気がする…)。